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000001_プロローグ【Prologue】

 ――我々と同じく神がおつくりになった宇宙人は、やはり神の似姿をしていて、非常に知的で我々より完成された種族である――




「この文を絶対に使ってこの地域の紹介文を作れとか、あの生徒会長絶対いかれてるだろ!」





 そんなことを吐く神楽坂かぐらざかあおいは「高校では目立たないように」と思って小田原工科高等学校工科科に入学した。因みにこの学校にはあと、普通科と工業科がある。


 しかしその科が『目立たない』と言うわけではない。むしろその逆で、全国から選りすぐりの学生が集められている。


 人生目立ちっぱなしの人たちの中で普通に普通の高校生をやれば、おのずと目立たなくなるという考えだった。


 にもかかわず、入学早々の新入生テストで開校初の全教科全問正解を記録。そして全校生徒の前で表彰。


 そして、あろうことか生徒会長の海外留学が急遽、決定したために行われた補充選挙で、たったの『一票差』で落選という嫌でも記憶に残る負け方をした。


 挙句の果てに、新しい生徒会長から明らかに生徒会の仕事である物を押しつけられ、こんなバカげた条件の仕事までも強制的にやらされている。


 誰がどう見ようと、『目立たない』にマイナスをかけた状態である。





 神楽坂は問題を片づけるべく、駅前の歩行者回廊ペデストリアンデッキにあるベンチに腰かけた。




「ベンチに座るあおいくん……」




 さて、この文の『神』というところを人間にして、『宇宙人』を都市にすれば……


 そう考えながら神楽坂は顎に手をあてる。




「はぁ、あごにてをあてるあおいくん…………」






 ――我々と同じく神がおつくりになった宇宙人は、やはり神の似姿をしていて、非常に知的で我々より完成された種族である――そして我々が作り出した都市は、やはり人間のようで非常に知的でより完成されたものである。


 よし! これで違和感なくこの街の説明が書ける!!


 神楽坂は少しホッとし、片手で小さなガッツポーズをとる。




「はぁぁ……あおいくんの、あおいくんの片手ガッツポーズ…………」






 さて続きだ、


 この都市は月移住(Moon Shift)計画の第三フェーズ『都市レベル閉鎖空間利用実験』の構想を元に、2030年に三上グループによって神奈川県足柄平野を含む周辺の2市8町、延べ635.29㎢に作られた研究都市である。


 今から二年前の2043年、第三フェーズ終了後に『UNITY』がこの都市を買い取り、技術者の育成と新技術の開発の為の、『学研都市』として再構成された。




 大体、こんなもんでいいだろ。うん、大丈夫だ。まったくあの会長もなんで帰るときになってこんなもの……


 立ち上がって神楽坂は帰る支度をする。




「ほわぁぁぁ、立ち上がるあおいくん……じゅるり」




 神楽坂は何も持たずに、腕を横に伸ばしたくらいの柱に向かって歩き出す。たった十歩だ。




「あわわぁぁ、歩いてくるあおいくん…………」




 そして、柱に寄り掛かる普通科の女子生徒に声をかける。




「実験及び観察において観測者は観察対象に対して影響を与えないものですので、もう少し黙って観察してください。この、うるさい奴め!!」




 毎度のごとく、そこには神楽坂の幼馴染である天野あまのほむらがいた。




「えぇと……もしかして声出してた?」




 ひどく恥ずかしそうな表情でほむらは下から覗く。わざとではなく、必然的に、だ。




「あぁ、もちろんダダ漏れだったぞ?『はぁぁ、あおいくん』とか言ってたし。正直……気持ち悪かった」


「そうだったの?そんなに気持ち悪かったの?」




 ほむらは今にも泣きそうな顔で、神楽坂の手を取る。


 正直、幼馴染みと言えど、知り合ったのは中学からで、その時はこんなに親しくなかった。まぁ、嫌われないだけ、マシな訳だが。




「だから、声に出すのがいけないんじゃないか?それを直せばいいのに……」


「それ、前も聞いたことがあるんだけど? 何回目だと思っているのかな?」


「おいおい、それはほぼ毎日、お前が声に出して変なことを言ってるからだろうが!!」




 そう言って神楽坂は手を振りほどき、ほむらに背を向ける。




「うるさい! だいたい、こんなにもあおいくんの事を思ってるのに何もしてくれない方が絶対悪い!」



 ほむらが何かスゴいことを言っているが聞かないふりをする。



「あんたたちはいつもいつも、いい加減にしなさい!!」




 突然、どこからともなく聞こえた声の方向に、神楽坂とほむらは体を向けた。


 そしてそのとき、お互いの体がぶつかり、ほむらが神楽坂の上になるように倒れた。




「問題。αの二分の五乗はいくつでしょう?間違えたら、このヒールで踏みつけるわよ?」




 ほむらは『小さい』ので重さはそれほど感じなかった。それでも、女子としての感触はあっただろう。しかし、それを感じない程にある所から恐怖を感じた。


 そこにはスーツ姿の同級生、瑠璃川るりかわ未来みらいが接地面積が1㎠のヒールの足を突き出していた。


 落ち着け、この、ほむらが上にいる状態で早く正確に暗算をしなければならない。




「えーと、α^5 √αですか?」


「そのっとーりっぃぃぃぃ!!!!」




 そして瑠璃川は頭を高く蹴り上げた。

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