#26 本当にここにいるんだろうな
投稿遅くなってしまい申し訳ありません。
神殿を出たあたしは裏手にある入口を茂みに隠れてこっそりと見張りながらババアに事情を説明した。
「はぁ?心の声が聞こえた、だって?」
「ちょっ…。声が大きいわよ。…信じられないのはわかるけど、そうとしか言えないのよ。」
「そんなことがあるとは思えないけどねぇ…。」
予想通りババアはあたしの話をあまり信じていないようだった。
まあ、急に心の声が聞こえたからそれを信じてついていきましょうなんて言われて信じる人間はいないわよね。
でも……
「でも、ほかに手がかりもないのも事実だからねぇ。」
ババアがあたしの考えていることを口にした。
そう。すみずみまで王城内を探してもモルディエントさんが連れ去られた痕跡さえなかったのだ。
モルディエントさんの行方が完全にわからなくなってしまう前に見つけ出さないと…。
そのためにはこんなおとぎ話みたいな手がかりでも試さないわけにはいかないわ。
そう思いなおして入口の方に目を戻そうとすると後ろから声が聞こえた。
「そこで何をしている。」
まさかバレたのかと思い冷や汗をかきながら振り返ると、そこには怪訝な顔をした王太子が立っていた。
「なにをしていると言って……!?。」
「「シー!!」」
再び声を上げようとした王太子をあわてて二人で茂みに引きずり込む。
今こんなところでばれたらたまったもんじゃないわ。
「訳はあとで話しますから静かにしていてください。」
不服そうな顔をしている王太子だったがあたしたちの気迫に押されたのか一応は黙ってくれたみたいだった。
と、その時入口の扉が開いて先ほどの見習いの人が出てきた。
…見るからに不審な動きしてるわね。
「あんたの話、おとぎ話ってわけでもなさそうだね。」
ババアが小声で話しかけてくる。
「そうね。…まああたしも半信半疑だったけど。」
事態を把握していない王太子が頭にはてなマークを浮かべているがとりあえず気にしない方向で行きましょう。
「とりあえず、追いかけるわよ。」
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道中王太子に事情を説明しながら尾行を続けていくと、王都のはずれにある小屋にたどり着いた。
よく見ると小屋の周りに何人か集まっているのがわかる。
「……本当にここにいるんだろうな。」
王太子が怪訝そうな顔で聞いてくる。
いや、もしかしたらいるかもしれないって話よ。
というかあたしやババアは別として、王太子がこんなところまで護衛もつけずに来ていいものなのかしら。
「わからないわよ。でももしいるかもしれないなら探さないといけないじゃない。」
「……。」
あ、敬語で話すの忘れた。まあいいか。
見習いさんは小屋の周りにいる人影に近づき、その中の一人に話しかけた。
ここからだと暗くて顔がわからないわね…。
でも、この状況は明らかに怪しい。
後ろのババアと王太子の方を振り返ると二人とも真剣な表情をして頷き返してきた。
どうやら同じ考えみたいね。
ということは、あの小屋の中にモルディエントさんがいるってことだわ。
助けに行きたいけど、小屋の周りの人影に気づかれずに小屋に近づくのは難しそうね…。
どうにか小屋の中へ入る方法を考えていると、後ろで王太子が首飾りに何か話しかけているのが見えた。
何かのお祈りかと思ってみていたら、なぜかどや顔をされた。
…何なのかしら。
「…あの首飾りは通信機みたいなものだよ。王城とつながっているのさ」
怪訝な顔をしているあたしにババアが教えてくれた。
あ、そういう電話みたいな道具があるのね。
にしてもなぜどや顔?
「しばらく待っていれば騎士団が到着するだろう。その間何か動きがないか見張っておくぞ。」
という王太子の言葉で、あたしたちは騎士団を待つことにした。
到着するまでの間に何も起こらないといいのだけれど。
読んでいただきありがとうございます。