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小説請負人Hisae

作者: 當宮秀樹
掲載日:2020/10/24

私はHisae年齢は想像にお任せ。 職業は小説の請負人をやってます。


えっ? それ、何って?


小説の請負人よ……


えっ? 具体的にって? 


読んで字のごとくよ、あんたバッカじゃないの…小説を請負うのよ!


えっ、解らない? 勘弁してよね……


説明するから良く聞きなね…… 依頼者の希望に応じた小説を私が創作し代筆するの、

依頼者が書いてほしい題材と内容をアレンジ作成し、執筆・製本までするという小説請負人のこと。


聞いたこと無いって? 


当たり前よ、私が考案者つまりパイオニアってか…

依頼の約7割は自叙伝が多いのね、でもそれを只の自叙伝にしたんじゃあつまらないのよ。 

私の書くのはその辺の芸能人や著名人の自叙伝とは違うの、SF・ファンタジー・純愛物

・メルヘン童話・サスペンスなど依頼者の好みを優先して執筆するの、シナリオも

依頼者の希望に従うのよ、当然、主人公は依頼者本人のが多いの、何でも書けるわよ、

だって小説だからね、決まりごとが無いから自由なのよ、私にピッタリの職業だと思うの、

ただし、ホラーものはお断りしてるの。


どうしてって?


そんなの私のかってでしょ。 


怖いのかって?


あんた、ぶっ飛ばされたいわけ? 


ホラーってさぁ書いていて吐き気がするのよね。


やっぱり怖いんだって?


ほっといてちょうだい。 あんた、ただで帰れると思わないでね他に聞きたいことある? 


Hisaeってどういう字書くのって?


漢字にすると久しいに江戸の江だけど。


えっ?…なに? 名前からすると昭和の生まれかって? 頭に来た…見れば解るべや! 

もう、てめぇぶっ飛ばす!顔かせ。


今までで印象に残る作品はって?


なによ?急にわたしの話しは無視かよ。 


う~ん、そうね、どれも印象あるけど物理学者が依頼者の時はチョット難儀したかもね…

物理学なんて私の頭の中に無いから大変だったわよ。


どうしたかって?


しかたがないからアインシュタインやホーキンス博士、リサ・ランドール博士の

パラレルワールド理論など、物理学の本を片っ端から読みあさったわよ。

おかげで、わたし物理学に興味持ってしまったのね。 

リサ、ランドール博士の提唱するパラレルワールドなんて最高に面白かった。

平行する複数の宇宙・無限の平行世界。それぞれの世界に存在する自分。

特に博士の自宅浴室のシャワーカーテンを使っての表現は楽しかった。

最高! 彼女の美貌と発想力は私以下だけど…全般的にまあまあいけてるかもね…


えっ! 私の頭良いって?


当ったり前じゃない、だてに東大出てないわよ。


えっ、東大の何学部出たんですかって?


出てないわよ。


今、出たって言いましたけど……


よく聞きなさいね「だてに東大を出てない」出てないから出てないって云ったのよ。 

つまり東大を出てないから出てないって言ってるじゃないの、あんた日本語解る?


$%&#%&$”%&……


まっ、そんなことはともかく、請負小説って色んな人の人生感や生き方をダイレクトに聞けるでしょ。

そして、それが形になる。 だから凄く楽しいし、為になることがたくさんあるの。

依頼者の人生を描写するわけだから、失礼の無いように凄く気を遣うのよ。 

そしてできあがった本を手にとった時のあの依頼者の顔、もう最高! 

我が家に帰って早く読みたいっていう態度が手に取るように伝わってくるの。

そんな顔を見たり感謝の手紙やEメールを見たら、こっちまで楽しくなるの。

喜んでもらって良かった!って思う至福の瞬間ね。


 

変わったエピソードは無いかって?


そりゃあるわよ、聞きたい? 


その方は朝田清美っていう人なの、当然仮名。 内容も普通の恋愛小説だったの。

私はてっきり女性だと思って書いたのね。 そしたら依頼者は男性だったの…

しかも同性愛者。 そう、オネエよ、オネエ様だったの。


「若干、ニュアンスが違ってくるから書き直します」っていったんだけどね。


依頼者が「よく私の正体解ったね、これ最高!」って誉めてくれたの。

そう、その作品を気に入ったみたい。 頭がパンクしそうになったわよ。 


あと、女性の依頼なんだけど、ある男性と結ばれて人生を全うするというごく普通のストーリー

なんだけどね、現実には男性の方は既婚者だったの。

小説の中の結婚生活は全て女性の願望だったの。


この類は結構あるのよそう仮想現実。


他に、自分の旦那とは若くして死別したんだけど、忘れることが出来なくて、

せめて小説の中だけでも一生涯寄り添って、天寿を全うしたいというご婦人もいたの。

その方とは直接何度かお会いして打合せを重ねたの……

作品を手に取った瞬間ご婦人は大粒の涙を流したの! 私も、もらい泣きしてしまったわ。


あの時も喜んでいただいて良かった。 心の底から思ったわ。


子供を早くに亡くした親御さんの依頼も受けたわよ。 依頼者本人は順番通り、

子供さんより先に死ぬというストーリーなのね。 

わたし改めて思ったの、実は当たり前のことが一番幸せなんだってこと。


それはEメールでのやりとりだったんだけど感謝の文面が泣いていたの。

私、こう見えて「死」に弱いのよ。


この仕事していて良かったって思える、私のささやかな至福の瞬間。

これでもHisaeさんはけっこう感謝されてるのよ。


私のこと記事にするときはそこのところ強調しなさいね。人情派、美人、

請負小説家Hisaeとかなんとかってね。


微塵小説家ってなんですかって?


馬鹿野郎・なにが微塵だ字が違うだろ字が美人って言っただろ。

 

お前…本当に顔貸せや。 外に出ろ…外に!  



   END


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