『 風からの荷物 』
* エイク視点(狼の村の青年・アイリの従兄)
* ハンク(狼の村・前長) ロシュナ(青狼の村の長)
* ディル(アイリの父) ターナ(アイリの母)
* アイリ(刹那に助けられた子供) ユウイ(アイリの妹)
* メリル(エイクの妻)
トキトナのギルドから、狼の村へと帰り真直ぐにディルさんの家へと向かう。
セツナとアルトからの手紙と、友人からの手紙そして大量の荷物を持っている。
ディルさんの家には、前長のハンクさんと蒼の長のロシュナさんが
俺の帰りを待っていたのだった。
「エイクお疲れ様」
蒼の長が言葉をかけて労ってくれる。
「いえ、ギルドから手紙と荷物を預かってきました」
「セツナ君とアルトからの手紙が来ていたかい?」
「はい」
ギルドから2人の安否は届いていたし
チームリーダーの、サフィさんからも2人の様子を聞いた。
無事であることは知っていたが、2人からの連絡を長達は待っていたようだ。
俺が長に、手紙を渡そうとすると
隣りの部屋から、ユウイが走ってきて俺の脚に纏わりつく。
「おにいたん、ユイのおみやげ?」
「違う」
「その、ふくろはなに?
ユイの?」
「違うって言ってるだろうが」
「ユイのは?」
「後だ後、向こうで大人しく待っとけ」
「ユイ、いまがいいなぁ」
人の話を聞け!
「ユウイ、向こうの部屋へ行ってなさい」
ディルさんが、ユウイに離れるように注意するが
ユウイの目は、机の上にある荷物に釘づけだ。
「おとうたん。おいしそうなにおいがする」
机の上のものに手を触れようとするユウイを、ターナさんが抱き上げた。
アイリは、ターナさんの傍で興味深そうに机の上を眺めていた。
「エイク、セツナ君からの荷物の中に
アイリとユウイ宛のものがあるなら
先に渡してあげるといい」
蒼の長は苦笑しながら、アイリとユウイを見てそう告げた。
ディルさんとターナさんが、申し訳なさそうに長に謝る。
「元気なのはいいことだ」
蒼の長の言葉に、ハンクさんも苦笑しながら頷いた。
「ほら、こっちがアイリでこっちがユウイな。
セツナからだ。これが手紙」
2人宛の荷物と手紙を渡す。ユウイは早速袋の中身を開けて取り出し
沢山の菓子に目を輝かせている。
「わぁ! いっぱい!
おかあたん、おかしいっぱい!!」
「そうね、よかったわね。
セツナにお礼を言わないとね」
「しとー? しとーがくれたの?」
「そうよ」
俺が言っただろう!?
「おかあたん、たべていい?」
「もうすぐ、ご飯でしょう?」
「ひとつだけ、たべたいなぁ」
「なら、1つだけね」
ユウイは、沢山の菓子の中からどれを食べるか
真剣に選んでいた。アイリはといえば、先に手紙から読んでいる。
「何て書いてあるんだ?」
「師匠もアルトも元気だって。
寒くなってきたから、風邪ひかないようにだって」
「ふーん」
2人が自分の部屋へと戻り、落ち着いたところで
長宛の手紙を渡す。
「ハンク、アルトからだ」
蒼の長が、ハンクさんにアルトからの手紙を渡した。
ハンクさんは、目元に笑みを浮かべながらアルトからの手紙を受け取り
読みだすが、すぐに眉間にしわができた。
「ハンク?」
蒼の長の呼びかけに、ハンクさんは黙って手紙を蒼の長へと渡し
蒼の長が、手紙を受け取り視線を落とす。
「っ……」
手紙を見て、口元を歪めて笑いだす。
「あはははははははは」
「笑い事ではないわい」
「いや、これはアルトらしい手紙だと思うけどね」
蒼の長が、ディルさんに手紙を渡し
そして、俺とターナさんにも見せてくれた。
アルトの手紙に書かれていた内容は
"俺は生きてる"
これだけだった。
ディルさんは苦笑し、ターナさんは肩を震わせて笑っていた。
アルトがこの国と、専属契約を結んだのは知っている。
そしてこの手紙は、生存報告の手紙なんだろう。確かに、間違ってはいないが
もう少し書きようがあるだろう。
蒼の長は笑いながら、ハンクさんはため息をつきながら
そしてディルさんは、苦笑を落としながらセツナからの手紙を読み始めた。
俺もセツナからの手紙を読む、内容はといえば
結婚したことの祝いの言葉と、俺達への祝いの品を送ったから
受け取ってほしいという事だった。サフィさんの事は気にしなくてもいいと
書かれていた。サフィさんの精霊と仲良くなったらしい。
どうやってあれと仲良くなったんだ?
俺には無理だ。サフィさんとフィー同時に何か言われたら
しばらく立ち直れない。
「セツナ君もアルトも元気そうだね」
蒼の長の言葉に、手紙を読み終わったと判断し
セツナとアルトから届いているものを渡していった。
アルトからは、蒼の長とハンクさん、ディルさんにお菓子が送られていた。
ハンクさんは、嬉しそうに目じりを下げている。
セツナからは、蒼の長には懐中時計が送られており
その精巧な出来の時計に、長達は一瞬言葉を忘れていたようだった。
「私達の意図が、セツナ君には知られてしまったようだね」
「頭だけはいいやつだからな」
いや、頭だけじゃなく腕もいいだろう。
ハンクさんの言葉に、心の中だけで突っ込み声には出さない。
「ハンクは何をもらったんだい?」
蒼の長の言葉に、ハンクさんが包みを開くとそこには繊細なガラスの
徳利とお猪口が箱に入っていた。お猪口は ”2つ”ではなく”3つ ”ついていた。
「これは素晴らしいな……」
「これに酒を移し替えて、温めて飲んでも美味いらしい」
「酒を温めて飲んだことはないな」
「これからの季節には、いいかもしれん」
ハンクさんはどうやら気に入ったようだ。
お猪口が ”3つ”なのは、1つはラギールさんの分なんだろう。
蒼の長がお猪口の1つを取り出して「こういうところが、彼らしい」と
軽く笑った。
ディルさんには、万年筆とインクが届いていた。
長になったことへの祝いだと書かれていたらしい。
「エイクは、何をもらったんだい?」
蒼の長が俺に聞く。家に帰ってメリルと開けるつもりでいたが
ここで包みを開くことにした。中から出てきたのは掛け時計だ。
時計って高級品だろう?
こんなものを簡単に、祝いでよこすって。
戸惑っている俺に、蒼の長が言葉をくれる。
「気持ちだよ。貰っておくといい。
しかし……彼は相当お金を使っただろうなぁ」
そう言って、蒼の長は自分の懐中時計を見た。
長達が早速、徳利で酒を温め飲んでいる。
「ああ、これはいい」
「体が温まる」
そういえば、"酒肴 "がやってる酒場では冬は
酒を温めてもくれるらしいと聞いたことがある。
俺は、冬の間はこっちに戻ってくるから飲んだことはなかった。
長達の会話を聞きながら、俺は "酒肴"の友人からの手紙を開いて読む。
「……」
その内容に、思わず便箋を握りつぶした。
俺の行動に、長達が驚いたようにこちらを見る。
「どうした?」
「あいつが、虎殺しを一気飲みしたって書いてある」
「は?」
ディルさんが珍しく、呆気にとられている。
「セツナ君は大丈夫なのか?」
蒼の長に、俺は頷く。
「あいつは、一気飲みしても平然としていたらしい。
黒の3人は、ひっくり返って暫く意識がなかったと書かれている」
「なぜ、そんなことになった」
ハンクさんが、眉間を指でつまむようにしてもんでいる。
手紙に書かれていることを読むと、それぞれが深く溜息をつく。
「あの男は、どこへ行っても同じなのだな」
ハンクさんが、そう言って苦笑する。
「まぁ、死人が出なくてよかったな」
「セツナ君は風使いだから、死人は出さないだろう」
ディルさんの言葉に、蒼の長が締めくくりまた飲みだす。
「エイク、セツナに無理な飲みかたをするようなら
2度と酒を送らないと、手紙に書いておけ」
ディルさんの言葉に、俺は深く頷いたのだった。
その後は、夕飯をごちそうになりユウイの菓子を奪おうとして
噛みつかれ、アイリが俺とメリルにといって自分の菓子を分けてくれた。
ユウイは、ターナさんに怒られてしょぼくれていたけど
明日になったら忘れているだろう。
まぁ……ユウイをおちょくろうとした俺も悪いんだが
噛みつく事はないだろう。
そしてメリルの待つ家へと帰ると
噛みつかれた傷を見て、思いっきり笑われたのだった……。
読んでいただきありがとうございました。





