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000110_小さい権力者【Small mogules】

「で、本当に手伝おう、とかいう気はないんだな?」


「「ない、断じてない!」」




 こんなことを聞くのもすでに三回目、と神楽坂は思い、諦めかけていた。


 生徒会室の奥の奥に設けられた、小さな会議室、のようなところで、瑠璃川と三上は口を揃えて言った。




「わかった、話を聞こう。納得のいく言い訳を言って貰おうじゃないか!……じゃ、まずは三上さんからあああーーーー、おい! 未来、未来様!その関節がその方向に曲がるのはロボットだけだからぁぁぁぁぁ!!!」




 神楽坂は息を切らしながら「最後まで無言とか、鬼みたいだな」と言ったが、瑠璃川が手元にあった口の空いていないペットボトルで襲ってきたため、それは金棒じゃないと突っ込むこともできなかった。




「私は生徒会のー仕事とか? 他には………あぁ!! 小田工祭の管理だぁ~」


「おい、三上……それは両方とも同じ仕事だろ?」




 三上の分かりやすい天然に嫌々突っ込みを入れる神楽坂は疲れていた。


 エアコンがあまり効いていない為か、湿気が多く過ごしにくいのだろう。




「んーー やっぱ天然は駄目か、被ってるもんね、あの子と」


「? あの子って誰だ?」




 あの子、という人物は誰なのか神楽坂には理解できなかった。


 神楽坂が悩んでいようと、瑠璃川は勝手に言い訳を始める。




「私の場合は会社の仕事ね。会議とかいろいろあるらしいからねぇ」


「会議って、お前の場合はゲームしてるじゃないか! 会議中に!! しかも高価なレトロゲームだし……」




 レトロゲームと言ってもこの時代、今の主流はバーチャルによる現実的なもの。それに対して瑠璃川がやるような、『レトロゲーム』と呼ばれるのはディスプレイと、コントローラーと、ゲーム機本体があるような、とにかくバーチャルを使っていない画面のあるものを指すらしい。


 昔、『オタク』と呼ばれていた人達のようでない神楽坂は全くわからないが、話によるととてつもなく高価な物らしい。




「だから、何?それがどうしたって言うの?」


「いやいや、会議中にゲームで遊ぼうっていうような考え自体が駄目だって!!」


「いい、神楽坂? この街では私がルールなの。私の良心が無ければあなたはここにはいないわ」




 行き過ぎた権力者の言葉のようだが、正直に言えば管理されている側なんだと神楽坂は思った。


 世界の情報をすべて管理、制圧している会社の社長は、空間にインターフェイスを出しながら、現在のこの学校の在庫状況を調べだした。




「昔は、私の家がこの街のルールだったのに…… でも、世界のモノはコントロールできるけどねっ!」




 三上が愚痴をこぼす。こうして新旧のこの街の権力者を見ていると、なんだかとても危険な感じに見えるのは神楽坂だけではないだろう。




「今、私たちのクラスに屋台の部品を送ったわ。言った通り、私と三上さんはこの先忙しいから…あんたにクラスの事、任せる。……あのクラスは誰かがしっかりしないと何もできないから」




 それだけ言って、足早に瑠璃川は行ってしまった。


 会議室に取り残されたのは神楽坂と三上。もうすでに用事は済んでいるので、あとは神楽坂がクラスに戻るだけなのだが……




「そういえば、三上。今日は眼鏡してるんだな? 昨日、渡そうとしたのになんで断ったんだ?」


「一度に二度も質問するなんてずいぶんと欲張りなのね。私、あなたをそんな子に育てた覚えはありません!!」


「何いきなり、お母さんみたいなキャラになってるんだ!! お前に育てられた覚えはない」




 神楽坂の質問をキャラを変えることで茶化した三上は、とてつもなく上機嫌だった。まるで子供のようだった。




「わかったわよ、今なら受付中~~絶賛受付中!!」


「余計なことをしないで、早く受け取ってくれよ……」




 神楽坂はそう言いながら、薄いカード状のものを取り出した。机の上において、ディスプレイのエフェクトから何かを掴む感じで、カードの上に持っていくと情報を読み込むことが出来る。


 そうやって、空間に神楽坂が昨日書いた文章が現れ、三上がそれを読む。




「なかなかの出来ね。さすが、私と一票差」


「問題がないなら、もう行ってもいいか? 協力者がいないと大変だから」




 神楽坂は席を立って、ドアに手をかける。狭すぎる会議室が故に歩かずにドアまで行ける。




「ねぇ、神楽坂。あんた本当に不運ね。今までの話は何だったのかしら」


「どういうことだ?」




 三上は瑠璃川が消し忘れた空間にある画面を神楽坂に見せる。


 そこにあったものは……




『ご発注内容

====屋台用骨組み――6セット====


上記の内容で発送します。 [確認]』




「これって………」


「未来ちゃんって通販とかしたこと無いんじゃない?じゃあ、足りない物はあおい君に任せるわ」




 三上は瑠璃川と同じように足早に部屋を出て行った。取り残された神楽坂は空間の浮かぶ確認ボタンに触れようとした。


 しかし、元々瑠璃川が開いていた画面。セキュリティーコードの壁は越えられなかった。

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