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00.プロローグ
死んだ人間はなにも残らない。
それはこの世界の常識である。
死体も、情報も、思い出さえも。新聞やニュースで騒がれた死は、数日後には消え去っている。情報屋と名乗る特殊な者たちが書いた新聞。それだけに死は残り続ける。
死とはなんなのか。なぜ皆生まれ、死にいくのか。死んだ先にはなにがあるのか。
僕はそれを知りたい。突き詰めたい。解き明かしたい。
最後になにも残らなくても、せめて僕がいた。僕たちがいた証をこの世に残して、記しておきたい。
それが僕の願い。いや、とてもちっぽけで、でもとても大切な
──目的だ。
(とある喫茶店マスターの日記より)