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私の中の怪物  作者: 寿和丸
3部 医者になる
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46話 由香との逢瀬

由香は勇次と出会ってから3度ほど逢瀬を重ねていた。

勇次とのセックスで今まで経験したこともない絶頂感を得られた。しかし、由香が女優として多忙なこともあり、会える頻度は月に一度程度しかない。おまけに勇次が大学受験を目指すことになり、4カ月間以上全く連絡も碌にできない状態となっていた。

由香はその間に、他の男との関係を断ち切っている。中には「また、俺と付き合わないか」と昔、肌を重ねた男が撚りを戻そうと言い寄ってきたが、体よく断った。

「冗談じゃないわ。勇次と寝た後では、あんな男の下手なセックスに付き合わされるなんて。つまらない男とベッドに入っても満足することなどない。第一、一度別れた女とどうしてまた会いたいと思うのかしら。彼にはプライドがないの。だからいつまでたっても。大根役者と呼ばれるのよ。自分だけ満足して私を置いていったことに気付かないほどの間抜け。あんな奴、もうごめんよ」と言い捨てていた。


その勇次に会えない間、肌寂しい思いをしていた。彼の身辺を調査会社に依頼し、調べてもいる。

「この春、娘さんが誕生して、息子二人、娘一人の5人家族になったのね。一姫二太郎ということか。若いのに随分子作りに励んでいるわね」

調査書を見るに、夫婦仲はよく、円満な家庭が伺える。

「奥さんはなかなかの美人ね。とはいっても、所詮は素人さん。私なら彼を独り占めに出来る。私を夢中にできるのは勇次さんだけ。いつか私のものにして見せる」そんな野望を燃やしていた。

そして勇次の大学合格が決まると、すぐに連絡をして、「早くマンションに来て頂戴」と催促した。

電話を受けた勇次も久しぶりの由香に会いたい気持ちに変わりはない。

類まれな美女との逢瀬を忘れることなど出来ない。


そして、やってきた勇次に由香は大胆な誘惑で魅了する。

「いらっしゃいませ。旦那様。」由香の姿勢はまるで、主人を出迎える召使のように、しおらしくそして思わせぶりの目配せをする。

頭には白いタオルを巻いて髪を束ね、胸から下もこれもまた白いバスタオルで包んでいる。全くのソープ嬢になり切っている。

普通の女性ならとてもできないようなことを女優なら簡単にこなせた。

上目遣いにして、勇次を見つめてくる。

勇次はこんなことは初めての経験だった。これまで一度も風俗店に足を入れたこともなかったし、そもそも晶子と由香以外の女性を知らない。

あまりの由香の妖艶な姿に、目を開き、そして強い欲望が湧いてしまう。

「好きだ」思わず由香を引き寄せ抱くと、タオル越しに彼女の柔肌が伝わる。その何とも言えない感触に一層興奮する。

石鹼の香りと女の匂いが鼻孔をくすぐって、我知らず唇を求めている。

しばらくの抱擁をかわした後「さあ、あなたも服を脱いで」と言われると、否応もなく服を脱ぎ捨てた。

風呂場に誘われ、ここでも彼女はソープ嬢になり切る。

泡だらけの体で、由香は勇次に抱き着いて、身体全体を使って触りまくる。肌と肌がこすられ、もう勇次の理性は飛んでいた。

「欲しい」乾いた声で言う。

身体がまだ濡れているのも構わず、女を抱き上げるとベッドに直行した。


「これは腐れ縁になるかな」と性交した後で、勇次は反省した。

晶子がいる以上、浮気を続けるつもりは毛頭ない。

今は新しい事業を展開中であり、家庭内に波風を起したくない。

ただ、由香と関係を持った以上、断ち切るのは余りに惜しい。

顔もスタイルも抜群だし、話しをしても飽きることはない「これほどの女性はめったにいない」そう思えてくる。

何よりもセックスに貪欲だった。

晶子が慎み深く、夜の生活でもめったに声を上げない。それに比べ、由香は女優ということもあるのか、感情を表に出すのだ。

「行くう!」そんな絶叫があの最中に彼女の口から飛び出す。

これに勇次は堪らない。

「ああ、こうして女は喜ぶのか」そう思うと、由香に夢中になるのだ。

晶子では味わえないセックスであった。勇次も由香とのベッドでの行為に酔いしれた。

しかも今回のように、勇次を喜ばせる演出を平気でやってのける。

「このひとと離れたくない」そう思わせるものを彼女は持っている。


それでいて、由香に惚れこんでしまわなかったのは、コーツの存在だった。

「ユージ。あの女は駄目だ。あれはお前の子供を生もうとしない。あの女と何回も性交したとしても子供が出来ないのなら、無意味だ」それがコーツの評価だ。

由香は勇次にコンドームを強要した。

亀がアワビに入りかける寸前でも、「コンドームを付けて」とストップをかけさせる。どんなにムードが高まっていようとそれだけは彼女は譲れなかった。

「妊娠すれば、私は女優のトップでいられなくなる。」その思いが強かい。

勇次には妻がいる。妊娠すれば不倫がばれてしまう。

昔ほど、“未婚の母”“不倫”などについて、社会からの批判が強くはないが、スキャンダルとして絶対扱われる。

トップ女優の不倫劇ほどマスコミに好都合の話題はない。

連日テレビで取り上げられ、彼女の地位は一気に落ちるのは確実だ。

由香にとって、勇次とのセックスは待ち望むものだが、妊娠は絶対避けたかった。


それをコーツは認めることでない。

「ユージ。あの女とのセックスは無駄だ」と繰り返し何度も言ってくる。

その為に、勇次は由香に惹かれながらも夢中になることはなかった。

ただ、由香とのセックスは断ち切れず、“腐れ縁”として続いていく。


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