88話 影の存在
大変遅い投稿になりました。エンディングについてあれこれ悩んでいるうちにこんなに遅くなってしまい、申し訳ありませんでした。
コーツが一月後に謎の人物を特定できたと言った。
「資料を消した人物の足取りを調べてようやく掴めた。」
「謎の者達が分かったのか。」
「ああ、ばっちりだ。」
コーツがすんなり謎の人物達の名前を言うと思ったら、ここから焦らし作戦が始まる。
「奴らは資本と情報を握る者がこの世界を支配すると考えている。世界中に情報網を張り、世界各国の支配階級に金を配った。だがこれは昔から行われてきたことでもある。」
あまり関係のないことを言いだす。
「ロッ〇フェラーとかロ〇チャイルドなど世界でも有名なファミリーがある。彼らは緩く結束して、欧米の主要銀行、企業に出資し、企業銀行は彼らの意向に逆らえない。また銀行を通して各国政府に働きかけ政策を決めさせているんだ。」
「すごい名前が出てきたな。彼らはどのように世界を動かしているんだ。」
「例えばFRBはアメリカ連邦準備銀行とも言われるが、アメリカの金利を決定する機関であり、実質上世界の経済動向を決めている。それが300ファミリーの意向で左右されているのだ。」
「それが謎の人物達なのか」
「いや違う。俺はそういったファミリーや組織が他にも幾つもあると言いたいんんだ。謎の者達は絶対名前を知られないようにして、裏で金を使って世界の権力者に働きかけている。その上、犯罪組織とも繋がりを持っている。300ファミリーは表面上、犯罪組織とは関係ないように見えるが、謎の者達はほとんど犯罪組織と一体と言っていい。その彼らが俺たちを襲った集団に指令を出していたんだ。」
「では先日の襲撃事件も富山の件も彼らから犯罪グループに働きかけていたと言うんだな。」
「それだけではないぞ。奴らはもっと凄いことをしている。R国のウ〇ライナ侵攻など奴らの仕業と言っても良い。」
「まさか、R国の首脳が謎の人物だと言うのか?」
「いや、奴らはあくまでも表には出ない。R国の権力者に取り入って、情報操作しただけだ。」
「情報操作だけで戦争を始めたのか?」
「R国首脳にウ〇ライナの守備が脆弱で、簡単に制圧できると吹き込んだ。軍人もその意見にのっかたし、信じてしまったR国権力者もどうかしていたが。まあ、権力を長く続けていると都合の良い情報しか入らなくなる。R国がその典型だ。」
「謎の人物がR国に取り入っているのは事実なのだな?」
「そうだ。あいつらの一人がしっかりR国の中枢に入り込んでいる。今、R国は戦時体制になっていて、戦争のために全ての産業が従っている。これがどれほどの金が奴らに転がり込んでいるか分からないぞ。」
「しかし、戦争を仕掛けさせるなんて簡単ではないと思うが?」
「奴らは10年単位で仕掛けを考えている。情報操作で、R国権力者にウ〇ライナ侵攻がうまく行くと思わせたのさ。侵攻直後、あそこの権力者は2週間とか、2か月とかで制圧できると言っていた。どれだけ情報を見間違っていたか明らかだ。」
「そんな簡単に情報操作だけで?」
信じられない気持ちだった。
「少し前のEVへの偏重を思い出せよ。あの当時マスコミばかりか世界の指導者までもEV以外の選択肢はないと言い切っていた。世界が今すぐにEVに乗り換えなければ、CO2が増えて、温暖化が防止できない。一刻も早くEVに乗り換えるべきと言う風潮になった。だがな、冷静に考えれば、EVなんて音が静か以外、取柄はない。充電時間は長いし、走行距離は短いし、高価で金持ちでもなければ安易に手が出ない。おまけに寒冷地や極寒気では車が動かかなくなる。こんなもの誰が買うかという代物だ。普通のエンジン車に比べ、EVが劣っているのは明らかだ。ガソリンエンジンに比べ、バッテリーは重すぎるんだ。エンジンに比べバッテリーは重すぎて効率が50分の1劣っている。
いろいろ思惑はあったろうが、各国の指導者、多くの自動車メーカーの経営者、環境保護活動家など、環境保護を名目にして、躍起となってEVを開発普及しようとした。
ところが一般庶民は冷静で、そんな劣ったEVなんかに飛びついたのは、環境保護に心酔する者や、新しい物好きぐらいだった。気付けばEVという産業廃棄物が各地に放置されることとなっていた。
こんな劣ったEVが何で次世代の車ともてはやされたのか? 裏で操っていた奴が大笑いしていた者がいたのさ。」
「本当にそうなのか?」
「環境に良いから、次世代の車と言われて多くの者がEVを買った。その車に乗って、冬のドライブに出かけて、バッテリーが凍り付いて初めてEVの不便さに気付いたと言うわけだ。EVはまだ早すぎた。バッテリーにはまだまだ改良しなければならない箇所がありすぎる。改良されればいずれEVも見直されるかもしれないが、それには相当時間がかかる。
このEVブームを仕掛け、環境保護を言いふらした者の中に、しっかりと儲けた奴がいる。奴らは早めにEVメーカー、リチウム・ニッケル・コバルトなどの鉱山会社に投資をしていた。勿論EVが下火になる前に資金を回収している。その儲けがどれだけになるか想像しろ。」
「そいつらが全てを裏で仕掛けていたのか?」
「アフリカの鉱山に奴らが出資している。ただ、奴らは表に出ないし、名前が出るのを極端に嫌がる。だからマスコミに名前が出るなんてことはない。」
「それがどうしてアメリカ国防省に彼らの存在が知られていたんだ。」
「奴らは最近になって活動していたんではない。遅くてもベトナム戦争の時にはアメリカの中枢に入っていた。確証は取れなかったが、第二次世界大戦、朝鮮動乱の時にもアメリカ政府に影響を与えていた疑いがある。どうやら、この動きをCIAなどは気づいていて、奴らの情報を集め始めていたらしい。その時期は何時頃だったのかはっきりしないが、ベトナム戦争の時は、奴らの記録が国務省にあった。
ところが、その当時の奴らは情報の機密保持についてはまだ迂闊な所があって、国務省の記録は消したが、国防省に残っていたのを見逃していた。
それをおれが知らずに」
「そんな昔から活動していたなら、何代かに亘って継続していたんだな?」
「ああ、今の者たちは3代目にあたる。これがそのリストだ。」
3人の人物がリストアップされる。どれもの全く見知らぬ者ばかりだった。
「こいつらをどうする?」
殺意を込めてコーツが聞いてきた。
以前の構想ではもう一つイベントを作り盛り上げてから、終わりにしょうと思っていたのですが、思い切って次の話で終わりにしようと思います。
次はすぐに投稿できると思います。ではまた。