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私の中の怪物  作者: 寿和丸
4部 今日の花を摘め
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76話 コーツの子供

幸恵が妊娠したと言ってきた時、コーツは「俺の子が出来た」喜んだ。

「ユージは晶子と由香に子供を産ませた後は、子供を作ってない。これでは俺は地球に何の影響を与えることができない。」

「コーツは地球に影響を与えたいと言っているが、お前の能力は十分示されている。ペンタゴンがあれだけ慌てたのをおぼえてないのか?」

「世界最強の組織のペンタゴンを慌てさせたのは確かだが、それは事象にすぎない。俺は人類に影響を与えたい、進化をさせたいのだ。突然変異で天才が現れたとしても、それでは進化に繋がらないのだ。植物でも動物でも、特別優秀な個体が突然発生したとしても、それが主流にならなければ、進化とは言えない。種の主流にならなければ、いずれは淘汰され、地球から消えていく。勇次の子孫が少数に留まれば、それだけ主流になる可能性は少ない。お前はもっと多くの子供を作れ。」

「おい、冗談ではないぞ。人類の主流になると言ったなら、一億、いや十億人の子供を作れというのか。そんなこと物理的にも不可能だ。」

「いや、ただたくさんの子供を作れと言っているのではない。ジンギスカンは史上最多の子供を拵えたとも言われている。しかし、それだけで、彼により品化したとは言えない。ジンギスカンの子供が主流となり、人類に影響を与えたかどうかで決まる。DNAの調査で、東アジアでは特有のDNA型が見つかり、その発生時期を見れば、ジンギスカンが登場した時期と重なることから、彼が人類に大きな影響を与えたのではないかと考えた学者がいる。しかし、たとえこの学説が正しくても、ジンギスカンのDNAは人類の主流になってない。つまり、ジンギスカンの血の広がりはまだ進化に影響を与えるところまで行ってないということだ。」

「それなら、なおさら、私が多少の子供を作ったからと言って、人類に影響を与えられないではないか。コーツの期待に応えられないぞ。」

「いや、俺が言っているのはそう言うことではないんだ。キリンの首が何故長くなったのか?その疑問には首が長ければ高い木の枝の葉も食べられるからと言われている。首が長ければ、高い木の葉も食べられて、首の短い者よりも有利だったから、生き残れ、長い首のキリンが主流になったと言われる。しかしな、実際のキリンはいつも首よりも低い木の葉を食べているんだ。つまり、キリンはわざわざ首を長くしなくても、生きていけたと言うことになる。だから、長い首のキリンが生き残れたのは、高い木の葉を食べられたからと言うのには疑問がある。そこで言い出されたのが、長い首のキリンは、ライオンや豹などの敵を早く見つけられた。だから、短い首のキリンよりも生き残れ、主流になったと言う説だ。だがな、これにも異論が多くある。首が長ければ頭に血を送るのに多くの労力がいる。事実、キリンの血圧は人間に比べはるかに高い。それだけ、首が長いことは負担になっているんだ。首が長いキリンが生き残れたことは間違いないが、何故、生き残れたのかは解明されてない。

人間にも同じことが言える。ジンギスカンは多くの子孫を残したが、ジンギスカンの遺伝子が生存のために有利でなければ、進化には直結しない。キリンの首のことでも分かるように、長いことはメリットでもあり、デメリットもある。ジンギスカンのDNAに生存に有利な遺伝が組み込まれてなければ、いずれは淘汰されるだろう。

俺は、ユージの遺伝子を少し操作した。それが、生存に役立つはずと思っているが、ユージ一人では進化に繋がらない。ジンギスカンほどではないにしろ、子供を作れば、それだけ人類に影響を与えられるんだ。少数ではいずれ、消えさるだけなんだ」


「随分長い説明だったが、コーツは経済のことを何も考えてない。ジンギスカンが多くの子供を作れたのは、彼は大変強い権力を握れたからだ。また彼の息子達も強大で広い国を継承した。それにより多くの子孫を残すことが出来た。しかし、現在ではそんな権力を握ることは不可能だ。今、ジンギスカンのように子供を作れば破産になりかねないし、私の子供が成長することも出来ないぞ」

「だから、ユージが金持ちになるように俺も協力している。それにジンギスカンほど子供を作らなくてもよいのだ。ジンギスカンの子孫は権力を維持できなかった。それゆえ、まだ進化に影響をあたえるほど主流になってない。

ユージの遺伝子が優秀であるなら、必ず、進化に結び付くはずだ。それにはもう少し子供がいた方が良い。子供が少なければ災厄が起きた時、生き残れる確率は小さいからな」

「コーツが私の遺伝子を操作したと聞いているが、どんな操作をしたんだ?」

「ユージの精子には運動が活発になる遺伝子を組み込んだ。それによって、ユージと性交した女はすぐに妊娠している。幸恵も普通の男とならいくら性交しても妊娠できなかったはずだ。娘を一人産んだ後、妊娠しなかったのは夫の体力のこともあったが、彼女自身もあまり子供を作れる体ではなかった。そのうえ、高齢になったこともあり普通なら妊娠しなかったはずだ。たった一度の勇次との性交で、彼女が妊娠したことはお前の遺伝子が優秀な証拠だ。そしてこの遺伝子はお前の息子に引き継がれる。」


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