表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/160

第1章「塔からの脱走」【8】

 町中でラミアンに絡んできた鼻息の荒い男5人をカレノは1人でのした事もあった。そんな彼女だが、ラミアンとの接触は女性兵士の中でも1番少なかった。1日の会話が朝の挨拶だけという事も珍しくなかった。


 カレノ曰く、護衛とその対象者との境界は守るべき、なんだとか。近付き過ぎると感情が邪魔をして冷静な判断が出来なくなる可能性がある。


 境界線を無くしてしまった側の急先鋒はスリヤナである。もちろんラミアンと1晩を共にしている。彼女はとにかくラミアンの隣を陣取り、所有権を殊更に主張するのだ。


 そんなスリヤナを羨むこともある。


 決して、モテる男を毛嫌いする訳でもない。


 仕事でなければ会話を楽しみたいし、誘われれば彼の部屋へ行く事もやぶさかではない。しかしカレノは思いとどまる。


 極端な話、護衛の女性兵士8人全員がラミアンと関係を持ったとすると、大変な事になり得る。


 誰もが嫉妬心を燃やし、独占欲に我を忘れる。残った男性兵士2人では、どうにも出来ないであろう。


 長い旅路、そういう事態は避けたいものである。国から任された大切な目的があるのだから。







 どこかの国の秘密の場所。


 フェリノア王国の諜報員ゲジョルは、地下の1室に閉じ込められていた。目隠しに猿轡、両手両足を縄でぐるぐる巻きに固定されていた。彼を監視するのは、同じフェリノアの諜報員である。


 ゲジョルは今、フェリノア諜報部第3班の班長タムリアと結託し、フェリノア第一王子カドゥーバを暗殺しようとした罪に問われている。本来ならば超が付くほどの重罪なのだから、即極刑が然るべき所である。


 しかし同じ第1班の班長コザに言わせると、タムリアに無理矢理協力させられた点は同情に値する、らしい。


 そこでしばらくの監禁、いや謹慎を命ぜられた、という訳である。身動き1つ取れないように縛られているのは、自由にしておくと謹慎の命など無視して勝手に動き回るから、それを封じる為である。


 ゲジョルの部下ネビンやラゾイは遠くから見守るしかない。近付く事も許されていないからだ。


 ゲジョルの監視をしているのは、第7班。およそネビンやラゾイでは太刀打ちできない格上の存在なのだ。ゲジョルを助け出そうなどとは考えの1つにも入っていない。


 となれば、ゲジョルの謹慎が解けるのを待つしかない。ネビンやラゾイは諦めてその場を離れる事にした。ここで時間を無駄にするより、果たすべき任務を遂行する為に費やした方がゲジョルも納得するだろうと考えたから。







 エルスとアミネ、そしてゼオンの3人が旅立つ日がやって来た。


 ″八つ鳥の翼“において、エルスの後釜がようやく決まった。年齢は全く違って40歳前後。剣技に自信を持っていたようだが、エルスにはまるで叶わず、ツーライとどっこいどっこいといった所である。


 ただ″八つ鳥の翼“は何でも屋なので、剣技が優れてなければいけない訳ではない。後は真面目に働くかどうかの方が重要なのだ。


 要領はいいとは言えないが、仕事に真摯に取り組む姿勢はヤンドも認めた。


 晴れて彼を正式に採用する事が決まったのだ。




 ゼオンの方も同様に補充人員が決まり、エルスとアミネの出発に間に合ったという訳だ。仮に決まるのが遅れたら、ゼオンは置いてけぼりを喰う所であった。


 エルスの見送りには″八つ鳥の翼“の面々が集まっていた。若者の旅立ちを喜ばなければならないと、ヤンドはいつにも増してにこやかであった。


 ツーライとコムノバは普段通り。普段通り、昨日の酒が残っているような面持ちである。新人の男は知り合って間も無いエルスに思い入れはないので、やや退屈そう。


 そんな中、シャンだけはいつもと違い、どこかしんみりしている。昨晩は全員でエルスの送別会を開き、その後ツーライやコムノバと酒場にいたのだが、彼女だけは酒が進まなかったようだ。


「やだねえ。あの子の成長を見るのが楽しみだったのにさぁ」


 あまり酔ってはいなかったが、シャンはこの台詞を5、6回は繰り返した。ツーライはその度に大笑いをしていたのだとか。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ