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いや、だからまじで星遺物にとかいらないんだって…




数年前の出来事…



「やっぱり凄いよなぁ〜星遺物」



「うんっ、キラキラして綺麗!」



町の中で祀られている“3つ”の星遺物。



小さな彼らは憧れた目でそれらを見ていた。



星遺物とは、文字通り星からの贈り物。



星の加護が付与された武器や道具のことを指す言葉だ。



星の加護が付与された星遺物は、あらゆる事象に対して対抗できる力を持つ。



過去には、大災害や大厄災…世界の滅亡すら、星遺物に選ばれました英雄達が挑み、世界に平和をもたらしたと言われている。



それらの話は色んな書籍やお伽話にもなり、子供たちの間では知らないものはいないほど大人気だった。



いつか、自分も星遺物に選ばれて世界を救うような冒険に出るのだと、憧れてしまうほどに…



…ただ、一部を除いてだが…



「…ふぁぁぁぁっ…」



目を輝かせて星遺物を眺める子供たちの中に興味なさげに欠伸をする少年が1人。



「…なぁ、帰っていいか?」




「えっ!駄目だよもぅ!」



「はははっ、まぁまぁ落ち着きなよミネルバ。しかし、クリスは本当に星遺物に興味が無いんだね」



「…んんー?…あー、まぁな」



「そんなんじゃ星遺物に選ばれないよっ」



「…いや、別に選ばれたくないし…」



「えぇーっ!?なんでよっ!」



「…だって、これに選ばれるって事はめんどくさい事に強制的に巻き込まれるってことじゃん」



「…んんっ?どういう意味よー?」



「…まぁ…わからないならそれでいいよ。俺はこっち調べるので忙しいし」



「ん、まだ大樹の秘宝について調べてるのかい?」



「え〜、またあの御伽話〜?」



「星遺物もたいして変わんないだろ……」



「でもっ、大樹の秘宝って実際に見た人いないじゃん」



「…まぁね」



大樹の秘宝…



古い昔話の中に登場する8つの宝物…



文献が少な過ぎて、どこにあるのかはもちろん、どんな形をしているのか、どんな色なのかすら不明…



わかっている事は、8つ揃える事で何かが起こる…それだけだった。



「8つ集めたら何かが起こる…だったっけ?」



「うん」



「何が起こるのよ?」



「それがわからないから調べてるんだよ…気になるだろ?」



「…んー…た……確かに気になるけど…でもやっぱり星遺物のほうがいいよ!」



「…いや、いいって俺は…てかしつこい」



「まぁまぁ………クリス…ミネルバはね、クリスが他の子達から変人扱いされるのが気に入らないんだよ。多めに見てあげて、ねっ?」



「ちょっ!///デルタ兄っ!?///」



「…へいへい」














「……随分と懐かしい夢だな」



朝日がめちゃくちゃ窓から差し込んできて、無理やり起こされた…



なんだよ…気持ちよく寝てたのによ…



「…しかしまぁ…懐かしい夢を見たもんだな…」



全部覚えてるわけじゃないけど、確かにあれは昔のやり取りの一部だ。



昔から俺は変わり者と言われていたというか……皆、星遺物星遺物と連呼してた中で世界樹の秘宝を調べてたのが俺だ。



…まぁそりゃぁ…変人扱いされるわな…



「……そういや……今日だったっけ、星選日って」



星選日…



星遺物が所有者を選ぶと言われてる日だ。



15を迎えた子供は星遺物に触れ、所有者として選ばれるか確認する。



選ばれれば、大変名誉である。



以上だ。



もちろん、15を迎えた俺も対象ではあるんだが…



「…さて、飯にして旅の準備するか」



「あら、クリスちゃんっ。おはよう〜」



「おはよう、母さん。ご飯もらえる?」



「はぁ〜い」



ふわふわとした返事をしてくる母さん。



母さんは昔から、どこか抜けているというか…



ふわふわし過ぎて危なっかしい…そんな人だ。



…まぁ、その反面なのか…あまりガツガツ強制される事がないからすごいありがたいんだけど…



「ふんふふ〜ん。あっ、そういえばクリスちゃん。確か今日って星選日じゃなかったっけ、行かないの〜?」



「ん…行かないよー」



「そうなんだ〜、ならゆっくりできるわねぇ」



…ほらな?



選ばれたら名誉な事だから絶対参加してこいって言われる星選に参加しなくても何も言ってこないんだぜ?



「あっ、そうそう。前々から言ってたけど、今日から旅に出るからね」



「えッ!?クリスちゃんが旅ッ!?だっ駄目だよッ危ないよッ!?」



「いやいや…前から言ってたじゃん」



「でもでも〜!」



…まぁ、唯一めんどくさいのがこれだ…



すっごい過保護なんだよなぁ…昔から…



「こらこら、母さん。クリスが自分で決めた事なんだ…暖かく見守ってやるのが親ってもんじゃないかい」



「あっ、父さん。おはよう」



「ぁぁ、おはよう」



「でもお父さんっ、クリスちゃんはまだ15なのにぃ〜」



「…いやいや、もう15じゃないか。1人で自分の道を決めていく年だよ……それに、可愛い子には旅をさせろというじゃないか」



暴走気味な母をたしなめている父…



父さんは俺の味方で、旅に出るのは賛成してくれてる。



父さんも、15歳になった時に旅を始めたらしく、長い旅の末に母さんと出会ったとかなんとか…



それに、世界を旅した方が色んな経験ができると熱く語ってくれたほどだ。



…しかし、母さんに似て父さんもなかなかにめんどくさかったりする…



母さんが駄々をこねるのをよく止めてくれるから凄いありがたいんだけど…



「…父さん……何あれ?」



机の上に山積みになった道具らしきものを指さした。



「ん…?何って、旅の道具だが」



「…誰の?」



「そりゃぁ、もちろんクリスのだ」



「いやいやいや、多いよ。こんなに持ち運べないって」



「クリス…旅を舐めてはいけないよ、いざとなった時にあれが欲しいこれが欲しいってなる時が山程あってだな」



「…経験則は大切だろうけど……流石に遠慮するわ」



ざっと見てもリュック2つ分はあるし…



そんなの大量の荷物を持って旅なんてしてみろ、町を出てすぐに旅終了してしまうわ。



「なッ何故だ?絶対必要になるからッ!」



「いや、量があり過ぎんだって……量が…」



「そうねぇ…こんなたくさんだと、クリスちゃんすっごいムキムキになっちゃうよ〜。ムキムキなのは駄目だよ〜」



「…はぁぁ……まぁ、せっかく用意してもらったし…少しは持ってかせてもらうよ、てか父さんは買い過ぎだから。使わないのは売って、母さんに美味しいもんでも食べさせてあげなよ」



「ぅっ…すっ…すまん…」



「あらあら、クリスチャンたらぁ」



…まぁあれだよ…



天然な両親なんだ…うん…優しいんだけどね?



「そういえば、1人で旅に出るのかい?」



「ん?ぁぁ、そのつもりだけど…」



「ミネルバちゃんやデルタロス君達は一緒に行かないのかいの?」



「…いやいやいやいや、無理だろそれは……」



「だってぇ、いつも一緒にいたじゃない」



「…昔からの付き合いなのはそうだけど…ミネルバは女の子だし、旅はキツいだろ……それに、デルタロスは“星遺物に選ばれた”わけだし」



そう、歳上のデルタロスは去年、星選を行った結果、見事に選ばれた。



もちろん、選ばれたと言っても、お前主人なっ!って名指しされるわけじゃない。



ならどうなるかって話だが…答えは簡単。



地面から抜く事ができる。



地面じゃなくて台座とか、樹に埋められていたりみたいなこともあるらしいが…



まぁ、要するに扱う事ができるのが、星遺物に選ばれたことを表す。



扱えるやつじゃなければ、持ち上げたり移動させる事ができない。



少なくとも、この町にあるものはそうだった。



星遺物の周りの土を掘ろうとしても、一定ライン以上の土は硬過ぎて掘れるもじゃなかったし…



…まぁそんな星遺物を、デルタロスは抜いた。



本当に、スポッと抜いちまったから拍子抜けしたけど…町のみんなは何処か納得していた。



だって、デルタロスの奴は昔から町の皆のために頑張れるすごい奴だしなぁ…



それに優しいだろ?イケメンだろ?実力もあるだろ?



選ばれないなんて、思ってたやつの方が少ないんじゃねえかな、うん。



だから、皆大喜びしたし、あの時はすっごいパーティーが開かれたっけなぁ〜



ただ、みんなの予想に反して今は町の警備をしてるってとこだが…



まぁ俺はまわないと思うけどね、別に星遺物に選ばれたからっていって旅に出なきゃいけないわけじゃないんだし。



「まぁ何で町の警備を率先してやってるかはわからないけど…あいつがやりたいと思ってやってるわけだろうし、それを邪魔するのも悪いし」



「んー…意外とクリスちゃんやミネルバちゃんと一緒にいたいからとかぁ〜?」



「いやいや、ないと思うけどなぁ…」



確かに昔から一緒に行動する事が多かったけど…



「…まぁあいつはあいつなりの考えがあってのことだろうし……俺1人で行くのは変わらないよ」



「そっかぁ〜…」



「…まぁ無理しない程度に、世界には楽しい事は多いが危ないこともたくさんあるからな」



「…了解、母さんと父さんも元気にしててよ?」



「うぅッ…く…クリスちゃんっ…こんなに立派になってっ…」



またも泣き始める母さんを前に、父さんとどうしようかと苦笑いを浮かべていた。



すると、そこにコンコンと扉を叩く音が…



誰か来たかな?



「すまんっクリス、ちょっと出てもらえるか?」



「うん。はいは〜い、どなたですかぁ〜」



母さんの対応を父さんにまかせて、俺は扉を開けると…



「…おはようございます、クリス?」



「……」



「…すまん、クリス…止められなかった…」



扉を開けた先には、申し訳なさそうにこちらを見ている幼馴染みが1名と…



般若の如き笑顔の幼馴染みが1名いた…



…うわぁ……年頃の娘がしちゃ駄目な顔してるよ…


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