ヲタッキーズ102 魔のヒロインレイプ
ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!
異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!
秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。
ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。
ヲトナのジュブナイル第102話「魔のヒロインレイプ」。さて、今回はスーパーヒロイン専門のレイプ魔が出没w
次々と被害者が出る中、犯人は警官との目撃情報に万世橋警察は震撼。心に傷を負うヒロイン達の捜査の末に…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 スーパーヒロイン専門
昼間、御成街道鉄道橋の下を万世橋側に少し歩くと、路面にグレーチングがハマっているコトに気づく。
鉄格子に目を凝らすと地下へ伸びる階段が見えるが、夜中、その階段をスーパーヒロイン達が往来スル。
「おかえりなさいませ、スーパーヒロイン様」
「今宵も遊ばせてもらうわね」
「楽しかったわ!thank you!ciao!」
階段の先にアル旧万世橋駅は、今では改装されて、スーパーヒロイン専門のメイドカフェになっている。
今も"セーラー水星"コスのヒロインが地表に出て、キョロキョロ周囲を見回し、駐車場へ家路を急ぐ。
「あぁ。またまたヤラかしちゃった…さぁ深呼吸ょ」
愛車に乗り込み、ハンドルに頭をつけて酔いを覚ます。顔を上げて、大きな目とつけまつげをバシャバシャさせて発車…
「その車、脇に止まりなさい!」
途端にスピーカーの声。駐車場を出たトコロで、アッサリとパトカーに捕まり、路肩に停車してガックリw
「降参ょおまわりさん。勘弁して」
「免許証を見せてください」
「わかってるわ。ワインを少し飲んだけどソレだけなの」
ライト片手の警官は、気さくな口調だがハッキリ告げるw
「スーパーヒロインは適量飲酒は可です。ただ、一方通行違反は見逃せない」
「マジ?そりゃマズいわね。標識はどこ?」
「降りてください」
ココはヒタスラ謝る方向に作戦変更する"セーラー水星"←
「悪かったわ。ウッカリしただけなの。逮捕だけは勘弁して。私、スーパーヒロインなの。本当に困っちゃう。おまわりさん、お名前は?」
酔った顔をライトで照らされるw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
史上最年少の首相官邸アドバイザー、超天才ルイナのラボはパーツ通り地下深くにあるSATO司令部に併設されている。
「テリィたん。名前は"組み合わせ暗黒物質マトリックス理論"でどーかしら?」
「平凡過ぎるな。"無限次元ダークマターセオリー"ナンてどーだろー。ついでに、大学で一緒に女子大生限定の講義しちゃったりして」
「素敵。私は地下ラボからのリモート参戦になるけど」
ルイナは、ゴスロリに車椅子がトレードマークだ。
加えて常時護衛がつくので、外出は容易ではない。
とゆーワケで、女子大生達への講義は僕が…
「じゃあ決まりね!ところで、今週末SATO司令部で害虫駆除があるの。"潜り酒場"に泊まりに行ってもOK?」
「え。お、おぉ良い実験になるカモ」
「ミユリ姉様とシェアハウスするコトになった時の?」
いや、ルイナ護衛部隊との合宿生活だ…
「ま、確かに上手く逝くか試せるね。朝昼晩の料理や掃除の分担とか…ま、僕が休暇の時だけの話だけど」
「やっぱり、テリィたんが私のラボに来たら?2人でラボに泊まって"ビッグバンセオリー"でも見ない?アマプラの配信終わっちゃったんでしょ?」
「見ないょwでも、まぁ確かに、次のステップへ進むためのシミュレーションは必要カモしれないな…え。何?」
車椅子からキスのおねだり顔だw
「ま、先ずはデータ集めからだょ!」
ダメなの?肩をスボめるルイナ←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。ラボの隣室、SATO司令部でレイカ司令官。
「ムーンライトセレナーダー、スクリーンを見て。セーラー戦士系のスーパーヒロインから、万世橋の警官にレイプされたと匿名の通報があったわ」
「スーパーヒロインがレイプされたの?しかも、匿名で?どんだけ弱いのw」
「YES。でも、IPアドレスからアッサリ"セーラー水星"のリナン・バニレと判明した」
スクリーンに"セーラー水星"のコスプレ画像。
水色のハデなコスプレな割に控えメ系の美少女。
ヲタクのストライクど真ん中女子だw
「ムーンライトセレナーダー、本件はスーパーヒロイン絡みなので万世橋とウチの合同捜査になったわ。先ず通報者の聴取から始めて。(万世橋の)ラギィ警部とも連携してね」
「了解、司令官。でも、未だ何の証拠もナイのに聴取始めちゃって良いの?」
「一応調べてょミユリ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ムーンライトセレナーダーは、僕の推しミユリさんがスーパーヒロインに変身した姿でメイド服にバニーのコスプレだ。
南秋葉原条約機構は、アキバに開いた"リアルの裂け目"からの脅威に備える、官邸直属の防衛組織でレイカが司令官。
「リナン・バニレ?ヲタッキーズです」
「わ。リアルのムーンライトセレナーダー?モノホン?でも、匿名通報のハズだけど」
「相手が警官となると話は別なの。SATOが捜査スル上でも色々と確証が必要なの」
リナンの住むマンションは神田花籠町にある。
ドアを薄く開けたリナンの顔は擦過傷だらけw
「ムーンライトセレナーダー。私がウソをついているとでも?」
「あの夜、何があったの?」
「メールに描いたわ。覆面パトカーの警官。30代後半。髪は翠。飲酒運転で止められ、家まで送ると言われた。玄関まで送られて…目が覚めたら裸で床に寝ていた」←
絶句するムーンライトセレナーダー。
「家の中に裸で寝かされてた?貴女、ホントにスーパーヒロイン?」
「面目ナイ。サイキック、弱いので…薬を飲まされたンだわ。酔いを醒ませと、水を飲まされたコトは覚えてる」
「記憶が飛んでるのになぜレイプされたと?」
さらに信じられないフレーズが飛び出すw
「私の体に乾いた精液がこびりついてた。しかも、カラダ中が擦過傷だらけ。大切なトコロも」
「病院には?"外神田ER"ならコネがアルわ。逝こう?」
「触らないで!病院には行かない。1時間シャワーを浴び続けたわ。全てを忘れて元の私に戻りたいの」
残念だけどソレは無理だw
「なぜSATOに通報したの?」
「犯人を捕まえて欲しい。万世橋に通報してもモミ消されるだけ。このマンションも犯人に知られてしまったわ」
「でも、ホンキで捜査して欲しいなら病院で検査を受けて。指紋とDNAも必要だし」
激しく首を横に振るリナン。
「絶対に嫌ょ。誰にも知られたくナイ」
「秘密は厳守スルから」
「もう貴女にバレてるし」
確かに。が、食い下がるムーンライトセレナーダー。
「もっともっと事情聴取が必要なの」
「話したわ」
「家の中も調べるコトが出来るのょ?」
リナンは動じない。
「何も見つからないわ。服もシーツも全部焼いたから」
「なんてコトを!DNAが消えてしまったじゃない!」
「あのね。私は秋葉原ごと焼き払いたいと思ってるの」←
無茶苦茶だw
「ねぇ証拠が必要なの」
「次を当たって」
「次?…どういう意味?」
リナンは、ムーンライトセレナーダーを見る。
「奴は連続レイプ魔ょ。また犠牲者が出るわ」
第2章 監察官がやってきた
早速、万世橋に捜査本部が立ち上がる。
「ヲタッキーズ、来てる?」
「はい、ラギィ警部!」
「桜田門から監察官が来るの。警察内部の犯罪、悪徳警官とかに詳しい、警察の中の警官」
ヲタッキーズは、ムーンライトセレナーダー率いるスーパーヒロイン集団だ。民間軍事会社で僕がCEO←
ムーンライトセレナーダーの他に、妖精担当で背中に羽根があるエアリとロケットガールのマリレがいる。
あ、エアリの羽根は平時は畳んでるけどw
「ラギィ警部、ニセ警官の可能性もありますょ。きっと酔ってたんでしょう」
「お気遣いthank you、エアリ。メディアが騒ぎ出す前に何とか片付けたいの、よろしくね。マリレは?」
「ニセ警官の線でコスプレショップを調べてる。正直な話、万世橋の方はどーなの?」
ラギィ警部は、グッと声を落とす。
「事件当時、覆面パトカーの出動は無し。犯人の特徴から全署員427人から52人まで絞ったわ」
「ソレ、見当違いだから!」
「え。誰、貴女?」
ココで目付き鋭く、全くスキのない色黒女子が登場。
「アイビ・カーグょ。みんなの嫌いな監察官」
「悪徳警官の味方ね」
「悪徳警官とレイプ犯は別物だわ」
早くもラギィ警部と鍔迫り合いが始まる。
「つまり?何なの?」
「極端な話、レイプ犯は貴女の可能性もある。経験上言えるのは、レイプ犯は大抵人生の落伍者。善良な警官を疑う前に警察学校の退学者とかを調べて?」
「警部。リナン・バニレの体内からフルニトラパゼパムが出ました!」
鑑識からの報告にラギィ警部はドヤ顔←
「何?そのドヤ顔は。自分で飲んだ可能性もアルでしょ?」
「レイプドラッグょ?自分で飲むバカがいる?」
「仮に飲まされたとしても、レイプの証拠は無いわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
御屋敷のバックヤードをスチームパンクに改装したら、ヤタラ居心地が良くなって(実は僕もw)みんな長居し困ってるw
「おかえりなさいませ、テリィ様。いつお戻りに?」
「プリカ・ヨプラが副所長に着任してくれて、休暇が長くとれるようになった。で、週末、ルイナがお泊まりしたいとか逝ってたな」
「あら。ウチは構いませんけど、護衛部隊のみなさんが…」
僕の推しミユリさんは、平時はココでメイド長をやってる。
「僕は、サンルームでも構わない…あれ?スピア。何やってんの?ベン図?」
スピアは、ストリート育ちのハッカー。ルイナの唯一の相棒だ。タブレットに丸い幾何学模様を描いて考え込んでいる。
「YES。ルイナがコレを利用して、今回のスーパーヒロインのレイプ事件の容疑者を絞り込むんだって」
「中世キリスト教のシンボルでもある"ベシカ・パイシス"にも似てるな。天国と地上が交差する場所だ」
「さすが博識ね」
モニターからルイナの声。ラボからオンライン飲みで参戦のようだ。ホント"潜り酒場"はアキバの人の交差点なのだ。
「ベン図はね。集合体の関係を図式化したモノなの。みんなが学校で習ったモノより、かなり複雑になってると思うわ。例えば、イルカは哺乳類に分類されるでしょ?そして、魚食動物にも属する。さらに、時間や場所でも分類出来るわ。1頭のイルカが群れで行動する時と海面に出た時では、属する集合が異なる。各データを異なる図形で表し、ソレを重ね合わせると共通項が見えてくるワケ」
「とりあえず、警察学校の退学者リストから容疑者を絞り込んでみたら?」
「私、被害者のリナン・バニレから話を聞いたけど、今回は連続犯の可能性がアル。計画的で冷静な犯行だった。スーパーヒロインの扱いに手馴れてたんだって」
ミユリさんの話に、何故かその場の全員が僕を見るw
「僕には宇宙にいたアリバイが…」
僕は、第3新東京電力初の宇宙発電所"TEPCO-3"の所長で、昨夜副所長のプリカと交代してアキバに戻ったばかりw
「レイプ事件は、そもそも被害者からの通報が少ない。ましてや、犯人が警官なら、なおさら怖気付くハズ」
「1つ良い方法があるわ。"症候群サーベイランス"ょ。発行される処方箋数の増加から、新たな感染症の流行を見つける考え方なの。この方法でレイプ魔を追跡出来るカモしれないわ」
「となると、ウチの救急受診の回数や被害相談の件数とかも役に立つかしら?」
外神田の老舗病院"外神田ER"のリンデ院長だ。
アキバのヲタクなら全員1度はお世話になってるw
"外神田ER"の診察券はアキバ生活の必需品←
「リンデ院長、ソレは貴重なデータになるわ。因みに、個体名は不要だから。データさえ集まれば、被害者を特定出来なくても、手がかりぐらいはつかめるカモ」
「ラギィからも捜査協力をかけてデータを出しやすくしてもらおう」
「じゃ私は、区の疾病予防管理センターにいるヲタ友に連絡してみる」
みんながバラバラだけど1つの方向性を持って動き出す。
「ラギィが気にしてる事件なのね?」
モニターの中のルイナが僕に鋭いツッコミw
「彼女、レイプが許せないンだ。スーパーヒロインに限らズにね」
「え。まさか…」
「いや、彼女じゃない。アキバに来る前に"新橋鮫"とか呼ばれてた頃、ルームメイトが被害に遭ったらしい」
ルイナは、モニターの中から僕を見つめる。
「今回の事件と似てるわね。で、正義漢の彼女がルームメイトを助けなかったとか?」
「事件の後、鬱に陥った友達を避けてしまったらしい」
「ふーん何か理由があるンじゃナイの?
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋に立ち上がった捜査本部。
「レイプ犯罪には、必ず前兆がアル。犯人が警官の場合なら、職権濫用や降格、家庭内暴力とかね」
「一般論は後にして。ヲタッキーズ、コスプレショップは当たってくれた?」
「ラギィ、秋葉原のコスプレショップは60軒以上アル。全国のレイヤーが集まるから追跡は難しいわ」
アイビ監察官とラギィ警部の主導権争いが加熱中w
「万世橋の覆面パトカーの警告灯の色は?」
「赤だけど何か?」
「被害者によると覆面パトカーの警告灯は青だったそうょ」
青は…神田消防署だw
「で、警察学校の退学者は?」
捜査本部のモニターに制服姿の顔写真が何枚か並ぶ。
「コレが全員落ちこぼれなの?」
「YES。しかも、全員が警官の制服を持ってる」
「…マルム・トエチね」
アイビ監察官が、右隅の顔画像を指差す。
「マルム・トエチは、元ボランティア消防士です…やや?上官への暴行で市ヶ谷を解雇されてますね。性格は激情型」
「軍人にも消防士にもなれズ、警官にもなれなかった…」
「OK。被害者のリナン・バニレに判別させましょう」
アイビの指揮にラギィが噛み付く。
「リナンは、未だ薬の影響が抜けてナイわ」
「ソレでも、犯人の顔ぐらいは覚えてるハズょ」
「彼女を追い詰めるようなマネはしないで。後の捜査に支障が出るわ」
しかし、アイビは1歩も引かない。
「私は、性犯罪事件を1000件以上扱って来た。貴女は?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
リナン・バニレは、自分のマンションで呆然と立ち竦む。
万世橋の鑑識が証拠を求め総力を挙げ右往左往している。
「リナン、気分はどう?」
「最高ょ。お願いだから指紋検出の粉末を残さないでね」
「無理。男は、いつだって散らかすだけょ。さ、座ってこの写真を見て頂戴」
有無を言わせズ、ブイブイと突き進むアイビ。
「私、未だ頭がボンヤリしてるのょ?」
「無理しなくて良いわ」
「いいえ。コレを見れば貴女は思い出すハズ」
アイビは、応接テーブルに6枚の顔写真を並べる。
「ホント、悪いけど自信ナイの」
「もっと自分を信じて」
「うーん…この人カモ」
何となく苦し紛れに1人の写真を指差す。
「カモじゃ困るの。しっかり見て」
「ソンなコトを言われても…」
「日を改めようか?」
リナンを気遣うラギィ。しかし、アイビは譲らないw
「もう1度良く見て」
「この人…だと思う」
「確かなの?」
畳み掛けるアイビ。
「間違いナイわ」
リナンは、ボールペンで顔写真に丸をつける。
「偉いわ。良く頑張ったわね。ありがとう。さ、写真の裏に貴女のサインと日付を描いて頂戴」
大人しく写真を裏返しサインしてペンを置くリナン。
「ねぇ。この写真の人が犯人になっちゃうの?」
「違うの?この人ナンでしょ?」
「音波銃を持ってた。ハッキリ見えたわ。送ってやった礼をしろと言われた。私、声を出そうとしたの。でも、言葉が出て来なかったの!」
みるみる錯乱して逝くリナンw
しかし、アイビの詰問は続く←
「犯人のカラダの特徴は?」
「意識が朦朧として…ヤメてと言おうとした。頭の中で何度も何度も。でも、声が…声が出なかったのょ!」
「アイビ!もうヤメて!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
マルム・トエチは、神田花岡町の古いマンション住まい。
「何で監察官が音波銃で踏み込むの?」
「私の勘でココまで来た。所轄に任せてらんないわ」
「突入はウチの仕事だから。アンタは裏口に回ってょ」
万世橋のSWATがドアの左右に張り付いてる。
拳銃を目線で構えたラギィが静かに指を折る。
3, 2…
「万世橋警察署!万世橋警察署!」
「マルム・トエチ!」
「げ。その音波銃をユックリと床に置いて!」
マルムは、リビングのカウチにグッタリとしている。
その膝の上には、ラッパ型の銃口が特徴的な音波銃。
「さぁ俺を撃てょ」
「撃つのは最後の手段。先ず音波銃を置くのょ!」
「断ったらどーする?」
裏口から入って来たアイビが拳銃を構えて現れる。
「ねぇマルム。良く考えるの。音波銃を、置・い・て」
「おぉ頼む!俺を撃ってくれ!」
「どーしたの。何があったの?ねぇ聞いて…」
呆気にとられる慈愛に溢れるアイビの言葉遣い…
次の瞬間ラギィが飛びかかり秒で音波銃を奪うw
「膝をつけ!」
マルムを床に転がし荒々しく手錠をかけるラギィ←
その間、ピタリと拳銃の狙いをつけているアイビw
「両手を背中に。アンタには弁護士を呼ぶ権利がアル…」
この2人は、意外と良いコンビなのカモしれない。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
捜査本部の取調室。マルム・トエチの取り調べ。
「俺は、毎晩死のうと思ってた」
「どうして?」
「親父は、陸自の3佐。自殺でもすれば、初めて俺を認めてくれると思った」
無茶苦茶な理屈だ。気狂いに刃物…じゃなくて、音波銃w
「土曜の夜のアリバイを教えて」
「知ってるだろ。アリバイって何だ?」
「いーから。何処にいたの?」
誰もが自供を期待スル。
「昭和通りのガールズバーで喧嘩してアキバP.D.の留置所にぶち込まれてたょ」
「え。そんな…」
「御社にはお世話になった。初めてじゃナイがな」
マジックミラーの向こう側は大騒ぎになるw
「ウチの留置所にいた?完全なアリバイじゃナイの!」
「土曜の夜の逮捕者のリストを!大至急!」
「全部リセットだわ!また被害者を追い詰めて、証言を捏造しなきゃね、監察官殿」
アイビは強気を崩さない。
「私は、リナン・バニレの証言に基づき捜査したまでょ」
捜査本部に、さらなる凶報が飛び込む。
「またもスーパーヒロインのレイプ事件です。今度は、無線パトカーが使われた模様!」
「盗難車でない限りモノホンの警官による犯行ね、警部殿」
「そのドヤ顔、ヤメて」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
2時間前。その無線パトカーは、秋葉原第3架道陸橋の下で短くサイレンを鳴らして、故障車の後ろにピタリとつける。
「ココょ!おまわりさん、コッチです!」
「ガス欠ですか?家までお送りしましょう」
「スマホも充電切れで…助かったわ、おまわりさん!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
今回の現場、秋葉原第3架道陸橋は、行政だけが"ふれあい通り"と呼びたがる通りをまたぐ山手線のガードのコトだ。
「被害者はジョジ・ビクサ。20才。blood type"BLUE"。またしても、被害者はスーパーヒロインです」
「エンジントラブルで困ってるトコロにタマタマ親切なパトカーが通りかかるパターン?」
「YES。故障車のエンジンには細工の跡があります」
その故障車の前後を、今は赤色灯を点けたパトカーが挟む。
「制服姿の警官が家まで送ると申し出たそうです」
「勤務中のパトカー?」
「YES。そして、自宅で襲われた。しかし、今回の被害者は薬入りの水は飲んでナイわ。今、ココに連れて来る」
アイビ監察官の仕切りにカチンと来るラギィ。
「ココへ?どうやって?」
「万世橋のパトカーをお借りした」
「何てコト?警官に襲われた被害者をパトカーに乗せたの?無神経にもホドがアルわ!」
食ってかかるラギィを受け流すアイビ。
「犯人逮捕のためょ仕方ナイわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
到着したパトカーから降りたジョジは顔面に擦過傷←
「ジョジ!万世橋警察署のラギィ警部ょ。捜査に協力してくれてありがとう…あ、私に任せて」
パトカーの警官が手を貸そうとスルのをヤンワリ遠ざける。
「病院へはもう行ったの?"外神田ER"なら院長センセを知ってるわ。後で色々特別に頼んでおくから…御家族には、もう連絡したの?」
「明日、上京して来ます」
「ソレは良かったわね」
ジョジの顔面のアチコチには絆創膏が貼られているw
「ねぇ少し詳しく話を聞かせて」
「ガソリンが切れて。親切な警官が助けてくれると思ったの。でも…あぁやっぱりダメだわ!」
突然、ジョジは泣き崩れる。
ラギィが必死に抱き止める。
「ごめんね。辛いょね。しばらく…泣いていいょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。ルイナのラボ。
「…でね?人って、時に全てを投げ出してでも追うべきモノに出会うって思うワケ。私は、直に知の冒険の旅に出るの。そのパートナーにふさわしい才能を持つのは、この世でたった1人。貴女ょ」
「ねぇプリカ。貴女、何の話をしてるの?」
「"ダークマター粒子"研究のパートナーを探しているの」
超天才をビデオ回線で口説くのは…何とウチの副所長だw
所長の僕の休暇中、宇宙発電所を預かるプリカ・ヨプラ。
衛星軌道からルイナを口説くw
「冗談ょね?」
「極めて真剣。無数の素粒子の崩壊チャネルを調べ、宇宙の謎を解き明かす。コレは、科学者として千歳一遇のチャンスだと思う」
「そりゃ光栄だわ。でも…テリィたんは知ってるの?」
宇宙で目に見える物質は5%に過ぎない。その5〜6倍は未知の物質、即ちダークマターが占めていると考えられている。
「ルイナ!オンラインか?」
このタイミングでルイナに声をかけた僕はトンだバカ野郎←
「ルイナ。今宵、ダッジオーブンディナーをやるけど、食べる?"Uper eats"に宅配させるけど」
「テリィたん…ラギィからスーパーヒロイン専門のレイプ犯の容疑者リスト、ASAPで欲しいって言われててw」
「あ、そう…あれ?何?」
何か気配を察した僕のツッコミに慌てるルイナ。
衛星軌道のプリカに目配せをして回線を切るw
「テリィたん、犯人を炙り出すベン図が未完成なの。既存のデータだけじゃ共通点が少な過ぎるから困っちゃって。ソレから私、赤肉は食べないから」
「へぇ。でも、御屋敷に黒板とか持ち込んで方程式を立てたりスルのは勘弁だぜ。ソレと今宵は…じゃーん!"常磐もの"のババガレイだ!」
「素敵!肉食獣以外のために、素晴らしい海の恵みね!」
御機嫌でダッジオーブンを取り出し、ババガレイの煮付けを作り出す僕。モニター画面の中からルイナがチラ見してる。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
翌日の捜査本部。
「警部!ジョジ・ビクサから精液は検出されませんでした。ソレと…2人の被害者、ジョジ・ビクサとリナン・バニレは共に身に覚えのナイ淋病に感染していました!」
「え。犯人から淋病をもらったワケ?」
「恐らくYES。一方で、犯人自身は自分が淋病とは気づいていない可能性があります」
ソコへ、ルイナが会議アプリで割り込んで来る。
「とりあえず、万世橋警察署の全署員の中から、12人まで絞ってみたけど…実は余り自信は無いの」
「あらまぁ。超天才でもダメなの?」
「データが不完全なのょ。だから、慎重に進めてね」
12人の署員のデータが送られて来る。
「ジョジは…面通しに使えるかしら」
「上京して来た御両親を説得出来れば、協力してくれるカモしれませんが」
「頼んでみようかな。とりあえず、ウチの署の12人の捜索令状を取るわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
さっそく捜査本部の取調室で12人の取り調べが始まる。
「地下アイドル通りで17分間、無線が途切れた理由は?」
「飯ですょ警部」
「どこで食べたの?」
「マチガイダイナーです。2丁目の」
「レシートは?」
「ありません」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「10時13分に交通違反の取り締まり。その後、勤務終了までは何を?」
「パトロールです、警部」
「何かあった?」
「何も」
「ソレがあったのょw」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ふざけるな!監察官は署から出て行け!空気が悪くなる!」
「アンタは、レイプ現場の近くにいて、犯人の特徴にも当てはまる。オマケにアリバイもナイのょ?」
「違反キップを切られた女の腹いせに決まってる!それか、自分で浮気しといてソレを隠すのに俺を使ったんだ!」
「無線が切れたのはナゼ?あのね。私はレイプ犯を捕まえたいだけなのょ」
「わかった、監察官。居眠りしてた。認める。首都高上野線の高架の下で。好きにしろ、監察官は人間のクソだ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
取調室隣の捜査本部では。
「警部。血液検査の結果が出ました」
「12人の内、淋病の陽性反応が…1人?」
「待ちなさいょアイビ。性病だからってレイプ犯とは限らないわ」
しかし、監察官は勝ち誇った顔で尋ねる。
「で、誰なの?」
捜査本部のスクリーンに"アルド・オンス"の画像が出る。
「面通しね」
「ジョジは無理。リナンなら来てくれるカモ」
「リナンはダメょ。信用出来ないわ」
言下に否定するジョジ。ムッとするラギィ。
「ジョジを連れて来て」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
取調室が、そのママ面通しの控室にw
「みんな。面通しの手順はわかってるわね」
「警部、勘弁してください。俺は何もしてないょ」
「私は、性病にかかってません!」
12人の警官は一斉にブー垂れる。
「おい!仲間をレイプ犯扱いかょ!」
「監察官、全部アンタのせいだ」
「やってナイなら心配スル必要無いハズょ。胸を張っていってらっしゃい」
1番マジメそうな若い警官がボヤく。
「いつも警察は、こうやって冤罪をでっち上げルンだ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
怒れる12人が、ブツブツ逝いながらも面通し室の壁際に並ぶ頃、両親に連れられたジョジが姿を現す。
「感謝します。手短に済ませますので」
「娘にとり苦痛であるコトに変わりは無い。今回限りだ」
「…御両親はココでお待ちを」
父親もまた怒りに身が震えている。
「わかった。私が会ったらソイツを殺してしまうからな」
両親を廊下に残しジョジが面通し室の隣の部屋に入る。
「こんにちわ。私は内務監察官のアイビ。コレはマジックミラーだから、貴女は向こうからは見えない。この12人の中に、もし犯人がいたら指差して。3分で終わるわ」
うなずくジョジ。カラダ中の全ての意識を目に集中w
「あせらず、落ち着いて良く見て。何も怖がる必要は無いから。向こうから、貴女は見えてナイから」
制服姿の警官が12人、ズラリと並んでいる。しかし…
「…いないわ。警察は犯人を捕まえたんじゃなかったの?」
「確かなの?」
「私の言ったコト、聞こえたでしょ!…何か違うわ」
次第に興奮して来て、取り乱すジョジ。
「何が違うの?」
「制服ょ」
「制服?制服が違うの?」
突然、ジョジはワッと泣き出して大声を出す!
「胸にはレッサーパンダのワッペンがあったの!アイツの胸に…」
「レイプ犯の胸に?」
「ママを呼んで!お願い!ママ!」
ジョジは廊下に飛び出して、母親に抱きつく!
「待って、ジョジ!大事なコトなの!ワッペンって何?」
「レッサーパンダょ!レッサーパンダのワッペンだった!」
「ねぇジョジ、待って!」
頭から湯気を噴き出してる父親が立ち塞がる。
「私の娘に近づくな!ソレ以上近づけば、お前を殺す!」
追い縋るアイビを指差し威嚇スル父親。
母親はかばうようにしてジョジを抱く。
「待ってください!レッサーパンダって…」
しかし、ジョジと両親は、エレベーターに消える。
第3章 レッサーパンダを追え
「"交通警察軍団"?地底新幹線の末広町ステーションや、神田リバー水上空港の警察業務を一手に受託してる民間警備会社の大手?」
「YES。制服も警察に似せてるので万世橋を装って全署員600人の中に紛れ込んだワケね」
「またしても、私の勘が当たったわ!」
おや?確か監察官は別のコトを言ってたハズだが…
「ジョジを呼び戻して!」
「父親がかなーり怒ってた。全てなかったコトにスルとも。あの家族の結束は固くて崩せません」
「所轄が無理なら、私が行くわ」
アイビ監察官自らが名乗り出る。
「わ、わかったわ。じゃウチはレイプ被害者のネットワーク系NGOをあたってみる。お互い仕切り直しょ」
「待って!リナンとジョジは珍しい淋病に感染してた。キノロン耐性淋菌で、従来の薬が効かない。この新種淋菌に効く抗生物質は1つだけ。しかも、秋葉原における処方件数は極めて少ない」
「ルイナ!ソレで?」
ラボから会議アプリで捜査会議に割り込むルイナ。
「淋病は、報告義務のある性感染症ょ。感染者間の"性的ネットワーク"を調べれば、被害者の感染源にたどり着ける。家系図や人間の神経ネットワークと同じ。神経回路って情報を伝達するでしょ?手を振ると言う行為は、脳からの指令に基づく行為ナンだけど、ソレを淋病患者に置き換えると理解出来るわ」
「(え。全然理解出来ないわw)なるほど!ソレで?」
「たいていは、すぐ治る。治療が長引いている患者は薬剤耐性が疑われる…」
あw完全にわかんなくなった、という顔のラギィ←
「とにかく"交通警察軍団"との接点をたどって!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"交通警察軍団"の本社は、末広町ステーションにアル。
「"交通警察軍団"の内、犯人のプロファイルと一致スル5人を調べさせてもらうわ」
「捜査には協力スル。ただし、聴取は10分で終わらせて欲しい。血液検査が必要な場合は、令状の提示を願う」
「そうスルわ。あのね。ウチも疑われたの」
"軍団長"のルメロCEOが吠えるw
「でも、無実だった。私の部下だって無実だ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
一方、ラギィは"外神田レイプ被害者ネットワーク「たけのこ」"を訪問スル。パーツ通りの雑居ビル3Fのオフィス。
「そうねぇ1年前から"警官にレイプされた"という匿名の相談がチラホラ増えてたわ」
「どれくらい?」
「交通機関での被害に限ると…多い時で月に 2〜3 件ほどかしら…お砂糖は?」
紙コップのコーヒーを薦めるNGO代表のタケコ。
「通報は?」
「何度もしたけどガン無視ね。御社にも証拠不十分だと一蹴された。今じゃ誰も相手にしてくれないわ」
「それぞれの正確な日時を教えて」
タケコ代表は、ラギィの両手にズッシリとファイルを渡すw
「ココに全部描いてアル。箱ごと調書を持ってって。令状とかは不要。やっと誰かに聞いてもらえるわ」
「…土曜のレイプが昨年7件。先週2件?」
「きっと犯人は"週末はレイプ魔に豹変"ってタイプね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
結局、ルイナの外出は護衛部隊の都合がつかズ不可となり"害虫駆除"中、彼女は化学防護服に身を固めるコトになるw
「スピア、聞こえる?患者07649Fの再診日は?」
「9月9日に2度目のシプロを投与」
「薬剤耐性菌の保持者だわ。職業は何?」
対する相棒のスピアは御屋敷に御帰宅中で、アプリでルイナとはオンライン。みんなが集めたデータを効率的に解析中w
「彼女の職業は…セックスワーカー」
居合わせた常連の約半数が飲み物を噴く。
残る半数は思わズPCの顔画像をチラ見←
「ねぇテリィたん。後はラボでやろうか?」
「別に構わないさ。ちょうどウルサいメイド長も出掛けてるし」←
「ミユリ姉様なら、騒がしい方がお好きカモ…スピア、次の再診患者は?」
アプリからルイナの問いかけ。
僕の傍らでスピアが読み上げ。
「07992F。10月1日3度シプロを投与」
「その人、セックスワーカー?」
「違います!ねぇテリィたん。さっきプリカからダークマターの研究に誘われたの」
初耳だったが瞬時に"良さそう"と判断w
「ホントかょ!スゴいな…あれ?ウレしくナイの?」
「もちろんウレしいわ。知のニューフロンティアだモノ。でも、秋葉原の仕事を減らすコトになるし…みんなとの時間も取れなくナルわ」
「なら君の代わりに美人の院生とか紹介してょ…」
い、いや!僕としては"軽い冗談"のツモリだったが…
「ヒ、ヒドい…あんまりだわ!」
「テリィたんって残酷!女の気持ちを弄んでるw」
「ま、ま、待て!プリカは、僕が所長をしてる"TEPCO-3"の副所長で、大事なビジネスパートナーなんだけど、彼女のダークマター理論の構築に相応しい相棒は、神田明神に誓って、僕じゃなくて君だ。ルイナの知性が輝く、またとないチャンスじゃないか。僕は、全く構わないさ」
モニター画面の中で疑り深く僕を見るルイナ。
「本心…なの?」
「そりゃ確かに少し複雑だけど、君を応援したい」
「thank you。テリィたん」
モニター画面にルージュのキスマークw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃、ミユリさんは万世橋の捜査本部にラギィを訪ねる。
「来てくれてありがとう、ミユリ」
「ううん。コチラこそ呼んでくれて、ありがとう。で、どーしたの?」
「ちょっと、別室で話せる?」
振り返りもせズ先を歩き、空き会議室に入るラギィ。
「常軌を逸しかけた時は、とりあえず、誰かに話すべきだと思ってる。で、貴女が浮かんだワケ」
「コーヒー、淹れてあげるわ」
「どうしても耐えられないの。被害者の怯えた目。何も悪くないのに口をつぐむ女。しかも、今回の犯人は警官ょ。本来ヲタクを守る立場の警官が…」
ミユリさんはラギィの傍らに立ち、そっと肩に手を置く。
「話して。全部話すの。さもないと、立ち直れなくなるわ」
「…私は、ずっと考えている。今回の犯人を射殺スル正当な理由を。あぁ!」
「暴力的な想像は、行動に移さないよう、心が自衛措置を講じてるの。だから、大丈夫ょラギィ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
御屋敷とラボに分かれたコラボは、いよいよ大詰めだ。
「アルゴリズムの解析結果が出たわ。薬剤耐性のある患者が2人いる。07513Fと07787M」
「名前、何とかならないかしら」
「保険局のハッキングが超簡単だった。バジア・マラドとオミナ・チガワ」
すると、オンライン中の捜査本部から即座に反応がアル。
「バジア・マラドは"交通警察軍団"です。ただし、事件当日は非番で、パツキン姐さんのプロファイルとも一致しません」
「あらあら。もう1人は?」
「オミナ・チガワは…コールガールですね。プロフィール画像がハデな割に個人情報は乏しい。もともと中身がナイのカモしれませんが」
アイビ監察官は即決。
「聴取はマラドから」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の取調室。制服姿で出頭して来たバジア・マラドを、アイビとラギィのツートップが迎える。ビビるマラドw
「昨年、神田リバー水上空港では7件のレイプ被害届があった。犯人は勤務中の警官」
「聞いたょ。イカれたフェミニストがしつこく電話してきたそうだな」
「アンタの勤務と重なルンだけど。因みに、残りのレイプの最初の5件でも、アンタ、事件当時は現場近くにいたわょね?どう説明するつもり?」
バジア・マラドは動じない。単に鈍いだけカモしれないがw
「偶然だ」←
「ねぇ奥さんの病状は?」
「…何の話だ?」
アイビが嘲るように笑う。
「レイプの被害者は、全員淋病に感染した。恐らくアンタの奥さんも淋病ょ。レスでなければ」
「レスじゃねぇ!」
「先ずアンタが感染し、続いてレイプ被害者や気の毒な奥さんが感染したのね?」
バジア・マラドの顔が真っ赤になるw
「俺じゃねぇ!」
「じゃ奥さんが遊んでるの?」
「や、やっぱりそーなのか?最近ヤタラ化粧が濃く…」
アイビがダメ押しで嘲り笑い。
「ウソぴょん。亭主心配スルほど女房モテず」
「…な、何を!ソレ以上妻を侮辱したらブン殴る!」
「奥さんは、アンタのせいで、一生淋病に苦しむのよ?どこで感染したの?売春婦?アンタ、この彼女を買ったでしょ?」
オミナ・チガワの画像を机に叩きつける!
淫らポーズのアー写。源氏名は"蜜壺"。
「だからどーした?彼女はコールガールだ。コレはレイプじゃないぞ」
「相棒は?」
「え。」
バジア・マラドは絶句。一気に畳み掛けるアイビ!
「あのね!アンタじゃないのは最初からわかってる。だって犯人は、イケメンだモノ。さ、洗いざらい喋っちゃいなさい。心当たりアルんでしょ?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
マジックミラーの向こう側では捜査官がテンヤワンヤだw
「バジア・マラドの相棒を洗え!」
「アディ・アバス。33才。おや?中近東系ですねw」
「ちょっと、アンタ達!コンコン!」
顔を上げるとアイビがマジックミラー越しに睨んでいるw
「わ!監察官、何か御用で?」
「相棒をチェンジしてないかしら?洗うのは、最初の事件当時の相棒ょ。言うまでも無いコトだけど」
「鋭いなw」
マジックミラーのコチラ側で捜査官達は密かに舌を巻くw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「コイツがアンタの買春仲間?確かにイケメンだわ」
なるほど、ジャニーズのオチャラケ担当とか務まりそうw
「今までの被害者の証言と性癖だけで、コイツは間違いなく立件される。そーしたら、アンタはレイプの幇助か教唆を問われる。どちらでも好きな方を選べるわ」
「蔵前橋(の重刑務所)に放り込まれたくなかったら、いつ歌うの?今でしょ」
「…俺は止めようとしたんだ」
苦しそうに言葉を漏らすバジア・マラド。食いつくラギィ。
「誰?誰を止めようとしたの?」
「コイツね?コイツでしょ?」
アイビがオチャラケ担当の写真をつきつける
「リアリだ。売春婦に乱暴するようになり、その内に一般の女性にも手を上げるようになった。それで、相棒を変えてもらったんだが、まさか、スーパーヒロインまで手にかけるとは…」
「レイプに一般人もスーパーヒロインも関係ナイ。アンタが黙ってたせいで何人もの被害者が出た」
「だから…俺は必死に説得したんだ!」
マラドの叫びも聞かズ、取調室を飛び出すラギィ&アイビ!
第4章 レイプ犯の素顔
「ブレイ・リアリ!万世橋警察署!」
「クリア!誰もいません!」
「コッチもいないわ。くそ!」
得意の?ピッキングでリアリの部屋に踏み込んだラギィが舌打ち。拳銃を構えて裏口から入ったアイビと顔を見合わすw
「いないわ。車もない」
「そもそも、帰宅した形跡がないわ」
「次の獲物を探しに、狩りに出てるのね」
ワードローブの扉の背には手錠をした女性のヌード写真w
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
末広町ステーションの"交通警察軍団"司令部。
「ブレイ・リアリは善良な警官?先月、降格されてるょね?その手はナイょ」
「いや、コレは降格では…」
「何かしでかしたんだょね?虐待?セクハラ?なぁレイプ犯をかばうと来季は警察業務を受託出来ないぜ?」
僕の言葉に"交通警察軍団"のルメロCEOは顔面蒼白w
いや、別に問い詰めてるツモリは毛頭ナイのだけれど←
「あ、テリィたん。リアリの降格理由がわかったわ。勤務後に無断でパトカーを持ち出したみたい…あら?もしかして、今も勤務外でパトカーを乗り回してる?」
会社の勤怠システムをハッキングしてるスピアからだ。
「そのパトカーの現在地は?GPSは積んでる?」
「積んで無いわ。ナンバーはワカルけど…黒の電気SUV」
「OK。"シドレ"に見つけさせるわ」
会話にSATOのレイカ司令官が割り込むw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"シドレ"はアキバ上空3万6000kmの軌道に浮かぶ量子コンピューター衛星。この"シドレ"が"リアルの裂け目"の発生を探知スルと、直ちにSATO全ステーションに急報。
「コチラ、量子コンピューター衛星"シドレ"です。ターゲット発見。ブルーのレッドの3」
「万世橋全車!相手は空港警察の覆面パトカー。電動SUVのため無音走行につき注意せょ!」
「和泉橋を渡った!ウチの管轄域に入るぞ!首都高に上げるな!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「…では、送って行きましょう」
「助かるわ、おまわりさん。ね、お願い。私を逮捕しないでね」
「わかりました、見逃しますょ。その代わり、少し水を飲んで酔いを醒ましてください」
助手席に座った私服のスーパーヒロインは、差し出されたペットボトルの水を飲み、お願いモードの笑顔で話しかける。
「ありがとう。でも、車をどーしよーかしら。私、明日は朝が早いの。ねぇ…」
フト気づくと万世橋のパトカーに前後を挟まれるw
「くそ!」
次の瞬間、リアリはフルスロットルでバック!ハデな音を立ててパトカーのボンネットにメリ込む。さらに前進して前のパトカーに激しく追突!素早くハンドルを切って逃走開始w
「何なの?キャー!降ろし…て…」
助手席で悲鳴を上げるスーパーヒロイン。だが、デートレイプドラッグが効いて意識が飛ぶ。
急発進したSUVを、何台ものパトカーが追うが、激しいコーナリングに事故車が続出スルw
「佐久間町27、正面から抑え込む!」
昭和通りを逆走するパトカーがSUVとチキンラン!衝突寸前ハンドルを切ったのはパトカー!
ケツを振り横転する"佐久間町27"を間一髪ですり抜けたSUVは左折!現場は大混乱に陥るw
「奴は…消えた?何処だ?」
「"シドレ"がターゲットをロスト!」
「地下ょ!ヨドパシAkibaの地下駐車場だわ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ヨドパシAkibaの地下駐車場は、B2〜B6Fの地下5層にわたり、全520台が駐車可能な巨大地下空間。まるで地下迷宮w
「止まれ!」
暗闇を疾駆スル黒いSUVの前に、ムーンライトセレナーダーが立ち塞がる!必殺のポーズから"雷キネシス"一閃!
「ちくしょう!」
前輪を吹き飛ばされたSUVは火花を散らし、横転しつつ壁に激突して停車。命からがら運転席から飛び出すリアリ←
「諦めて!」
「嫌なこった!」
「もうアンタはお終いょ!」
音波銃を乱射しつつ地下階段に駆け込み、さらに逃走を続け追手に向け発砲スル!
ムーンライトセレナーダーと共に"飛んで来た"ラギィ警部にパトカー隊が合流!
「助手席のスーパーヒロインは?」
「完全に意識がトンでます。間もなく神田消防の救急が来るから、警部は奴を追って!」
「わかった。逝くわょ!」
次々と拳銃を抜いて、ヨドパシAkibaの"地下迷宮"へと飛び込んで逝く警官隊。
まさしく地下駐車場は迷宮。拳銃を構え薄暗がりの中を彷徨う内に何と目の前に…
「ブレイ・リアリ!音波銃を捨てなさい!」
「何?捨てなきゃどうする?」
「撃つわ」
振り向いたリアリの額にピタリと照準するラギィ。
正面にはムーンライトセレナーダーが立ち塞がる。
音波銃を投げるリアリw
「ギブアップ!おいおい、たかがセックスじゃないか。大騒ぎするなょ」
「そうね。蔵前橋(の重刑務所)で大男に抱かれて可愛がってもらっても、そう言ってれば?」
「セックスを軽く見ないで」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の"潜り酒場"。
「ルイナ。素晴らしい選択だわ」
「え。ミユリ姉様、何が?」
「貴女は、宇宙創世の謎に迫る"ダークマタープロジェクト"には適任ょ」
メイド服のミユリさんが会議アプリでルイナに話す。
「姉様にそう言ってもらえると…」
「ねぇウチも省エネ強化型の冷蔵庫にしないと…」
「ウチ?ねぇスピア。貴女の"ウチ"はルイナのラボ」
目の前を横切るのはパジャマ姿のスピアだw
「わかってる。単なる言葉のアヤょ姉様。私とテリィたんが
入れ替わるパターン実験中なのょ?早くもテリィたんをルイナに取られルンじゃナイかと心配?」
「え。テリィ様が?うーん心配はし・て・な・い・わ」←
「ミユリ姉様、心配ご無用。未だデータ収集の段階ょ。今回のパターン実験の感情的価値は不透明で予測不能。だから、(未だビビらなくてもw)大丈夫」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻のラボ。ミユリさんとのリモート回線を切ったルイナは、車椅子で僕が寝ている寝室?にシズシズと入って来る。
「テリィたん。パーコレーターで淹れたコーヒーが入ったわ。起・き・て」
「え…あ…ルイナ。何で僕は…今回はSATOの"死海ダイバー"から衛星軌道へ打ち上げてもらう予定ナンだ…」
「うん。知ってる。じゃゆっくり眠れるね。コレからもズッとココで眠っても私の方はOKなのょキャッ!」←
僕のベッドサイドテーブルに転がる薬瓶。
ラベルに…"フルニトラゼパム"とアル笑
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
最後に…ラギィ警部がレイプ犠牲者リナンを訪ねる。
「犯人は民間警察だった。逮捕したわ。貴女に公判での証言を考えてもらえないかと思って」
「もう忘れたいの」
「私の大学の友人もレイプされた。忘れたフリを続けたけどカラダは覚えてた。1人でフラッシュバックに苦しみ、ドラッグに走ったわ」
思わズ身を乗り出すリナン。
「ソレで?その友達はどーなったの?廃人?」
「私じゃナイ誰かの助けで立ち直った。でも、何年もかかったわ。ねぇもし悩んでいるなら、この人達に連絡してみて。貴女の痛みをわかってくれるハズ」
「…私がスーパーヒロインでもOKなの?」
メアドのメモをテーブルに置きながらうなずくラギィ。
「モチロンょ。だって、貴女は悪くない」
「よくレイプは心の殺人だって言うょね。でも、ソレって一般人のコトだと思ってた。だけど、スーパーヒロインでアル私も心を殺されてしまったわ」
「いいえ、殺されてない。ただ、傷ついた。誰より深くね。その傷は、スーパーヒロインにだって簡単には癒せない。ねぇ。実は、公判で証言スルか否かナンてどーでもOK。長い目で、貴女は自分自身を癒すコトだけを考えて。男も女も関係ない。人は悲しければ、泣けば良いの。パンピーもスーパーヒロインも関係ない。助けを求める勇気を持って」
リナン・バニレは、手にしたメモを見つめる。
おしまい
今回は、海外ドラマによく登場する"レイプ"をテーマに、スーパーヒロインレイプの被害者、犯人を追う内務監察官、買春警官とその相棒達、民間警察CEO、老舗病院長、主人公の部下の副所長、レイプ魔を追う超天才や相棒のハッカー、ヲタッキーズに敏腕警部などが登場しました。
さらに、レイプされた者が負う心の傷、その傷を追う人生の重みなどもサイドストーリー的に描いてみました。
海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、with 新型コロナでインバウンドを見かけるようになった秋葉原に当てはめて展開してみました。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。




