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2話スパチャするために働く


 俺の目の前を1秒あたり3個の量産型簡易魔道具インスタントマジックアイテムが通り過ぎていく。一見すると手の平に収まるほどの大きさの箱だが、内側に術式がびっしり刻まれており、魔力を流し込むことで対応した魔術が発動するというわけだ。


 丁寧に使えば数回、ヘタクソが使えば1度で術式がほつれてただの箱になる。まあ使い捨ての道具というわけだ。


 ベルトコンベアに乗せられたそれらは次の工程で1つずつ小分けにパッケージされ、ダンボールに押し込まれ、出荷されていく。


 俺の仕事は検品だ。外装に問題がないかをチェックする。先程もいったように1秒あたり3個流れていくので、チェックはかなり雑になる。まあ一目見て分かるような破損でなければOKというわけだ。


 この作業はあまりに退屈過ぎる上に目がおかしくなるから誰もやりたがらない。だから他の単純労働に比べてほんの少し時給が良い。それがこの派遣バイトをしている理由だ。


 俺は人差し指で箱を弾いた。箱は足元にある網カゴに入る。


「おい、今の破損してたか?」


 たまたま通りがかった社員が俺に声を掛けてくる。


「うっす。隅っこが欠けてたっす」


 俺は返事をするが、視線はベルトコンベアに固定されている。


「へえそうか、俺に全然分からなかったけどな」


 社員は帽子を取って、自分の角をポリポリとかいた。彼は鬼人だ。鬼人は背格好こそ人間と大差ないが、角に魔力を溜め込み、それを身体に流し込むことで常人の何倍もの力を出せる。


「おまえは目が良いからあってるんだろうな。じゃ」


 社員は帽子を被り直して、この魔道具の素材である半魔導体が満載されたカゴを両肩に担いで歩き出した。あれ1箱で50キロくらいの重さがあるはずなので、流石は鬼人といったところだろう。


「うっす」


 俺も手を軽く上げて、挨拶を返す。


 ちなみに物理的な目玉はベルトコンベアを見つめているが、心眼の方はキチンと社員を見ている。俺はとても真面目な派遣バイトだ。


 俺は先程弾いた箱を改めて心眼で分析スキャンする。


 やっぱり術式がキチンと繋がってないな。これじゃあ魔術は発動しないだろう。外見はキレイだけどこれは不良品。


 術式が扱えることを知られると面倒な仕事をやらされかねないので、社員には適当なことをいった。


 別にスルーしても俺の仕事内容からいえば問題ないだろう。しかし、いざダンジョン内で魔導具を使おうとして発動しなければ、命に関わる危険に繋がる。そんなことを想像してしまう俺は少しお人好しなのかもしれない。


 終業時間を知らせてくれるチャイムが鳴り響く。素晴らしい音色だ。


 俺は夜勤のヤツと交代して、ロッカールームに引っ込む。制服を事務の単眼の鬼人お姉様に返却するときに給料をもらう。彼女は非常に抜け目のない方で、以前トイレでサボっていた獣人が何食わぬ顔で給料を受け取ろうとしたところ、横腹を抉り取られていたのを見た事がある。


「お疲れ様です」


「お疲れ様です。いつもありがとうございます、検品の仕事はやってくれる人が少ないから助かります」


 顔の半分の大きさほどの瞳が閉じられ綺麗な弧を描く。


「うっす」


「気を付けて帰ってね。最近このあたり物騒だから」


「うっす」


 俺はリュックを背負い足早に職場を出ていく。


 まあとにかく俺はこの仕事で1日に8400円(時給1200円で7時間労働)を稼ぐ。そこから派遣会社に500円取られて、連盟ユニオンに500円少々を税として納めて、5000円をスパチャに充てる。残りの金で衣食住を賄っているというわけだ。


 もっとスパチャしたいな。今のペースだと2日に1回の赤スパが限界だ。この仕事も悪くないが、何か考えないとな。


 エターナル・ブリザードチャンネルのリスナーは雪ダルマと呼ばれている。ちなみに赤スパのし過ぎで金欠になり、生活が回らなくなった奴らは火ダルマと呼ばれている。



 俺はこれからも立派な雪ダルマでありたいと思う。

 

検品の仕事で目がおかしくなり、常に視界の隅に製品がちらつくようになったことがある人、チャンネル登録と高評価をお願いします!

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