表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/33

#7魔力と法力とは

時は流れ……。


それから数か月がたったわ。

その間に何が起こったのかというと……



特に何もなかったわ。


さすがに奴隷小屋ってだけあって何人かあたしを買おうと見に来たけど、あたしはその度に客から嫌われるような態度をとって追い返したし。

皆あたしのその様子を見てすぐにあきらめて買うのをやめていったわ。


ただ、一人だけどうしてもあたしを買いたいって縋ってきた男がいたわね。

なんでそこまであたしにこだわるのか聞いたら「儀式に使う生贄にしたい」ですって。

その男にはあたし(とついでになぜかババア)のドロップキックをお見舞いしてあげた。


確か金ならいくらでも出すって言ってたから嬉々としてあたしを売るんだろうと思ってたけどババアはそうしなかった。

なんで一緒になって叩き返したのかババアに聞くと、


「この国じゃあ人間をいけにえに使った魔術、法術は禁術なんだ。特にお前はカクサレだからね。あの法使いの男が万が一にでも捕まったらあたしにまでとばっちりが来る。」


ということだった。

ちなみにカクサレってのはあたしみたいに異世界から来た人や物のことをいうらしい。

それにしてもこのババア、やたらとそういうことに詳しい。魔術や法術に関することからこの国の法律や貴族式の礼儀作法。果てはあたしがいた世界についてまで…

ババア自身はいろんな立場の人間に奴隷を売るためには知識がないと、なんて言ってたけど…。

正直、ただの奴隷商人に必要な知識とは思えないのよね…



そんな博識謎ババアにあたしはこの世界のいろんなことを叩き込まれた。

ババア曰く、「商品を磨くのも仕事のうち」だそう。

あたしとしてもこの世界のことがわかるなら、と特に反発もなくババアの知識を吸収していった。

まぁ、途中から楽しくなっちゃってあたしの方からもいろいろ質問しちゃったりしたんだけど……

だって本やアニメでしか見たことない”異世界”なんて場所に来たのよ!?

魔力とか、魔獣とかファンタジーなものが実際に存在する世界にきたなんて知ったら色々質問しちゃうわよ!

それにババアの教え方も絶妙なのよね…

興味を引き出すのがうまいというかなんというか……

まあ、とにかくそんな感じでこの数か月は過ぎていったわ。


そして今日はついに魔術と法術の話を聞くことになったの。

いつものように応接室裏の事務室のような場所でババアが話し始める。


「あんたは魔力と法力はについてどこまで知ってるんだい?」


「そうねぇ…魔力は女性しか持ってなくて、逆に法力は男性しか持ってないってことは聞いたわ。あとは全く知らないわね。」


「その違いは?」


「わからないわよ。」


即答する私にババアはため息をつく。


「ハァ…もう少し考えたらどうだい。」


…考えてわかるなら考えるわよ。

でも考えたってわかるわけないんだから教えてもらった方が速いわよね。


「ま、いいかね。魔力と法力の一番大きな違いはどこから生まれた力なのかってことだよ。」


どこから生まれたか…?


「何が何だかさっぱりって顔だねぇ。じゃあ、まずはあんたも持ってる法力から説明しよう。法力ってのは体の中から生まれてくる力なんだよ。それがあんたらの体の中をめぐってるのさ。あんたらの世界じゃあ気とかいうこともあるみたいだね」


なるほど…気って聞くとわかりやすいわね。


「そして魔力。こっちは外に漂ってる力を体の中で変換したものさ。男の体の中を法力が巡っているように自然の中でも力が巡っている。その力を借りているってことだね。」


ふむ、これはどっちかっていうと物語でよく見るマナみたいなものかしら。

でもそれなら男性と女性がそれぞれの力しか使えないのはなんで…?


「その説明だとどっちの力も使えそうなものだけど…。なんで男性は法力しか、女性は魔力しか使えないのかしら?」


「男には外にある力を魔力に変換する能力がないんだよ。それと同じで女には体の中で生まれた力をためておくことができない。」


「なるほど。そもそもがそういう風にできているってわけね」


「まぁ、そんなとこだね。ほかに質問はあるかい?なければ次に行くよ。」


「あ、やっぱり体の中から生まれる力ってことは法力には個人差もあるの?」


「もちろんさ。生まれつき法力の大きさは違う。修行をすることで大きくさせることもできるがね。法力だけじゃなく魔力にも個人差はあるよ。人によって使える魔力の量も違う。」


「…?なんで?外にある力なら皆同じように使えるんじゃないの?」


「そうさねぇ…。細い管に大量の水をいっぺんに流そうとしたらどうなる?」


「ん~…管が破裂するか、水があふれるわね。………あっ」


「そういうことさ。その管の太さが人によって違うってことだね。」


「なるほどね……」


魔力と法力に違いについては何となくわかったわ。

にしても残念ね……。魔力ってものが使えるならあたしも物語みたいにでっかい炎とか氷とか打ち出してみたかったのに。


「もう質問はないね?それじゃあ、次は魔力と法力の細かな違いについて…」


と、その時、



ドゴンッッッッッッッッッ!!!


轟音とともに入口のドアが吹っ飛んだ。

吹き抜けになった入口から鎧を着たかなり大柄な体の男が入ってきた。

そのあとから同じような鎧を着た人達がぞろぞろと入ってくる。


「ここは包囲されている。おとなしくしていれば危害は加えない。」


最初に入ってきた男が静かにそういった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ