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ヨルのカイワ


イタチコーポ


女と男が暗い電球を頭上に

小さいテーブルを挟んで会話している

「どうして、あいつは死んだんだ」

「あなたが殺したんじゃないの」

男は、机を叩いた

「そんなことはない、奴は、私に借金をしていたんだ」

女はにこりを笑い

「だったら保険金だってあるじゃないですか

この前サスペンスで、やくざの男がナメクジに保険金をかけていたのを私は見ましたよ

そう言えばあなた、保険の資料をこの前、取り寄せていたじゃないですか、郵便ポストに、束になって何社も入っていたのを見ましたよ私は、この前この目で

それも関係ないと言うんですか

私は見たんですよ、この目で、見ているんですか

この目で ほら ほら この目で 見てください」

「やめてくれ、気持ち悪いことは、言わないでくれ

それに、目を僕に見せてどうしようと言うんだ

充血しているよ病院でも行ったらどうだ

だから、僕は、この死とは何の関係も無いんだ

分かってくれるか」

「あら、私は最初から分かって、あなたに私の目を見せているんですよ、あなたを魅了するために

それに、あなたは、現に資料を手にしていた

しかし、それに関して、あなたは、一体どういういいわけが存在しているんですか、それを私に説明できたら、保険金の話は、やめにしても良いですよ」

「君は勘違いしている、君は、資料の中身を見たのかね」

「え、見てないわ」

「そうだろ、そうだろう、あの中身は、何を隠そう

ただの動物用の保険資料だよ」

「そんなこと言ったって信用できないわ

それに、良く見る保険会社だったけど

あの会社が動物の保険を作ったなんて話、聞いたことがない、それに、あれは本当に、動物に対する保険の資料だったの、私は見てないから分からないし

第一、家にペットなんて一匹も居ないじゃない

そう、一匹も」

「何を言っているんだ、今資料を持ってくるよ」

「家にペットなんていないわ」

男は席を立つ

女は、テーブルに着いたままだ

「全く困ったわよ、今日の葬式

雨なのに外でやるなんて

それにしたって、あのプードル本当に可愛かったわね

家でも飼いたいぐらい、でも、それにしたって、ねぇー本当に、いやになっちゃう、何考えているのか

本当に理解できないわ、どうして、何で

葬儀所に、犬なんて連れてくるの、本当に理解に苦しむわ、最近の子 最近の子 なんて良く言うけど

あんなおばさん 何考えているの あの歳で

ねえ本当に、そう思うでしょ」

男が戻ってくる

その手には、山ほどの資料

「ねえ、何でそんなに持っているの」

「何が本当にそう思うでしょ なんだ」

男は席に、何とか資料を置いて席に着いた

「コーヒーでも入れましょうか」

男はそれを否定した

「それより何の話だ一人で話していたようだが」

「いいえ、良いわ、それで、これ全部 それなの

と言うか世の中にこんなに、それ についての

資料があるの と言うか会社があるの ねえ」

「ああ、僕もびっくりしたけどね」

「ねえ、このサイの保険って

本当にあるの」

「そんな資料あったかな」

「ねえ見て」

「なんだ、資料を崩さないでくれ」

「この死んだ後の死人保険って なあに」

「ああ、何でも、死んだ後も何があるかも分からない

もしその人が、地獄に行くにしろ極楽に行くにしろ

その道中で事故に合うかも知れない

そのときの保険がなければ危ないじゃないかと言うことらしい

そうだろ、薄暗くて細い道を杖一本で歩くらしい

その途中ではねられたりすれば

一体誰が助けてくれる

もし骨折して、そのまま激痛の中 匍匐前進をするようなことは避けたい そうは思わないかい

そこら辺を補ってくれると言う設定らしい」

「あなた、そんなことが、実際にあるの」

「さあ、分からんさ、しかし、面白いだろ」

「でもね、これいくら位なの」

「ああ、15歳までが百万50歳までが五十万百歳までか

二百五十万らしい」

「不思議な設定ね、それは、どうやって助けるのかしら」

「何でも、お札を燃やして、あの世に、もしもの時は

万全の体制で輸送出来るようになっているらしい」

「そんな嘘くさい物に金を払う奴居るの」

「僕は、払っているよ」

「何で、まさか、あなた貯金で」

「いいや、君が毎月くれるお小遣いをこつこつためて

ようやくだよ二十年かかった」

「ほんとにあきれるわね」

「良いじゃないか、別に、死んだ後のことは僕は分からないんだから保険をかけても」

「それだったら、仏教徒にでもなればいいじゃない」

「いいや、僕は救われることは望んでいない」

「あなたは毎日がつらくないの」

「つらいさ、でも それが当たり前だろ」

「そんなわけ無いじゃない、人は、つらい状況から逃げるために、さらにつらい状況に逃げ込むんじゃない」

「そんな持論初めて聞いたよ」

「ねえ、私があなたを、殴ったとするでしょ」

「それは、僕じゃなきゃいけないのかい」

「たとえよ設定」

「・・・」

「その後に私は、あなたが嫌がることを次々に行い

最後に一番つらい事を見つけ、それから、更に上をめざす でもね、その後 私は、あなたを蹴ったとしても あなたは何にも感じないでしょうね」

「君は、体育会系だからそんなことを言うけどね

じゃあ、肉体という物はただの物であり

腕を切られようとも、そこにあるのは、痛みではなく

生きることに不便になることに対しての絶望かも知れないじゃないか

それならば、肉体的破壊は、時として、脅しの失敗だし、精神的破壊は、時としてまともな思考を越えてしまうんじゃないか だから肉体的訓練は野性的だし

勉強的鍛錬は残酷になる」

「そう言う事じゃないわ、痛みに慣れれば、さらなる痛みにも耐えうるのよ」

「君は、そうやって、窮地に落ち込みたいだけなんじゃないか、平穏なんて望んでいない」

「女は皆、ロマンチストなのよ」

「僕は、理性的だとは思わないが感情的でもない

ただ感情的なまねを真似ることは出来る」

「ねえ、あなたは、何が言いたいの」

「だからつまり、あれは、動物の保険資料で

僕は、ロマンチストでも理知てきでもないと言うことなんだよ」

「分けわかんない」

「君は、つらいことから逃げたいのかい

それは、君に合っていないだけなのかも知れない

単純に、それが何か分かっていないだけなのかも知れないじゃないか」

「それなら、あの世の保険なんてよくわからない物に

何で五十万を金を出したの

それこそ、煙に五十万の費用が、どれくらいかかってるの あなたが、自分で五十万円を燃やした方が

また価値が高そうじゃない」

「君は、本当にそんなことを言っているのかい」

「ええ、金なんて言う物は、何の価値もないわ

しかし、この世の中は、その何の価値もないもので

長い間回っているせいで、すごく太いパイプが作られている、それは、またいで通ることも難しい

何だったら会話の隅々にまで浸透してしまうくらいに」


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