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異世界の魂

 「地球とは何が違うのだ?」


 辺境伯の問いに答える。


 「昔の地球では脳には使っていない部分があるとされ、それを使いこなすと膨大な力を得ると考えられた時代が有りました。地球では否定されましたが」

 「こちらは違うと?」

 「正に。魔法やスキルや魔力といった、肉体の物理要素以外で物理現象などにアクセス・改変するというのは地球人には無い能力です」

 「そんなものか」

 「平民でも『点火』は使えるのが普通で、魔力無しなど聞いた事がない。そんな話を聞きました。差別的に見られなかったのは、教育が良い以外にはそもそも想像もつかないというのはある気がしますね」

 「私も想像が出来ぬ。『貴族の割に少ない』ならまだしも『完全にない』とはどんなものなのか」

 「地球では火を少し起こすにも専用の道具を開発してきました。そういう方面に予算や人材を割り振ってきました。ホモ・ファーベル、道具を作る種族と人類を定義し名付けた人もいたくらいです」

 「まるでドワーフだな」

 「どんな種族なんです?」

 「人間より堅太りで背が低く、鍛冶に特に優れるがその他のからくりも得意だ」

 「地球では想像上の存在としてなら認識されていましたが、実際にいるのですね」

 「ああ。しかしなぜ似通うのだろうな」

 「神様が本当におわし、私がこうしているからには地球にドワーフの方が転生されていたケースもあったのかも知れませんね」

 「実例があるとなんとも言えんな」


 「ところで、このお城にもドワーフの方はいらっしゃいますか?相談したい事があるのですが」

 「次から次だな。いくつ案があるのだ」

 「まずは試しに聞きたい事があるくらいですので」



 辺境伯の命により案内役の騎士に連れられ、広大な城の一角にある離れの工廠にくる。痛みの緩和を教えたフローラさんが成功している、つまり同業が助かって居るためか騎士たちはだいぶ好意的だ。


 「ガランドさーん」


 槌音の響くなか、普通の声かけが行なわれる。聴こえるのだろうか?


 ボワアァ〜ン!と奥から音がする。カンフー映画のドラみたいな音だ。


 「今来ます」


 騎士が言って少しして、奥からカイゼル髭と言うにも膨らんだ鼻下髭と、顎髭が巨大な滝のように多い背の低い男性が来た。いかにも鍛冶場と言う感じの厚手のエプロンをしているが、手袋は薄く小さい。種族自体熱に強いのか、特殊なものなのか。


 「おう、なんだ!」


 声がとても大きい。


 「この人は主神様に遣わされた別の世界からの客人だ。技術の話がしたいらしい」

 「分かった!」


 ガランドさんは大声で言う。


 「おめえら、俺は客と話だ」


 今度は普通だ。何でだろう。


 道すがら騎士に聞くと、ドワーフは耳が良いそうだ。一方過剰に敏感ではなく、大きな音に耐性があり普通の話し声なども工廠で聴き分けるという。つまり工廠内部での返事が銅鑼で、まだうるさい入り口で私達にだけ大声だったのは『人間(ドワーフは太のっぽと呼ぶらしい)向け』の喋り方だったようだ。



 「で、話てのはなんだ」


 工廠から離れた静かな建物に案内される。中は豪華な貴族向けと言う風な部屋で、クラシックスタイルなメイドさんがいて、辺境伯の執務室並のお茶を淹れてくれた。


 「まず、私は邪神の軍勢に対抗すべく創造神様から遣わされた者です。これはご存知でしょうか」

 「ははあ、剣を久々に取りに来た膝やってるはずの騎士が言ってましたわ。創造神様の御使いてのはあんた様なのか。確かにここらの太のっぽの、ああいや人間の国で見かけん顔立ちだわ。五百歳越えたが初めて見た」


 椅子から降りたガランドさんは一度だけだが両手を上げ深くお辞儀をした。


 「な、何です?」

 「ドワーフは物作りを尊びます。『世界をお作りになられた』創造神様への信心が他種族より深いんですよ」

 「地球だと鍛冶とか火の神様信仰なイメージでした」

 「そらあ山の神様やらその神々も祀りはしまさあな。けどその神様方も創造神様のお作りなさったお子や孫なもんで合祀してますな」


 案内の騎士とガランドさんが補足してくれる。創造神様を一段上とする信仰体系か。


 「と、話が逸れた。何がお望みで?」

 「技術の話なんですが、値段の話もかかわります。魔力が通りやすくて安価な金属には何が有りますか」

 「まぁ、代表は鉄ですな。よく取れて用途が広いから戦略物資じゃありやすが市井のための価格統制もしてますわ」

 「では針金を作る場合、現代の限界の細さはどのくらいでしょうか」

 「純鉄ですかい?」

 「ああ、すみません。鉄のみで合金等でない場合です」

 「限界は縫い針の中ごろくらいすな」

 「具体的な例は有りますか?」

 「こういう話用に見本はあるんでちと待ってくだせえ」


 手近な背の低いタンスから、針を1本机に出された。


 「これの……この辺りで」


 細い針の中ごろ、太さは髪の毛くらいか。これならいけそうかな。


 「作りたい物と言うのは義肢に仕込む感覚装置です。騎士の方々の掌に感覚を持たせるのが当面の目標ですね」

 「そんな事が!?」「出来るんですかい!」


 驚愕する二人。


 「では針金なり長くて魔力が通る物があればちょっとやってみましょう」

 「へい只今!」


 ガランドさんが引き出しを探しサンプルの針金を出す。


 「では手袋なしで針金を握って居て下さい」


 弱い信号を流し、逆に受け取る。流石に器用な種族ゆえか、感圧に長けているようだ。感知する細胞の密度が人間の三倍、それが全体に隙間なく多層になっている。


 「では行きます。何を感じても握ったままで」


 信号を流す。


 「おお?なんだこら?!」

 「これは何を?」


 騎士の問いに言う。


 「掌の中から押されてるみてえだ。中で力のつええ指に押されてる感じだ」

 「そんな事が?」

 「外から精霊の力を介して頭に圧力を感じているかのようにしているんですよ」

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