第一章「フェルタミ国」〈ルラの術、そして大図書館への移動〉
昨日は体調不良のため、お休みさせていただきました。本日は前回に続き三話目となります。ぜひ最後まで読んでください。
「ルラ、お前まさか音術を“サイト”したのか」
“サイト”とは、術の能力を最大限にし自身の術力の5倍で放つことである。ハクはルラが音術をサイトしたと思ったのだ。
「ルラ、風術を使って」
その時だった、ルラの耳元で誰かが囁いたのだ。
――風術って何
ルラは元々術使いではないため、知るはずはない。
「風術、鮫って叫んで」
考え事をしているルラの耳元でまた囁かれる。
「分かった。風術、鮫!」
ルラはそう叫んだが、ルラの元に風が集まるだけで何も起こりそうにはなかった。
「ルラ、風術使いではないお前に風術を使えるはずがない」
ハクがそう言ったその時だった、とんでもない量の風が集まり鮫の形となる。
「風圧変化、鮫、百花繚乱」
風によって作られた鮫がそう言うと、鮫は魔物の元へ向かう。
「この術力、俺以上だな。一旦引くか。音術 肆、交換移動」
魔物は口笛を吹くと、どこかへ消えただの人間へと変わった。ただの人間には、術は効かないため心配はなかった。
「おい、ルラ。なんでお前に風術が使えたんだ。ルラには術力は感じられなかったはず」
そんなことを言ってると、ハクは誰かに肩を叩かれた。
「誰だよ、今肩を叩いたやつ」
「んちゃ、私だにょ」
ハクが叩かれたことを指摘すると、ピンク色の小さな魔物がルラの背後に現れた。
「こいつ、ルラの“守護術師”か」
“守護術師”とは、術師のサポートをする仲間の魔物である。ハクは、カグヤという守護術師を連れている。
「そうだにょ。私はルラの妹、シュカの“転生”した姿だにょ」
“転生”とは魔物によって殺された人間が魔物になることである。ただの人間は術を食らわないため殺されないはずだが例外が2つある。それは、魔物に触られた人間と、人間が所有するものでの殺害だ。
「てことはお前は、魔物によって殺されたのか」
「んーそういうことになるにょ。けど、転生したこと以外何も知らないにょ」
転生者には決まりがある。1つ目は転生前の記憶は家族の情報以外すべて消えること。2つ目は、自分が守護をしている術師が死んだ場合、自分も死ぬことである。
「本当にシュカなの?だって、失踪したはずじゃ」
ルラは涙目になりつつも問いかける。
「ユナ・シュカ。3月13日生まれ。転生前の身長は142cm。」
シュカは転生前の自分の情報を少しだけ話した。
「シュカだ。本当にシュカなんだね」
ルラはシュカだと信じ、守護術師を連れていくことにした。
ハクは、ルラの術の話に戻る。
「ルラ、なぜお前に術が使えたかなのだが」
ハクはルラにそう言うと、代わりにシュカが話し始めた。
「ハク。さっきルラに術力が感じられないって言ってたけど、それはただ単にルラの術力がハクにとって未知の力だったからだにょ。さっきの魔物だって、音術使いの術師じゃなければ術力を感じ取るどころか、屋上に来たことすら分からなかったと思うにょ」
シュカの言う通り、術師は全ての術を把握している訳ではなく知らない術も存在する。つまり、ハクは音術を使っているためルラの風術を感じることが出来なかったのだ。
「そういうことか。てことは、今回はたまたま音術使いの敵が現れたということか。でも、もし音術と風術以外の術師だったらどうすればいいんだ。てか、それと語尾がにょなの直してくれ」
ハクはシュカに問いかける。
「分かったよ。確かに感じ取ることは出来ないよ。それが未知の術力であればね。でも、術の名前を知っているだけでも術力と術力量を感じることが出来るよ。だから、これからフェルタミ大図書館に行こうと思うの」
シュカはハクの問いに答えた。
「名前を知っているだけでもか。そこの図書館へ行けば、名前が分かるというのか。」
「そうだね、フィリオアに関して色々分かるかも」
ハクとシュカはすっかり仲の良くなったように色々話をしていると、
「ねえ、ここのASKALEVNって書いた帯が落ちてるよ」
と、ルラは言った。
「アスカレイブンって、フィリオアの守護術師なはずだぞ」
カグヤがルラにそう言った。
「フィリオアって、昔魔物を全封印した神のこと」
ルラはカグヤに問う。
「そうだ。その神を守護していたのがアスカレイブンなんだ。だが、やつは敵みたいだったからな」
カグヤは、仲間であるはずのアスカレイブンが何故自分たちと対立したのか疑問に思った。
「それを含めてさ、シュカの言ってた図書館に行けば分かるだろ」
「そうだな、ハクの言う通りだ」
カグヤはハクに賛同し、図書館で疑問を解くことにした。
「じゃあ、図書館向かおう!」
ルラのこの一言によって始まる大図書館への移動。しかし、ちょうどその時魔物たちが大図書館を侵略しようとしてることは誰も知らない...
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