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『紅蓮の魔女』と『神速の配信者』  作者: 我王 華純
第二章 集う宿星たち
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第21話 突入から開戦まで


 あれから検証をすべて終えた俺とアイリーンさんは、無事にダンジョン統括省のコーディネートのもと、沖縄へ上陸を果たした。


 空港でかすみさんたちに見送られながら、用意された飛行機に乗り、沖縄に到着した頃には、日はとっくに暮れており、さすがにその日はホテルで宿泊となった……


 

 まあ、その日はさすがにゆっくり休めたよ、ここまではね。


 

 次の日の朝からホテルからそのままSランクダンジョンへ直行となりました。



 いや、本当にもうそのままダンジョン行くんかい!って感じ。


 沖縄のギルドとかダンジョン統括省とか寄るのかなぁ?って思ってたけど、うん、何もなかったね。


 一応、迎えの車の中ではダンジョン統括省の担当の人から簡単な説明は受けた。


 新たなSランクダンジョンの名前は『海魂の冥穴』、水系統のモンスターの巣窟らしい。


 出現してから何人かの冒険者が挑むも、大半は全滅。


 現在は、ダンジョン統括省が依頼したクランが偵察中だとか……


 ちなみにそのクランの名前は『斬ん人(きりんちゅ)』、そういえば以前にどこかで聞いたことがあるような……特徴的な名前だから、何となく憶えている。


 念のため、『斬ん人(きりんちゅ)』が持っている端末のGPS機能で居場所や状況がわかるようにはなっているらしい。


 ダンジョンの入り口まで案内され、支給品を渡される。

 『エリクサー』や『転移の巻物』、『復活の玉』といった高価なアイテムも支給された。


 『斬ん人(きりんちゅ)』にも同じアイテムは支給されているので、何かあっても安全なはずだとは聞いているが……そこはSランクダンジョン、油断は禁物だろう。


 「それでは、準備は良いですか?」


 「はい、私はいつでも行けますよ!ハヤトさんも大丈夫ですか?」


 アイリーンさんも準備万端のようだった。

 思えば、前回のダンジョンはセイラさんと清十郎さんがいたので、慌ただしかったが今回は二人きりでの挑戦だ。


 そう考えると気合も入ろうというものだ。


 「じゃあ行きましょうか!」


 「はい!」


 いつもよりも幾分か大きな声量で気合を入れながら、Sランクダンジョン『海魂の冥穴』へと入っていった。


 

 ◆



 ダンジョンに入った直後は、魚や蛸なんかの水棲動物のようなモンスターに襲われながらも、順調に進むことができた。


 アイリーンさんの火力に加えて、以前とは見違えるほどにレベルアップできた俺も戦闘に加わっている。


 はっきり言ってこの程度のモンスターなら、アイリーンさん抜きでも楽勝だな……


 そんなことを考えてしまうくらいには、モンスターのレベルも低かったし、脅威に感じるものは何もなかった。


 そして、今の俺のプラス材料はもう一つある。


 

 〈いやいや!待ってました!〉

 〈こんなにすぐにSランクダンジョンに挑戦してるとは……〉

 〈しかも『配信王』?『神速』さん、超級職になっちゃったの?〉

 〈それに【七星剣・セプテントリオン】……〉

 〈もう弱かった『神速』さんはどこにもいないんだね……〉


 そう、配信だ。

 今回は、俺が新たに習得したスキル『真・配信術』を使用している。

 これは俺の目で見た光景がそのまま配信されてしまうという恐ろしいスキルだ。


 今まさに俺の視界が全世界に配信されてしまっている……


 我ながら変な感覚だなぁと感じながら、ダンジョンの奥深く目指して進んでいた。


 ちなみに、同時に習得した『配信中ステータス上昇(極大)の効果も凄まじいものがあり、今の俺のステータスはそんじょそこらの冒険者よりは遥かに高いステータスを誇っている。


 〈さっきから『神速』さんて強すぎじゃない?〉

 〈いや、それはさすがに超級職だしさ〉

 〈今倒したのって、グレイトバラクーダでしょ?あんな凶悪なモンスターを一撃で倒しちゃったよ……〉

 〈それに、『真・配信術』だっけ?『神速』さんの視界が配信されてるんだよねこれ?〉

 〈ああ、そうみたいだな。やだ、びっくりするくらい見やすいんだけど〉

 〈同感wそれに迫力がやばいw〉


 俺が超級職になったこと、そしてそれに伴い習得したスキルは、動画配信の概要欄に記載しておいた。


 これにより、視聴者たちは現在の配信で俺がどんな行動を取っているのか、またどのような効果が表れているのか、がリアルタイムでわかるようになっている。


 そのため、新環境での配信の影響か、視聴者たちは既に熱狂の渦に巻き込まれている。

 何と同時視聴者数八十万人、前回のグランドダンジョン攻略時に迫る勢いだ。


 まあ、世界初のグランドダンジョン踏破を生中継してしまったんだから当然か。



 俺も有名になっちまったもんだ……


 

 感慨にふけっていると、突然端末からアラームが鳴り響いた。


 確認してみると、追いかけているGPSから危険信号が送られてきている。

 持ち主に生命の危険が迫っているということだろう。


 「ハヤトさん、これは……」


 「はい!急がないとやばいですね。えーと、距離は……」


 端末で現在の位置関係を確認すると、『斬ん人(きりんちゅ)』の三人がいる場所まではまだもう少し距離があることがわかった。


 「これは、このままじゃ間に合わないかもしれないな……」


 今のペースで行けば恐らく間に合わずに三人とも死んでしまう可能性が高い。


 まあ『復活の玉』を持っているらしいので、万が一間に合わなくても最悪の事態は免れるが……


 高価で稀少なアイテムだ、使わずにすめばそれが一番良いだろう。


 「ハヤトさん、とりあえず先に行ってください。『神速』なら間に合うかもしれません」


 「……はい、やっぱりそれが一番ですね」


 「私も出来る限り早く追い付きますから、気を付けてくださいね」


 「わかりました……それでは、行きますよ!」


 『神速』を使用して最短距離で突っ込めば何とか間に合うかもしれない。

 俺は『神速』を使用して一気に走り出した。


 道中には激流や大きな湖など、さまざまなポイントがあったが、全て『神速』で飛び越える。。

 モンスターも何度か襲い掛かってきたが、全て無視した。


 目指すは、『斬ん人(きりんちゅ)』たちがいるポイントのみ、とにかく一直線に突っ走る。


 

 ……そして、数分後にはポイントのすぐ近くまで辿り着くことが出来た。


 

 端末を確認すると、何とかまだ生命反応が見受けられる。


 間に合った……のか?


 少し開けた場所に三人はいるらしく、それらしい場所まで辿り着いたのだが……



 そこで俺の目に飛び込んできたのは、力なく倒れ伏す三人の姿と……


 三人の前に立っている半魚人のようなモンスターの姿だった。


 半魚人は三人の内の一人に対して、銛を突き立てようとしているらしい。


 ……危ない!


 俺は一気に『神速』で駆け出す。


 ……と同時にセプテントリオンのスキルを使用する。



 俺が使用したスキルは、セプテントリオン・メラクの能力。


 メラクは自らの眷属である小型の蜘蛛の命と引き換えに、その位置まで瞬間移動ができる『蜘蛛転生』という能力を使っていた。


 さすがに、俺には小型の蜘蛛を生み出す能力は無い。


 というわけで【七星剣・セプテントリオン】の場合は、俺が望む位置に蜘蛛の形の紋章が出現する仕様となっていた。

 俺は、その紋章がある位置まで瞬間移動が可能というわけだ。

 もちろん、紋章を出現させることが可能なのは、俺の視界の中のみということになるが、『神速』を組み合わせれば、強力無比なスキルと言えるだろう。


 俺は瞬時に、倒れ伏す男性の背中に紋章を出現させると、即座にスキルの発動を宣言する。


 「メラク」


 半魚人の銛が男性目がけて突き立てられようとしたその瞬間――


 眼前まで瞬間移動した俺がその銛を七星剣で受け止める。


 「っしゃぁ!間に合ったぁ!」


 突然出現した俺の姿に驚きを隠せない半魚人。

 

 その隙をついて、俺は更なるスキルを使用する。


 「ミザール!」


 次に使用したのはセプテントリオン・ミザールの能力。

 空間を自在に操作することが可能だった彼女の能力は当然……転送能力だ。


 俺の背後に空間の歪みが発生したかと思うと、三人が歪みに飲み込まれていく。


 ……とりあえずこの三人は、少し離れた場所に移動させることにした。


 「よし……後はお前を倒すだけだな!」


 突然出現した俺の姿に戸惑っていた半魚人も、仕留める寸前だった獲物の姿が消えてしまったことにより、怒りの表情を露わにし始めた。


 さっきの三人はもう虫の息だった。

 少しでも早くこいつを倒して、回復に向かわなければならない。


 「さっさとやるぞ!アリオト!」


 俺は更なるスキルを発動し、体中に輝く炎を纏う。


 「ギャァア!?ウギャギャギャギャ!!!!」


 炎が苦手なのか、輝く炎を見た瞬間に騒ぎ始める半魚人。


 「うるせぇよ!さあ行くぞコラァ!」


 残された時間は少ししかない。

 『斬ん人(きりんちゅ)』の団員たちの命を救うべく、半魚人との戦いが幕を開けるのだった。

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