14.復活
痛い。
竜の顎が俺の頭から首を完璧に捉え、万力、いや億力のごとく締め付けてくる。
頭蓋がひしゃげているのが分かる。血が、目から耳から鼻からたらたらと流れ出す。
しかしこの竜の咬筋力なら俺の頭くらい卵よりも簡単に噛み砕けそうなものだが、何故そうしないのだろう。
う。
生臭い息と共に分厚い舌が俺の顔中を這いずり回る。非常に気持ちが悪い。
血を舐めているのか。
グルメか。
俺の頭を少し噛んでは流れ出る血を舐め、噛んでは舐め。
ィェリガルの必死の猛攻も虚しく、この場は竜の食卓と化したらしい。
「ブサイク……まさか私を庇って…………?」
別にそんなつもりはない。
再生した時に何が何やら訳が分からずキョロキョロしていたらいつの間にか目の前に居たドラゴンにそのまま食われただけである。
「といってもどうせ死なないんだから何でも良いですわね。庇って当然ですわ」
そう言うだろうと思っていた。
情など無い。
ある訳ない。
そろそろ頭が完全に潰れそうである。
この状況を誰が打破できるのだろう。
いつまでも再生し続ける俺をドラゴンはいつまでも食い続けるのか?
シュタ
チャキっ
ヴゥーン……
「ふー、ようやく隙だらけ」
上の方から声が聞こえる。
ユニだ。
竜の背中に乗っているらしい。
「柄じゃあ無いけど、チームの勝利ってところかしら」
フォン
「あ、私がヒビを入れた首筋を狙って……!?」
ザシュウゥーーーーーッ
「グギャアアーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッッッ…………」
ドズーーーーーーーーン
全く見えないが、どうやら致命傷を与えたらしい。
ドラゴンが倒れた。
その衝撃で俺の頭が食いちぎられた。
口が閉じる。頭がドラゴンの口の中に閉じ込められた。
「ユニ! やりましたわね! さすがリーダー!!」
「まあね」
「よっしゃーッこれは勝利記念セレブレーション祝賀パーティー開催決定ですわ! ガデランの愚民どもに盛大に祝わせましょう! さあ帰りますわよ!!」
タタタ……
二人は帰っていった。
俺は血の匂いが立ち込める暗闇の中でまた体が再生するのを待ち続けていた。




