一話『効率厨!』
久我 優香。
私は平凡な女の子だった
幼い頃からやりたいことも無く、今まで過ごし、高校二年生まで来てしまった
……………………。
だが、そんな私にも去年、彼氏が出来た
道明寺 賢人
黒髪で高身長で、知的な、メガネをかけたかっこいい人
同じクラスで仲良くなった
普段は笑うことは無いけど、冗談なんかもたまに言って、一緒に居て楽しい
「カフェ、楽しみだね」
そして、二人で歩く、新しく出来たスイーツ店までの長い歩道
二人で行きたい。と、私から誘った今日
……だが、彼にはかなり変わった所があった
「ああ。そうだな……ん……?ちょっと待て、優香……」
「え、どうしたの」
「この道……」
そう……私の彼氏は所謂……
「……あと2分はショートカットできるぞ……優香!こっちが最短ルートだ!ついてこい!」
「え、えぇ……!?」
"効率厨" なのである……
「……………………」
聞いたことがない人に向けて、簡単に説明しようと思う
『効率厨』:効率厨とは、最短時間でミッション・クエストなどをクリアすることしか考えてないプレイヤーのことである。
……………………。
まぁ……まんま、グー〇ル先生の知識をコピペしただけである
主にオンラインゲームなどで使われることが多い、この言葉
しかし、現在ではオンラインゲーム上だけではなく、現実でも多く使われるようになったと感じる
そんな "効率厨"
普通に、こっちの道が早く着くからこっちに行こう。とか、ここの問題はこっちの解き方の方が早く解けるよ。とか、そんなことなら私も全然いいのだ
しかし、彼は違う……
……他の効率厨とは、次元が違うのだ
効率を上げるためなら、手段は厭わない……強いて言えば、"日常の中のサバイバー" だ
「優香ッ!こっちだ!急げ!」
「は、待って……」
その後は、ギリギリ不法侵入にならないコースを攻めて、ショートカットをしまくった
パルクールのように壁を走り、策を乗り越え、植物の間を縫うように駆け抜けていった
まるで、野生動物か、忍者だ
一般的な、高校生二人がやることではない
「はぁ……着いた……」
「休んでる暇はないぞ!優香ッ!もうすぐ車から出てくる他の客が並び始める!そうすると、もっと待ち時間が長くなる!その前に並ぶぞ!」
「は、はぃぃ……」
✶
「汗だくでカフェ入るとは思わなかった……」
「これも効率の為だ。致し方ない」
「ねぇ……そこまで効率を求めなくてもいいんじゃない……?」
「優香…………今なんて……」
「え、なに」
「効率は、人々の自由を求める方程式だ!効率を求めるということは、人々の自由を求めるということに等しい!」
「え。それって、私達二人の自由も求めてくれているってこと??」
賢人を揶揄うように、言葉の真意を確認した
きっと、即否定されるんだろうなぁ……
だが。
「当たり前だろう!」
「え…………」
予想外の反応が帰ってきた
「ぁ……いや、その……これはなんというか……」
「………………………………」
「………………………………」
「は、早く食べて帰るぞ……効率優先だ……」
「そ、そうだね……」
あ、焦ったぁ……
まさか、即肯定してくるなんて……
そういえば、賢人って意外に、恥ずかしがったりしないでストレートにものを言う性格だった……
「……………………」
と、というか、そんなにストレートに言うなら、言った後に自分で照れないでよ!!
なんか、もっと恥ずかしくなってきた……
「………………………………」
「………………………………」
私達はそのまま、一言も発することが出来ずに、お互いの帰路についた