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私の中の怪物  作者: 寿和丸
一部 怪物との出会い 
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1話 怪物

その船ははるか何十万年、何万光年、宇宙を漂っていた。

ある太陽系を通り過ぎようとして、弱い電波をキャッチした。自然発生の電波でない、明らかに人工のものだ。船は目指すべき進路を変えた。

船内の生物は自動警報により、長い眠りから目をようやく覚ました。

その物は第三惑星を周回して、目標を大きな大洋に面した小さな島にある都市とした。その都市が惑星最大の規模と見定めたからだ。

「あそこなら、情報もエネルギーも生物も手に入れられる。」

そして、都市から少し離れた山地を選ぶ。

船には惑星の引力を振り切って飛び立つ力はない。否、もとより船は母星を旅発つときから、行ったきりの宿命だった。

植物の種が出来る限り母木から遠く離れ、目当てもなく放たれるように、船には帰還する設計になってなかった。

うまく根を張る星を見附けられたな、密かに着陸し、目立たぬように船を処分して証拠を消す。そして能力を使って成長し星を支配する。やがて生物は種を生み、他の星に放つ。それがその物の宿命だった。

山肌の少し開けた平場に着陸した。

鬱蒼と茂った林、船体よりはるかに多きい木との間だった。

船を爆破処分し、数本の大木も燃え尽きた。

その物の活動はここでやめる。後は待つだけだった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

3人の男たちが山中で藪をかき分けていた。林道の空き地に車を置き、山林に入ったのだが、たちまち藪に囲まれ、道らしきものは獣が通った踏み跡ぐらいだ。それも人間の背丈からすれば随分低くて、上から見ればトンネルみたいに藪に隠れていた。

男たちは背を超すほどの篠竹やススキを棒や杖で払いのけながら進むしかなく、全く前が見通せない。

「本当にこの辺りに落ちたと見て良いのか?」あまりの藪の深さに音を上げた一人が言う。

「住民からの話で、光を見たと言う位置と三角山との関係でこの辺でしかないはずだ。もっと発光地点が北側なら山に隠れて、あの地区から見えなかったはずだし、逆にもっと南では山が低くなりすぎて、手前の山で見えなくなる。何よりも目撃した住民が西にしかいない。あの尾根に遮られて、東からは見えなかったはずだ。そうなるとこの辺りしか考えられない」

「言っていることは分かるが、こう藪が深くては方向さえ分からない。間違ってないのか?」

疑心暗鬼になりかけていた時、少し離れていた仲間から声がした。

「おーい。ここは変だぞ。焼けた跡がある。」

「本当か?今行く」

そこは焼けこげた草むらが、5mくらいの円形になっていた。

「焚火にしては燃え方がおかしい。確かに隕石か何かが落ちて、草木を燃やしたとしか思えん」

「焚火の跡なら、こんなに広くしないし、周りは木や草を切り払って綺麗にして、中心だけに燃えカスが残る」

「まちがいないな」

「よしここを中心に隕石を探そう」


やる気の出てきた3人は手分けして、隕石の痕跡を探し始める。だが見つけたのはウサギか何かの巣穴ぐらいだった。

「これは違うな。村の人が見たと言うのはひと月も前のことだろ?もう雨などで穴が塞がってないのか」

「いやあ、ひと月そこらで、隕石の跡が消えることはないだろう」

「ただな、隕石が原因でここが焼けたとすれば、隕石は地面に垂直に落ちたことになる。普通、隕石がまっすぐに地球衝突するより、斜めから来るのが多いだろ?そうなればここで倒れた木は綺麗に円形内で燃え尽きている。斜めから落ちてきたなら、もう少しいびつな楕円状になると思う」

「それは言える。周囲の木にも、てっぺんや中途からが折れた物がない。まるで、空から円盤が降りてきて、丸く焼け焦がした跡のようだ。」

「お、それいいね。隕石探しよりもUFOを探す方が、興味がわくぞ」

3人はそれからも丹念に地面を探すが何一つ、隕石やUFOの存在を示す物は見つからなかった。

「もうかれこれ、30分も探している。これだけ探しても見つからないのだから諦めよう」

「そうだな、一旦、車に戻ろう」

「そうだ、もう昼過ぎだ。腹が減った」

「来る時に国道わきのレストランがあった。あそこで昼にしよう」

彼らは気分を無理やり変えて、引き返していく。


結局、山中を2時間近く探し回って、何一つ目ぼしい収穫はなかった。

彼らは自称ミステリーハンター。いつもUFOや宇宙人がどこかにないか探し回っている。ただ、今日のように空振りに終わることも多く、それはそれで、彼らの探求心を燃え上がらせた。

「宇宙人は必ずいる。それはきっとどこかにいる。それを追い求め、探すのが男のロマンだ」

「見つからなければ、更に足を延ばせばよい。こんなロマンを女には分からないだろう」

ところが、彼らは全く気付かなかったが、彼らの探し物の最大の関心事、宇宙人を彼らの一人が衣服に付けて、車内に運び込んでいたのだ。

折角のUFO関連に遭遇した機会を誰一人、気づかないまま、車を動かした。


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