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『友達100人作ろう計画終了のお知らせ』

 洞窟から外へ1歩踏み出したヒカリは、自分がこの世界にとってどれだけヤバい存在であるかを一瞬で理解することになった。


「……えっと」


 目の前に広がるのは豊かな森で、あった。

 森の中は木漏れ日が射し込んでいるので非常に明るく、幻想的な雰囲気を醸し出していた。

 しかし、ヒカリが大地を踏みしめた瞬間、黒く焼けてそこから草木が枯れていく。

 枯れていくというよりも、黒に染まったというべきか。

 原因はもちろん、ヒカリの膜翼から絶え間なく発生している黒い霧である。

 異世界転生して最初に行ったのは環境破壊とは、そんな悪行を行ったのは私だけではないだろうかと不安になってくるヒカリ。

 呼吸を止めても止まらない。身体全体に力を込めても止まらない。


「……ダメだぁこれぇ」


 友達100人作ろう計画終了。

 植物に害があるということは、人間にとっても害があるのだろう。


「ルリルレンさん!! どうにかしてよぉ!!」


 天に向かって叫ぶが、ルリルレンからの応答は無い。

 転生アンケートに星1評価を付けたくても、そのアンケートすら届かない。

 評価に関わると言っていたので、送ってこないのはおかしい。

 送りたくても送れない。コンタクトを取ろうにも取れない状況だったりするのか。

 ネガティブ思考。


「とりあえず、歩いてみるかぁ」


 ここで立ち止まっていても仕方ないので、ヒカリは豊かな森だった場所を歩いてみることにした。

 黒く染まった地面をしばらく歩いていると、虹色の眼をした白銀の毛を纏う狼に遭遇した。

 話が通じるかもしれないので、ヒカリはここがどこなのか聞いてみることにした。

 人間でなければ、コミュ障でも話しかけられる。


「あ、あのぉ!!」

「ガフッ……」


 ヒカリが近づいた瞬間、ぴくりとも動かなくなる白銀の狼。

 可哀そうだ。

 体調が悪かったのだろうか。

 そう思い込んで、ヒカリはぺこりと頭を下げて奥へと進んでいく。


「あっ、もう1体いた!! おーい!!」

「ガフッ……」


 もう1体の白銀の狼もまた動かなくなった。

 この狼も体調が悪かったのだと、そう言い聞かせながら更に奥へと歩いていく。

 森は枯れていくばかりで、申し訳ない気持ちになってくる。


「……ん?」


 ドスン、ドスンと。

 大地が揺れ、遠くから重い何かが近づいてくる。

 自分と同じドラゴンだったら、話ができるかもしれない。

 そう、願っていた。

 しかし、ヒカリの前に現れたのは。


「こんにち――」

「グオォォォ……」


 枯れた木々を薙ぎ倒し、透明な鉱石で作られた巨人だった。


「ひゃあああああああっ!!!!」


 ファンタジー知識のあるヒカリだからこそ、巨人の正体が一瞬で理解できた。

 ゴーレムだ。

 圧倒的な攻撃力で全てを粉砕し、圧倒的な防御力でどんな攻撃も無効化できる。

 ヒカリが寝る間も惜しんでプレイしたゲームでは、中盤くらいでボスとして出現していた。


「グォォォォ!!」


 ヒカリを視界に捉えるなり、拳を振り上げるゴーレム。

 拳をくらってしまえばマズい。

 そう判断したヒカリは、逃げることにした。


「ひええええっ!!」


 逃げようとして後ろを向いた瞬間、ヒカリの尻尾がゴーレムにぺちんと当たってしまう。

 次の瞬間、粉々になるゴーレム。


「……はえっ?」


 尻尾が軽く当たっただけである。

 ドカーンじゃなくてぺちん。

 しかし、粉々になってしまうゴーレム。

 ヒカリは悟る。

 転生先である漆黒のドラゴン、自分の思っている以上にとんでもない強さだったりするのでは。

 最強の力を求めたのだから、強くなければ困るのだが。

 怖くなってきたヒカリは、取り返しのつかないことになる前に洞窟へと帰ることにした。

 まずは洞窟内で黒い霧を抑え込む方法を見つけてから。

 それから活動を開始するべきだ。


 ――帰ろう。


 そう決めたヒカリが、元来た道を戻ろうとした時だった。


「「あっ」」


 木の陰からひょっこりと顔を出していた銀髪の少女と目が合ってしまう。


「やばっ、逃げ――」

「ひゃあああああああああああああっ!!!!」


 突然の遭遇に、ヒカリは悲鳴を上げてしまう。

 ヒカリの悲鳴を聞いて、一目散に逃げだそうとしていた銀髪の少女が急ブレーキをかける。


「えっ、今の悲鳴――」

「あば、あばばばば……ににに、にんげんだぁ」


 コミュ障発動。

 出会いたかった人間だというのに、ヒカリは緊張して言葉が出てこない。


「君なの?」

「ひいっ!! わ、わわわ私を殺すのぉ!? いや、ちちちがう。私が殺すんだぁ!! ちがう!! そ、そそそそのっ!! 近づかないでぇ!!」

「……」


 一定の距離を保ったまま、ヒカリを見つめる銀髪の少女。


「わわわ、わたっ、だめっ」

「君、喋れるの?」


 ゆっくりと近づいてくる銀髪の少女。

 ダメだと言わなければ。

 私に近づいたら死んでしまうと言わなければ。

 しかし、コミュ障にそれは難しい。


「だ、だだだ……」

「君、悪いドラゴンじゃなさそう」


 ぺたんと。

 銀髪の少女が、ヒカリに触れる。

 ダメだ、この子死んだ。


 ――と、思った。


 しかし、銀髪の少女は笑みを浮かべたまま。

 ヒカリの頭を撫でている。


「し、しししし……」

「ミラージュウルフとクリスタルゴーレムを瞬殺した時はヤバいって思ったけど、おとなしくて可愛いドラゴンだね」


 死んでいない。

 ヒカリに近づいても死ぬことはなく、あろうことか触れても死なない。


「ど、どどどどしてしなしなないの……?」

「めっちゃ吃るじゃん……なんでだろうね。君の膜翼から発生してる黒い霧って絶対ヤバいやつなんだろうけど私には効かないみたい」


 けらけらと笑う銀髪の少女。

 即死はしなくても時間差で死んだりしないだろうか。

 不安にはなるが、その様子はない。

 容姿からして、銀髪の少女は15歳くらい。

 黒いリボンで束ねられた腰まで届く銀色のポニーテール。赤と青のオッドアイ。

 整った顔立ち。華奢な体格。

 動きやすさを重視した丈が長めの白いノースリーブと黒のショートパンツ。

 革製の指抜きグローブとベルト。使い込まれたポーチ。

 ニーハイソックスとブーツ。


「あっ、あっ」

「ああ、そうだったね。まだ自己紹介をしていなかったね。私はミレイア。この島唯一の住人だよ。君は?」


 吃るヒカリに、名を訊くミレイア。

 スクールカースト1軍間違いなしの美少女に話しかけられてしまえば、ヒカリのコミュ障発動は避けられない。

 話しかけてもらっていながら、「あっ」ばかり言っていては悪印象を与えてしまう。

 名乗れ、名乗るんだヒカリ。

 ミレイアに名前を聞かれたヒカリは、深く息を吸い込む。

 そして、噛まないように落ち着いて。


「ヒ、ヒキャバブ……」


 噛んだ。

可愛いなこのドラゴン……( ˇωˇ )


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