外国が舞台
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王国で大きな暴動が起こってから一か月が過ぎた。王国の、王都の人々は数日間に暴動を起こしていたが、騎士団の努力と王国の対応によって暴動は治まった。今の王都に暮らす人々は、はたから見れば大人しそうにしている。暴動を起こした者たちも同じだった。ただ、人々から笑顔や笑いがめっきり少なくなっていた。王国側は真剣に対応したのは事実だが、誰もがはっきり納得したわけではない。王国側の権力と騎士団の強さを恐れて何もできないだけだったのだ。
当時は、いきなり真実を知らされて感情のままに行動してしまった多くの国民たちだったが、冷静になって馬鹿なことをしたと思うものも多かった。暴動を起こし、王国にたてついたところで、無力な国民にできることなどたかが知れる。国民が支える王国が、どうしようもなく大きな罪を隠したり、大事なことを黙っていたのは許せることではない。だが、相手は国そのものだ。敵として力が大きく強すぎる。一時の怒りに任せても何も変えられるはずがないのだ。結果的に暴動は治まったが、それは多くの人々が強大な存在に負けたことを意味する。王国を糾弾しても何も得られず、罪人から何も取り戻せなかったのだ。人々が笑顔を失うのは当然だ。
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
しかし、その胸に抱く怒りを忘れないものはまだ多かった。暴動が終わっても、怒りが収まらない、仇を隠したことが許せない、王国を変えたい、そういう者たちが集まり結束していたのだ。王国に反旗を翻すために。
(この国を変えてやる! 本当に国民が笑える国にするために!)
その中には、こんなものがいた。とある大きな組織の罪を暴き、王都全土に知らせた少年のようになりたい、と願い憧れる者が。
(声からして少年だったけど、あんな風になりたい! あんな英雄になりたい!)
……その少年が実は復讐を目的に行動していて、決して正義感で動いているわけではないと知らずに憧れている残念なものもいた。
こうして集まった彼らだったのだが、実際に王国に反乱を起こす組織にまで発展することになる。そして、本当に王国と世界を変える戦いを起こしてしまう。だが、それはもう少し先の話になるため、ここからは暴動が起きるきっかけを作った少年の話に変わる。いや、少年と新たに出会った少女の話になる。
話の舞台は王国から帝国に移り変わる。帝国はこの世界に存在する大きな4か国のうちの一つで、王国よりも少し広い領土を持つ大国である。王国と仲が悪く、しかも隣国のためによく戦争をしている相手だ。帝国は大国であるがゆえに内戦を起こすこともよくあり、それを他国に付け込まれ政治的に利用されることも度々あった。そんな国が今度の舞台になった。
帝国の首都・帝都。
帝都。帝国の皇帝の居城が構える首都にして、帝国最大の都市。だが、その治安はあまりいいものではなかった。少なくとも今は。
「はぁ…はぁ……!」
人々が寝静まる夜中に人気のない場所を走り回る少女がいた。その少女は正体を隠すためなのかフードを目元が見えないほど深く被っている。少女は追われている身だった。少女はちょうどよさそうな物陰に隠れると、身をかがめて追ってきた男たちをやり過ごした。
「探せー! 反逆者を探せー!」
「見つけ出して捕まえろ! 帝国のために!」
「…………っ!」
追ってきた男たちは帝国の兵士だった。彼らは鎧を身に着け、手に武器を持っていた。一人の少女を捕まえるにしてはどう見ても過ぎた武装だ。兵士たちの言葉を聞いた少女は激しい怒りを抱いた。
(この私が反逆者だと! 何が帝国のためだ! ふざけるな!)
しかし、その怒りを行動で示すことはできない。できるはずがないのだ。少なくとも今の少女は剣の腕以外に何の力もないのだから。腰に掛けている剣も非常時以外に抜くわけにはいかない。
(この帝国の第一皇女たる私が! この『リオル・ヒルディア』が反逆者扱いとは!)
彼女の名はリオル・ヒルディア。帝国の第一皇女。それが彼女の正体だ。大国の皇女としてのプライドが高く、剣士としての実力もある。兵を率いて何度も戦ったこともあり、多くの兵からも信頼されている。そんな彼女が兵士に追われている理由は国家反逆罪だと言われているが、冤罪だった。
(どうせこれは妹か兄上の差し金だろうが、こんなことで私は終わらない! 必ずこの帝国のためにも内戦を終わらせて見せる! どんな手段を使っても!)
彼女は心の中でそう決意して立ち上がり、暗闇の中に消えていった。この時の彼女はまだ魔法を持っていなかった。ローグ・ナイトという男に出会うまでは。




