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the Last Section: Her Point of View in the office of Credit Department on Another Day.~離れても繋がっている2人~

「それでは、早急に、貴部内の稟議書のご承認をお願いします。」


審査部長を前にして、PF二課長は、深々と頭を下げた。

私も、その隣で、一緒に頭を下げた。


『素晴らしい事業だね。中東は、当分厳しい状況が続きそうだから、どんどん東南アジアで良い事業を組成してくれると助かるよ。』


審査部長は、彼のことを労った。


「激励のお言葉、身に余る思いです。現在、タイの太陽光発電のプロジェクト・ファイナンスについて、日本の大手電力会社と現地の財閥系企業のジョイント・ベンチャーから、ご相談をいただいております。」

「喫緊に、隣の際審二課長を通じて、ご説明に上がります。」


『絶好調だな。期待しているよ。』と審査部長が言って、会議は終了した。


2日どころか、たった2時間で、全ての説明が終わった。

あとは、稟議書システムを回付するだけだ。多分、今日中には、承認が下りるだろう。


「な。俺が言った方が、早かっただろ。」


彼は、審査部執務室を出る際に、上から目線で言ってきた。


言い方はムカつくが、社内では、彼の方が立場は上だし、確かに、わずか2時間で部長の承認を得られたのは、本当に凄いと思った。


『お力添え、ありがとうございました。』

一応、私は、大人の対応をして差し上げてやる。


でも「激励のお言葉、身に余る思いです」なんて、難しい大人の言葉を言えるようになっていて、かつての指導担当として、20年間の成長を嬉しく思ってしまう自分がいる。


「さっき、審査部長にも伝えたタイの太陽光発電事業のプロジェクト・ファイナンスだが、喫緊にスポンサー企業と協議を開始する。」


「俺としては、遅くても半年後には、契約締結をしたいと考えている。そのスケジュール感で、頭の片隅に置いておいてくれ。詳細は、また後日、説明をする。」


彼は、そう言うと「じゃあ、次の会議があるから、これで。」と言って、去っていった。


仕事中の彼は、本当に隙が無い。

そのタイのプロジェクトを半年後に、あなたの手で契約締結をすることができないのは、分かっているだろうが、全くその素振りを見せることはなかった。


彼が、審査部執務室に来る前に、審査部長より、内々に、際審一課長への昇進の打診を受けた。


人事情報は、行内の極秘情報であり、内示が出るまで、詳細は言えないが、まず際審二課長が、急遽、復帰する。


先日、際審二課長は、母子共に健康に、男の子を出産した。


義理の父親と母親が、既にリタイアをしており、家の近くに住んでいる事から、日中の赤ん坊の面倒を見てくれることになり、育休を取らず、早く復帰できることになった。


その玉突き人事で、私が際審一課長として、隣の課に異動をすることになった。

年齢もあるが、際審二課代として、課長レベルの業務をしっかりこなしたという高評価をいただき、際審一課長に昇進をすることになった。


際審一課は、欧米地域全体の新規組成事業の審査をする。


ちなみに、現際審一課の男性課長が、新PF二課長に着任する。


そして、現PF二課長である彼は、ワシントンD.C.支店に、支店長として赴任する。


中東情勢は悪化の一途を辿っており、先日、日本政府はアメリカ政府に対して、多額の投融資をすることで、双方合意した。


恐らく、日本政府が、そのほとんどを支出すると思われるが、民間大手の金融機関や総合商社、各事業会社にも、今後、援助要請が来る可能性は十分にある。


その際、アメリカ最前線の動きや情報を収集するのは、ワシントンD.C.支店の役目であり、支店長である彼が、出てくることになるだろう。


アメリカに渡り、彼とは、また長い間、会えなくなると思っていたが、オンライン越しとはいえ、今まで以上に会う機会が増えそうだ。


そんなことを思いながら、彼の背中を見送った後、私は、自席に戻り、PF二課長としての彼の最後の花道を飾れるように、稟議書システムを起動して、ラオスの風力発電事業の稟議書を作成し始めた。


彼との名前の無い関係も、まだまだ続いていきそうだ。

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