第二話の後編
なんと二日前に投稿するはずだったのに二日後になっちゃった。
次で最後なんですけど、もっとうまく書きてぇなぁと思いながら書いてます。
更新は明日になります。
土日はやる気がなくなっちゃう。
その異変に気付いたのは、一日空いた二日後のことだった。
また仕事の話でカフェに向かうのが昼過ぎになり、ガラガラなカフェに入ってすぐオープンテラスへ目をやるが、そこにいつもの姿はない。
少し驚き考える。彼女が連続で来ない、というのはあまり考えられなかった。なぜなら叔母である店主曰く、彼女は学力にしても全国一らしく、高校も進学校ということあって三年生は丸々受験勉強になる、とのこと。
彼女はそれを使ってあの絵を描き上げる時間にあてていたらしい。両親とはいいとは言えない関係な以上、カフェを使い続けるだろうと思っていたが……
「どうも、今日も来てないんですか?」
店に入り、ちょうどカウンターでコーヒーを淹れていた店主と目が合い、聞いてみる。
「えぇ、今日も来てないですね……心配だ」
きっと彼女の目元も母譲りなのだろうと、容易く想像できる店主の勝気そうな目、車と人通りが見える窓の外へ瞳を向ける店主は、どうやら連絡も取り合っていないみたいで、仕事も上の空に見える。
「アイスコーヒーと日替わり軽食を」
――――だがそれがなんだ。
カフェで出会った見知らぬ男にできることなど、彼女の動向を聞く程度。叔母だという店主が知らないのであれば、日常に戻るのみ。他人はそういうもの、そう思いながら足早にさっさとオープンテラスへ出ていく。
すると彼女がいればそちらに向いていた意識が、以前のように風景へ向かった。
山の陰向こう地平線まで続く曇り空から晴れに切り替わる空模様、だが次第にひび割れた雲間から漏れる陽の光は、昼をすぎた時間ゆえ、黄金色に輝くカーテンを下ろす。
不意に爽やかな風が吹き抜けた。鏡が如く山々と空を映し出す壮大な湖面が揺れ、思った。
これだけ荘厳でありながら、これだけ壮大でありながら、神々しいのに、物悲しい。
自然を見るように立つ彼女の後ろ姿と、僅かに見える画架と絵、思い出される彼女の姿を、頭を振り、自身を諌めるよう呟いて払う。
「深追いは、いらぬ不信感になる」
気を取り直していつもの席へ……と思ったが、湯気のたつコーヒーカップ片手にカメラマンらしき男が座っていた。
そういうこともある。仕方なく左右に対となる反対側の席へパソコンを置き、作業を始めた。
気になるものがないだけあって、キーボードを叩く指は滑らかだ。そしてこれまでの出来事を作品へ還元しようと頭もよく働く。
時間を確認する。時間は……それほどない。
今日という時間は幾らでもある。違う、俺がこの場所に滞在する期間だ。
無限ではなく、有限である。既にその半分が過ぎ去っている。
俺は、一体何がしたいのか。これまでの人生、たった二十幾つだが好き勝手に生きてきた。自分がやりたいことをやった。
今回ばかりは……そうも行かない。
移り変わる空の下、俺は再びパソコンへ意識を向けるのだった。
……ずいぶん退屈な時間が過ぎていった。
須臾の一つ感じれず、時間は五時前に。
俺のいつもの席に座っていたカメラマンらしき男性も、既にいなくなってる。
「……」
暗くなり始めた空を見上げ、一日の終わりを感じる。なんとも言えない物足りなさは、言葉にしてもしょうがない。
帰ろう、そう席を立つと、
「宇佐見さん!!」
洗い物をしていたらしく左手に泡付きスポンジを、右手にスマホを持った店主が、その上天地がひっくり返ったと言わんばかりの表情でオープンテラスへ顔を出していた。
その電話がなんだったのか、予想や想像をさせるよりも早く、店主が言う。
「みことが今電話してきて……!」
「え!?」
「近くの病院に入院してるって!」
近隣の病院……この辺りにある病院は一つだけ、思考よりも早く、俺の体は動いていた。
「わ、私も行くから先に!!」
パソコンを脇に挟み、ところどころ体をぶつけながら、外へ勢いよく飛び出した。