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#9熊が出てきたんですけど

「というかお前もお前だよ。その下手な記憶喪失のふりをいつまで続けるつもりだい。おかげでこいつにあたしの正体がバレちまったじゃないか。」


そういってババアはあたしの頭を丸めた紙で叩く。


「あだっ」


そんな間の抜けたやり取りを見て気が抜けたのかモルディエントと呼ばれた男も話しかけてくる。


「こんなところに…いらっしゃったのですね。」


ババアはめんどくさそうに答える。


「こんなところとは失礼だね。まぁ、いまだに鎧の兜も外さないあんたらみたいな高貴な身分の騎士サマから隠れるにはこういうところがピッタリだからねぇ。にしてもまさか王国騎士団長様自ら乗り込んでくるとは思わなかったよ。」


…なんかババア怒ってない?

すごい皮肉っぽいんだけど。

まぁ、このモルディエントって人ずっと鎧つけてて怖いし外してくれたら助かるから何も言わないでおきましょう。


「あ…これは失礼を…」


そういって大男は素直に兜を外した。

周りの部下たちが驚いたような顔で彼を見る。

まぁ、ただの奴隷商人に敬語で接するどころか、言われたことに素直に従ってる姿なんて見たら驚くわよね。


あたしは別に意味でその姿に驚いてるけど。


……兜の中から熊が出てきたのよね…


シャガルさんの存在で獣人がいることはわかってたけど、ほかに獣人は見たことなかったから久々に見るとびっくりするわね。


「それで?なんでここがわかったんだい?その様子だとあたしを探しに来たってわけじゃないんだろう?」


そういいながらちらっとこちらを見るババア。

えっなに?これもしかしてあたしがらみの事件なの?


「実はカクサレの反応が迷いの森にあったのです。それも生き物…おそらくは人間だろうと捜査の者が判断しまして…」


モルディエントが話し出す。

もしかしなくてもあたしじゃない…。


「ふむ、それであんたがわざわざ王都からやってきたってわけかい。だがどうして、うちの店に、こんなに荒々しく、登場したんだい?」


ババアは徐々に語気を強める。

あ~…これ店を壊されたの相当頭に来てるわね……

正確にはババアが最近気に入って育ててたよくわからない植物の鉢植えが壊されたことかしら。

あれ、なんか人の顔みたいなのがついてて気味悪かったから個人的には壊れた良かったと思うけど。

そんなことを思いながら二人の会話を聞いていると、モルディエントが言いづらそうに口を開いた。


「……この店にてカクサレ様が奴隷として売られている可能性が高い、と捜査結果が出たのです。」


――――――――――――――――――――――――


モルディエントの話はこうだった。

迷いの森近辺でカクサレの捜査を開始すると同時にまずはこの町で情報を集めることにしたそう。

その中で、ある二人組が最近急に羽振りがよくなってよく豪遊しているという情報が入ってきた。

その二人を見つけ出して話を聞くと、森の中で見つけた人間を奴隷商に売ったら大金で売れたのだとか。


……これ、もしかしなくてもヘイグとシャガルのことよね?

私とババアが半眼になりながら話を聞く中、モルディエントは続ける。


「その二人に話を聞いてみると、容姿や身なりの特徴から、その人物はカクサレだろうということがわかりました。そして二人組がその人物を売ったという奴隷商を探し、この店にも捜査をしに来たというわけです。」


「「……………………。」」


あたしとババアは完全に呆れ顔になっていた。

あの二人…憎めないとは思っていたけど、正直に話したらこんなことになるとか思わなかったのかしら。

憎めないとは思っていたけど、ここまでとは思ってなかったわね。


……あれ?と言うか容姿がわかっているならあたしがそのカクサレだってことすぐにわかりそうなものだけど……


「あんた…まだ気づいてなかったのかい。」


呆れた声でそういうと、ババアは何かの呪文を唱えた。

すると、あたしの体を覆うように光の膜が現れ、そして砂の様に消えていった。


ん?今何が起こったの?

あたしの周りが光っただけで特に何かかわったわけでもないし…


「「!!!」」


って、なんかみんなあたしのこと見て驚いてない?


「まさか、この青年が…」


「そうさ、こいつがあんたらの言うカクサレさね。いくら魔術で姿を変えてるとはいえ、そのことに気づきもしないとはねぇ…」


「………………。では、バーバラ様は彼がカクサレだと気付きながらも奴隷として買い取ったということですか?」


モルディエントの纏う雰空気が変わる…。


「っな……!!カクサレの奴隷化など前例すらない大犯罪だぞ…っ!貴様ァ、自分が何をしたのかわかっているのかッ!!!」


さっきまで黙っていた部下の人が叫ぶ。

モルディエントも今度は止めない。きっと同じ考えなのだろう。

さっきまで小屋を調べに行っていた騎士たちも戻ってきている。


これ、やばくない?冗談抜きにババア命の危機じゃないかしら…


そんな緊迫した空気の中全員の視線をその身に受けて、それでもババアは相変わらず呆れた顔をしていた。





「いや、奴隷化なんざしとらんよ」




「「「「……………はっ?」」」」


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