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ローグ・ナイト ~復讐者の研究記録~  作者: mimiaizu
第4章 因縁編
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VSトリニティウルフ(中編)

「うああああああっ!」


 ローグの血が舞い、ローグの叫びが響いた。


「ローグ!」

「坊主!」


「ウォルルルルルル!」


 ローグは負傷した。具体的には左腕の手首を食いちぎられたのだ。トリニティウルフの牙がローグに迫った時、ローグは攻撃するよりも攻撃をそらすことにした。体をひねって、右側にうまく避けたのだが、左手首を噛まれてしまったのだ。そして、鋭い牙と強力な顎が手首と腕を切り離した。


「くっ……! うぬぬ……!」 


 ローグは苦痛のあまり顔を歪めるが、うめき声を上げながらも、元凶から目を外さなかった。トリニティウルフは満足げに左手首を食べていた。その様子を見たローグは苦痛と屈辱のあまり、怒りと憎しみで頭がいっぱいになった。


「ゆっ、許さんぞ……! 殺す! 殺してや……」

「ローグーッ!」

「坊主! 腕を見せろ!」

「っ!?」


 初めて【外道魔法】を覚醒させたときのような激情に駆られるローグだったが、自分を心配する声を聞いてハッとした。もう少しで冷静さを失うところだったのだ。【外道魔法】の副作用のせいで。


(危なかった……二人に感謝だな……!)


 感情を爆発する寸前に、勝機を保てたローグは二人に声を掛ける。


「二人とも……! すぐこっちに……! 早く!」


 そう指示するローグ自身も、痛みをこらえながら二人に近づく。トリニティウルフが襲ってくる前に合流するためだ。3人一緒に固まったほうが、さっきのような作戦を立てられずに済むと判断したからだ。ルドガーはローグの考えに気付いたようだ。


「坊主、今だっ!」

「【外道魔法・怠惰】『堕落の壁』!」


 二人が傍まで来た瞬間、ローグは【外道魔法】の結界を張った。その直後、


バアンッ!


「ウォルルルルルッ!?」


 トリニティウルフが勢いよく結界にぶつかった。後一秒でも結界を張るのが遅かったら、間違いなく誰かが仕留められていた。最悪の場合、三人とも命がなかったかもしれない


「はあ、はあ……」

「危ないとこだったな……」

「よく間に合った二人とも……!」


 二人は無事だったが、トリニティウルフは結界が消えるのを待つようだ。ジッとしてこちらを睨んでいる。間違いなく、結界が消えた瞬間に襲いかかってくるだろう。ローグ達も何か対策を施さなくてはならない。


 そのためにも、ローグは失った手首をなんとかする必要がある。止血するにしろ、新しく生やすにしろ。止血すれば痛みは続く。新しく生やすと結構な量の魔力を消耗する。ローグは決めなければならない。この場で必要なのはどっちの選択か。


「ああ、ローグの手首が!」

「坊主、止血を……」

「止血はいい。それより体力の回復を増加させる魔法を掛け続けてくれ」

「何? 何を言って……」

「信じてくれ! 生き残るためだ!」

「分かった。【治癒魔法】『回復強化』!」

「【昇華魔法】『魔法昇華』!」


 ローグが選んだのは後者だった。新たな手首を生やすことにした。ただ、ローグ自身が魔力を大幅に消耗しない方法だった。


 ローグの【昇華魔法】の効果でルドガーの【治癒魔法】を強化させる。【治癒魔法】による回復は肉体の自然治癒能力を増強させるものだ。これにあらゆるものを高める効果を持つ【昇華魔法】を掛ければ、失った部位を再生させるほどの効果を発揮する。つまり、


「……うそ」

「し、信じられん……!」


 ローグの手首は元通りになるということだ。


「ありがとう、ルドガーさん。後はあいつを倒すだけだ!」


 体が全快になったローグの目には、トリニティウルフに対する殺意が宿っていた。


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