あのとき、あなたを選んでいれば
美しいらしい私は
美しくても、愛されない
誰か、私に気づいてくれますか?
私は、美しいらしい
どうやら、産まれた時から美しかったらしい
私を産んで、亡くなったお母様とそっくりらしい
全て、らしいでしかないが
だって、誰も私を見てはくれない
話しかけてもくれない
〜~〜~〜〜~〜~〜~〜
狭い部屋
ただ、出されるだけの食事
部屋にある本
それだけの生活
私が、前世というものを思い出さなければきっと生きてはいなかっただろう
その、前世の記憶も曖昧で
本を読むのに役にたったくらい
鏡を見ても、心は動かない…
毎朝、起きて
食事をして
本を読み
食事をして
体を拭き
眠る
どんな幼児が生きていけると言うのだろう
私は10年の月日を生き延びたらしい
〜~〜~〜~〜~〜~〜~
ある、月のない夜
一度だけ来てくれたアナタ
私に選択肢をくれた
生きるか、死ぬか
それは、まるで救いのようで…
思わず、その手を取りそうになった
結局、私は選べなかったが
アナタの言葉はずっと、私の支えとなった
〜~〜~〜~〜~〜~〜~
ある日
私の存在が公になり、私は
侯爵家の令嬢と認められ
満足な食事と教育で
まるで、物語のお姫様のように
それはそれは美しくなり
私の気持ちに誰も気づくことなく
殿下の、婚約者となった
〜~〜~〜~〜~〜~〜~
でも、私の心は軋んだまま
褒められたって嬉しくもない
殿下だって、見ているのは外見だけ
〜~〜~〜~〜~〜~〜~
いよいよ、明日は結婚式
私は
バルコニーの手すりの上に立ち
見えないアナタへと手を差し出す
そこに、いるのでしょう?
このまま、飛び降りるのか
それとも、
アナタ
この私を
迎えに、来てくれますか
私、今なら選べそうです
アナタとの自由を