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『 プロローグ 』
一番最初に、釦を掛け間違えたのは誰だろう。
もって生まれてくるべきものを、もてなかった私なのか。
父達の酒の席での言葉なのか。
乙女の心を踏みにじった孤高の狼なのか。
それとも、狼の孤独を垣間見てしまった子供の私なのか。
初恋に浮かれていた従妹なのか。
釦を掛け違えたまま、私達は日々を送り
そして、一つの釦がはじけ飛んだ。
掛け間違えられた釦は、ますます段違いになっていく。
だけどもう、戻らない。
一番重要な、釦が壊れてしまったから。
孤高の狼に助けられた、騎士が足掻いても
最強と呼ばれる黒がどれだけ、心を砕いても
段違いのままひたすら掛け間違えて行くだけ。
そう、もし正常な状態へ釦を掛けなおそうとするのなら
間違えた箇所から、正していかなければいけないから。
掛け間違えた場所はどこのなのか
それは誰にも分らない。
読んでいただき有難うございました。