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好奇心の赴くままに

「コッケコッコー、コケコッコー、コッケコッコー、コケコッコー」

リアルな鶏の鳴き声が頭の上で大音量に響いている。

あぁ朝だ。

もう今日が始まってしまう。

今日は、MTGが連チャンであるから、朝から資料を作らなければ。

あぁ今日はどこからもイレギュラーの仕事が降ってきませんように。


心底願うよ。

無神論者の私だけども、どんな神様にだって祈ってやるさ。

日本古来の八百万の神様にだって、仏様にだって、仙界に坐す神仙様にだって、檀君神話、インド神話、アラビア神話、イラン神話、バビロニア神話、メソポタミア神話、ウガリット神話、ギリシャ神話、ローマ神話、ケルト神話、ゲルマン神話、スラヴ神話、北欧神話、フィンランド神話、旧約聖書、エジプト神話、マヤ神話、アステカ神話、インカ神話、ハワイ神話の神様にだって祈ってやる。


最近の私がどれだけ仕事に病んでいるか。現実に倦んでいるのか。

私の残業時間を計算すれば誰でも検討が付くだろう。

家族のために身を粉にして働いてきた団塊世代かっつーの。

私はゆとり世代の先下掛けとして学生生活を送っていたはずが、今は反転。

一日17時間労働。休めるのは日曜だけ。月間労働時間は、440時間。

本来の稼働時間は176時間の筈だから、軽く2倍を超えている。

もうブラック企業は、時代遅れだっつーのと思いながら、あと1ヶ月でこの超ハードスケジュールが終わると一日一日をなんとか乗り越えて生きている。


あとはこの山と積みあられた仕事に、追加の雪が降らないことをただ神様に祈るしかない。

歴女で、神話ヲタクでもある私だ。

頼むべき神様の名前なんて何十、何百と出てくる。ヲタクをなめんじゃねぇよ。


ぐだぐだ思考がドミノ倒しになってとまらなくなっている間にも、鶏の鳴き声は響いている。

そろそろ起きねば。

この強力携帯アラームを止めねば、ご近所迷惑甚だしい。

こんな都会の真ん中で鶏が鳴き続けるなど、不審も甚だしい。


うむ?

音を頼りに携帯を探るが見つからない。


うむ?

この手触りは羽毛・・・掛布団が破れてしまったのだろうか?

不審に思い、上半身を起こし目を開ける。


はれ?

まぶしい?

いや、朝だから明るいのは当たり前だが、白い。

一面真っ白だ。

ここはどこだ?

真っ白な世界にただ鶏の鳴き声だけが響いている。

音源は自分の背後にあった。

はっと背後を向き見構える。


そこにいたのは本物の鶏!?


寝起きの目を見開き、しばらく鳴き続ける鶏を茫然と見ていると、唐突に鶏が鳴きやんだ。


「なんか喋れや」


「はっ?」


「なんかリアクションよこせや。わしずっと鳴きっぱでえー加減疲れてきがな」


「鶏が喋った・・・」


「そんだけかいな。気分落ち込むわ~」


茫然と状況だけを紡いだ私に、鶏は、表情豊かに落ち込んでみせた。

表情豊かな鶏て、めっちゃ愛嬌があるけど、意味が分からん。

驚きが薄れてきたところで、問いかける。


「あなたは誰?ここはどこ?」


「そして私はだれ?ってか」


「いや、私は私だとわかるからそれはいらない」


「ほー。あんさん自分のことが自分でわかるんか?すごいなぁ」


「我思う、故に我あり。私にはいま思考があり、そしてその蓄積たる記憶もある。それで問題はなし。っていうか話そらさないで、質問に答えて。あなたは誰?そしてここはどこ?」


「ここは私という空間であり、私は私という存在だよ」


「私が欲しい回答ではないわね」


「まぁ、ここは白い部屋、わしは鶏と認識すればえぇ」


「それは見たまんまね」


私はため息をついた。


「まぁちゃんとした説明に入ろうか」


鶏は緩んだ気配を引き締めて話し出す。


「お前さんは死んだんじゃ。死因は過労死。午前3時ごろ、無呼吸状態になってそのまま安らかに息を引き取った。享年27歳とは早かったのう」


「そう」


なんとなく予感はしていた。


だってまともな生活できていなかったんだもの。

睡眠時間はもとより、昼休憩も取れないから、食べるのは朝食だけ。しかもコンビニのパンとコーヒーを仕事をしながら掻き込むだけ。目の下のクマさんとは常にお友達で、ちょっとぽっちゃりで、成功しないダイエットに悩んでた体形は今は、肋が見えるほどスリム。


正直やばいと思ってたのよね。


「で?ここは死後の世界で、あなたは死神とでも言うつもり?」


「いや。わしは神じゃ」


「神様?どの神様かしら。鶏の神様なんていたかしら?」


「この姿はアラームから拾っただけじゃわい。わしに決まった姿や名などはない。」


「じゃぁなんて呼べばいいの?」


「そのまま神様とでも呼べばよい」


「じゃぁ神様。過労なんかで儚く世をさった私はこの後どうすればいいの?」


「まぁ、どうしたいかお前の望みを聞いてみようかと思っての」


「私の望み?望みってなんでも叶えてくれるの?」


「そうじゃ。まぁあれだけ神の名を並び立てて、祈り続けるのも珍しかったからの」


「じゃぁ」


私は湧き上がる笑い声を堪えながら望みを口に出した。


「ええんか?わしはてっきり漫画か何かの世界に転生をしたいとか言い出すかと思っておったんやが」


「ふふふっ」


私は笑いを堪えきれず話し出す。


「それも確かに面白そうだと思うけど、でも私はヲタクはヲタクでも歴女。漫画よりも歴史というものに魅力を感じるミーハーな人間なのよ」


「ほう」


「ただし、やっぱりチート能力があった上での歴史トリップが私の望みよ」


どんなチートスキルが必要か。


不老不死(やっぱりどっぷり浸るなら時間は必要よ)


性別変化(時代は男尊女卑、男での人生も体験したいし、女の人生も愉しみたいわ)


転移(飛行機も新幹線も車もない時代、移動手段は必要よね)


錬金術(お金も必要だし、文明の利器に狎れ親しんだ私には絶対必要)


魅了(人間関係を円滑に、歴史上の偉人たちとも仲良くなれる)


そして、まずは・・・・。









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