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賭けを足掛かりに

 「それは本当か」


騎馬などを自在に操れるなら。それは極めて有益だろう。


 「地球でも電気信号を流すなどの実証実験は高等動物でやってましたからね」


 動物愛護の気風とシミュレーション環境の充足(スパコンの高度化と一般化)で23世紀には余りやらなくなっていたが、それでも過去の実験データはあった。


 「電気を操れる人をとにかく大量に募集したい目論見もあるので、まずは自発的な参加者が集まるのは有り難いです」

 「何か考えでもあるのか?」

 「私は、出来るだけこの技術を一般的であると印象付けたいのです。弱い電流さえ扱えれば何かに干渉出来ると言う事も」

 「更に先がありそうだな」

 「手足に欠損がある方々は病棟で誰も動く義肢を着けていませんでした。つまり、辺境伯家の騎士身分でも一般的ではない」

 「それはそうだ。動く義肢など希少な魔法の……まさか」

 「ええ。地球ではある程度以上普及したものでした」


 貧困地帯や長期紛争地域にも支援医療品としてはむしろ積極的に廉価品は贈られていたくらいだ。


 「だが誰もが雷属性を持つ訳では」

 「今私達の心臓が脈打っているのも、手足が動くのもある程度は電流です。全てではないですが」


 イオンチャンネルとかはややこしいので割愛。


 「雷属性の弱い魔法で人や魔物が死ぬことはありませんか?」

 「……ある。だから騎士や正規の魔法使いは捕縛の麻痺呪文は出力制限を精密に習う」


 それでもたまに事故はあるらしい。


 「それは体内の電流、本当にごく弱いそれを乱すからです。魔力もこの世界では影響するかも知れませんが」


 魔力に当てられた麻痺みたいな現象はあっても門外漢だ。


 「痺れ茸みたいなものは」

 「それは多分別口です」

 「違うのか」

 「ものすごくざっくり言うなら、さっき言った電流は……そうですね、軍隊なら光信号や狼煙みたいなものです。ですが通信法は馬の伝令とか有りますよね、鳥……はあるか分かりませんが」

 「大都市内と都市圏の街同士向けが普通だな鳥便は、野生の飛行魔物などがいるから軍用、特に野戦軍は余り頼らない」

 「やはりそうですか。地球でも伝書用の鳥狩りは戦争で結構あったそうです」


 軍用含め実用伝書鳩文化自体は魔物が居ない地球でも過去大きかった時代もあるが、訓練野生双方の鷹などの犠牲や単純な行方不明も結構あったようだ。むしろ速いが確率問題があったから『より速く確実に』を求めて規模が大きかった一面もありそうに思う。


 「それで、例えば鳥の通り路に毒の煙を撒いたらどうなります?伝令の馬を転ばせたら?」

 「なるほど、『通信が妨害される』な、雨や嵐の日の狼煙のように」

 「身体も同じです。電流に電流をぶつけるのも麻痺を誘いますが、身体の動きには別の仕組みも働いていて、茸自体に雷属性や魔力を暴走させる作用でもないなら茸に当たり痺れるのは『別の仕組み』がやられるからです」

 「なるほど」

 「安く作れる義肢に電流をと思っているのは、検出……あ」

 「どうした」

 「この世界は地球と違い魔力を誰もが持つんですよね。例外はありますか?魔力なしみたいな人は」

 「手足に障害があるまま産まれる事があろうと魔力無しなんてものは聞いた事がないな」

 「では魔力を検出する安い素材は」

 「魔物素材なら」

 「なら魔物素材で魔力検出をすれば……方針が増えたかも知れません」


、、、


 「提案か」


 三日ほどのち、辺境伯に時間を頂く。執務室にはいくつかの素材が運び込まれていた。


 「は。まず、騎士の方々と兵士さんたち、後は予備役あたりに賭け事の為の選手試験をと」

 「賭けで身を滅ぼす者を増やす気か?」


 怖い。殺気だろうか。


 「賭け事自体はハマる人はハマります。他に流れるより客の監視が利くほうがいいかと。賭けにハマるのは脳の病なので、私にある程度知識もあります」

 「それなら闇賭博をされるよりはマシか」


 VRMMOもガチャあったからなあ(遠い目)VRゲームに関わる仕事柄もあってある程度知ってしまった。


 「なお、ごく弱い雷魔法の使用を通じて人間はそれを精密に操れる事を広めるのと、使える人材の発掘が本命です」

 「広めて何とする」

 「精密な使い手であれば、馬など、馬以外でも電流が通る生き物なら操れる可能性が産まれます」

 「まことか」

 「確定ではありませんが、少なくとも実験用に手配頂いたネズミの魔物は糸で楽に命令通り走らせられました。魔物相手に雷の魔法命令は通じうるかと」

 「よし、では兵も含めた属性検査の結果の洗い直しなどからしてみよう」

 「ただネズミは神経の単純さもありましたが、電気的にも対抗して来るものではありませんでした」

 「どういう意味だ?」

 「この世界の魔物はまだよく存じませんが、例えば雷の魔力をまき散らす魔物などはおりますか?」

 「帯びているのもまき散らすのもいるが、何か関係が?」

 「こちらの流す雷より強い雷を帯びていると命令が通じません。また、雷の力をまき散らされると命令が乱れる恐れがあります。他にも目に見えない力が作用する可能性も」

 「難しいな」

 「ですので、そういった点を含め検証は要ります。一応今のは懸念点だけで、利点自体は他にもありますが」

 「冷水を浴びせてから暖めるのか」

 「使えるとだけ思われても言い辛くなる部分でしたので」

 「して、使える点とは」

 「能動的にまともな命令一つをこなさせるには電気あん摩師の新人程度には熟練する必要が有ります」

 「そんな者は騎士ならともかく兵はあん摩師になるわ。これも冷水ではないのか」


 辺境伯が呆れ顔をする。


 「能動的命令が出来ずとも、触れた対象の不調などが判る人がいる可能性が有ります」

 「なに……?」

 「例えば喋らない馬が何かを嫌がっている原因などは、弱い信号を一部でも読めるなら可能です」


 フルダイブVRの要諦は脳内電気信号の『送受信』にある。脳内を読める事もシステム上必須なのだ。雷属性あるいは魔力を読めるなら……。


 「この場合魔力を読めるスキルでもあり得ることかも知れません。そちらはこの世界でしか検証できませんが」

 「たまに妙に気の付く回復役や馬丁はいたが、もしや……」

 「単に人一倍気が回り仕事に細かい、以外の可能性はあるかと」

 「そうか……では兵以外でも牧場や馬商人などにも聞いてみよう」

 「では魔力の話になった所で、次の話をしましょう」

 「そういえばそこの素材の話をして居なかったな」


 私は辺境伯に次の話題を振ることにした。

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