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私の中の怪物  作者: 寿和丸
3部 医者になる
50/89

50話 練習試合3

次の話はあらかたできているのですが、今回の話はなかなかまとまりませんでした。

遅れて申し訳ありません。

今後とも愛読お願いします。

練習試合とは言え、勇次にとっては初めてのテニスの試合で勝利した。嬉しさは半端でない。

「よっしゃ!」勝利が決まると思わずガッツポーズが出た。

「やったわね。」試合後、キャサリンとハイタッチで喜びを交わしていると、沢井も笑顔で言ってくる。

「さあ、次勝ったら優勝よ。テニス部員を差し置いて優勝なんて、凄い快挙になるわ」と激励やら、プレッシャーを掛けてくる。

「次の相手は、どうなんですか?」

「これから試合で対戦相手は決まるわ。まあ、普通だったらテニス部側が勝つでしょう。おそらくテニス部のトップチームであなた方が対戦したチームより強いわよ。見ておきなさい。」そうアドバイスをくれた。


沢井の言った通り、テニス部チームは同好会チームを相手にしなかった。同好会チームも決して下手ではない。いやテニスを始めたばかりの勇次より強いだろう。だが、テニス部のトップチームは強すぎた。

サーブは強烈で同好会チームはリターンもままならず、何とか返してもスマッシュを決められてしまう。そして同好会チームのサーブは難なく返されるばかりか、ときにはリターンエースを決まられる始末。

キャサリンが前の試合で仕掛けたストロークに持ち込むことも出来ず、ほぼ一方的に押しまくられた。

1時間もかからずに試合はあっけなく終わった。トップチームの特徴を掴もうとしていた勇次たちにとっても、何の成果がないままだ。しいて言うなら、トップチームの男性が最後に見せたショットぐらいだ。

相手を後方に追い詰めて置いて、ネット近くにポトンと落とすと、同好会ペアは一歩も動けなかった。これが最終ポイントとなり試合が終わった。

「あれが彼の決め技だろう」

ただ、そんな技が相手にあると知っていても、その前にこちらが追い詰められれば対処できない。ストローク戦で互角にならないと勝負にならない。

速いサーブに対処できるかも心配だった。「私に、あの球を返せるのか?」正直、不安が先行した。


決勝戦は2時から始まり、結構なギャラリーが集まることとなった。午前の試合でテニス部が敗れたことと、留学生のキャサリンが登場することで注目が集まった。

「へえー、テニス部が敗れたのか」「ああ、何でもアメリカからの女の子が凄いらしい」などと声が聞かれる。

観客は芝生に座るか、立ち見するしかないのだが、100人近くが集まるのは異例だった。

その客の多さが選手心理に影響を与えることになる。


前の試合同様、勇次はキャサリンに引っ張られる形で動いた。相手選手は上手く、試合慣れをしていて、勇次は弱点を突かれることになる。ただ、一方的にならなかったのは、一試合経験したことで勇次にもそれなりの自信がついたことだ。前の試合ではボレーを打とうとしても、手が出せなかったのが、届くと思ったら反射的にラケットを伸ばすことが出来るようになっていた。それにより、キャサリンの守備範囲が減り、強いストロークを繰り出していた。

そして、相手は勇次たちを同好会と見下し、勝って当たり前、ワンサイドで勝つのが当然と考えていた。意外にも勇次たちがボールを拾い、良くリターンをして、ラリーが続くことにいら立ちを覚えていたようだ。

試合は1セット目だが、ゲームカウント3対3で拮抗した。

「何だ、同好会相手にてこずっているのか」そんな声が観客から聞こえる。

多くの観客の前で、トップチームは強い所を見せたかった。それなのに上手くいかない。

そこで、キャサリンがやや後ろに退き、勇次とは逆の位置にドロップショットを落とした。

「これで決まるはず。」

本来なら、このショットは試合展開が有利な状況で、相手を追い詰めている時に効果的だった。今まで対戦した相手は思いもしない所で、ネット近く落とされるボールに足が追い付かなかった。そしてこの技を見せることで、相手は前の方にも注意を払わないといけなくなる。結果として、相手に大きなプレッシャーを与えることになる。

ところが、勇次はこのドロップショットに反応した。午前中に一度見て、この技がどこかで来ると思っていた。

ぐいっと左足を前に出し、掬い上げるようにしてボールをネット越しに送る。

相手はまさか返って来るとは思わなかったようで反応が遅れる。逆方向に体をよじって何とかボールに追いつき返してくる。

これを勇次はボレーで返した。

相手の男性はこれも拾い上げるようにして打ち返すが力はない。

やすやすと勇次はスマッシュを相手コートに打ち込んだ。


その後のポイントも奪取して、これで、ゲームポイント4対3になり相当有利な状況になった。

試合はまだ予断を許さない段階だった。ただ、相手のダメージは相当以上だった。いつも決め技にしていたショットを簡単に返され、しかもネットプレイで勇次に後れを取った。その精神的なショックは大きかった。

キャサリンは多分、今大会で最高の選手と見られ、ストローク戦では不利と考えられた。そしてネット際の攻防でも負けた。この時点で相手側男性選手は追い込まれ、精神的に負のスパイラルに陥った。

これがプロの選手なら何とか持ち直し、色々な手段を試みるものだろうが、所詮はアマチュアの大学生レベルだった。彼はそのショックを試合中に立て直せなかったのだ。

セットカウント2対0で勇次キャサリン組が勝利し、優勝した。


「うわー」勇次たちの勝利が決まると大歓声が起きた。これまで、稀に実力者が同好会に入り、好成績を収めることは合っても、同好会出身者がクラブ側に勝って優勝したことなどなかった。

この珍事に会場が盛り上がる。

「へえー、テニス部も大したことないな」

「同好会相手に負けるなんて、史上初だぞ」

そして勇次の周辺も大騒ぎとなった。

「やった、やった。テニス部の奴ら、ざまあ」などと口々に言っている。

勇次もこの騒ぎに巻き込まれていった。


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