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ローグ・ナイト ~復讐者の研究記録~  作者: mimiaizu
第0章 豹変編
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元軍人と町人達

 ローが後ろを振り返ると一人の男が立っていた。壮年くらいのその男は、忌々し気にローに声をかけてきた。


「……よく戻ってきやがったなローよ。で、これはどういうことだ? こいつらをどうした?」

「俺が彼らに仕返しをしました。そして、次はあんただ、親方」

「仕返しだと? 俺にもか? お前を雇ってやったのに?」

「ああ、あんたが連中のストレス発散のためだけに俺を雇ったってことは最後に戦ったそこの馬鹿から以前聞いてたからな」


それは真実だ。ローが働いていた頃に聞かされたのだ。【剛力魔法】の使い手の馬鹿に。


「ちっ、秘密だって言ったんだがな、あの馬鹿め。」

「仕事場での俺の境遇はあんたが元凶だ。覚悟しなよ、今の俺がどういうやつか分かるんだろ? さっきまで指をくわえて見てたんだから。自分の部下を犠牲にしてな」

「見抜いてたのか。そうだ、お前を確実に仕留めるためだ。指をくわえてたわけじゃねえ」


この親方こそ、ローが仕事場でいじめられるようにした男だった。しかも、ローの変化に気付いた彼はローの力を知るために、ローと部下の戦いを観察していたのだ。元軍人だけあって戦いには詳しいのだろう。


「連中のストレス発散のためだけに俺を雇ったくせに、そんな連中まで捨て駒にしたのは見捨てるのと同じだぞ? 最低野郎」

「仕事がはかどると思ってお前を雇ったんだが失敗するとはな。こんなヤバイ奴になって戻ってくるとは。だが、あいつらのおかげでお前の【雷魔法】の手の内はある程度見切った! 俺の【鉱物魔法】でお前を仕留める!」

「責任を取るつもりか? やってみな!」


ローと親方の戦いが始まった。ローの攻撃は同僚たちに向けたものと同じものが放たれた。


ビッビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリ!!


「無駄だ! 見切ったと言ったはずだ!」

「そうかい!」

(【鉱物魔法】で体の表面を雷を通さない鉱物で覆ったか、まあ親方は元軍人だしな。硬い守りがあると考えていいんだろう。ならば、カマキリとの戦いが活かせるな)

「おっと」


ドカン!


親方の拳をギリギリで避けた。落ち着いているローでも冷や汗が出た。


「ちっはずしたか。だがお前の動きも読めてきたぞ! あきらめろ!」

(ここで俺の動きを読まれるのはまずいな)


 親方は不格好な鎧を着ているような姿でローに襲い掛かる。ローはカマキリの魔物を仕留めた技を放つ。回転する光の輪だ。そして、右手から光の剣を形成する。


「な!? これは、削っているだと!? こんな使い方が【雷魔法】に!?」

「まだだ!」

「今度は剣か! だがそんなものこの鎧には……」

「こいつも削るんだ!」


バキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキ!!


「な!? こんな戦い方が!? ぐふ!?」

「俺の手の内を見切っただと? 俺はそこまで甘くはないよ」


スパン


「うっ! ぐああああああああああああああああああ!」


ローの光の輪と光の剣が鉱物の鎧を削り切り、親方を切り刻んだ。そして、傷口からさらに追い打ちをかける。


ビッビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリ!!


「うわああああああああああああああああああああああ!!」

「よその国の元軍人か。それでも年にはかなわないよ、親方」

(いや、そんな年で戦えるなんて流石は元軍人だ、と言うべきか。俺の魔法でチェーンソーを再現できるなんて、あの頃は思ってもなかったな……)


数時間後。

 

 親方を気絶させる前に、少し話をしたが特に気にすることなく村に向かった。村には復讐対象がまだ大勢いるのだ。


「次は誰から始めようかな?」





 親方を気絶させた後、ローは自分の家に向かった。ただし、家に帰るのではなく、その隣の家に用があったのだ。理由はもちろん、復讐だ。


数分後。


「もう止めてえええええええええええええええ!」


ローが今いるのは自宅ではない。自宅の隣の家だ。隣の家に住む女性が悲鳴を上げているのは、復讐の対象としてローに家を破壊されているからである。ついでにボロボロの姿で動きがフラフラなのは、出会ったローに罵声を浴びせた挙句、【風魔法】をぶつけようとして失敗し、ローに反撃された結果である。


「あんた! いっいや、ロー君! 今までしてきたことは謝るからもうやめて!」

「謝っても無駄だ。ていうか、よくさっきあんなことを仕掛けてきてそんなこと言えるな、隣の家のおばさん?」

「だって、だって……」


情けない声で俯くこの女性は、ローの幼馴染の女の子の母親だ。この女性は女の子のように嘲るだけじゃなく、ローの家にゴミを置いたり、風魔法で家の窓を割ったりしていた。死んだ両親とは親しかったが、両親が死んでローが魔法なしとしてみなされた後はそういう風に接していた。


「ロー君は魔法なし……だった……そんな奴の味方したら……私達だって……」

「だからあんなことしてきただと? 理由にならないな。人の家を壊しておいて。報いを受けるんだな」


ビッビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリ!!


「ひいっ ごめんなさ……ああっ! いっ家がああああああああああああああ!」


ローの家は住めなくなるほど壊されていた。壊され方からして、犯人は分っていた。その犯人は今、ボロボロの体で焼き尽くされた自身の家の前で放心していた。


「「「「「なんだ!? 何が起こったんだ!?」」」」」

「ほう、もう来たのか。早くて助かる」



数分後。


ビッビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリ!!


「ぐあああああああああ!」

「うあああああああああ!」

「うわああああああああ!」

「やめろおおおおおおお!」

「ゆるしてくれえええええ!」


 隣の家を焼き尽くした時に使った魔法の衝撃が気になって、村中の人間が集まってきた。ローにとって探す手間が省けたようなものだ。村人全員が復讐対象のようなものなのだから。


 彼らの大半はローを見た途端に、門番や同僚たちと同じ反応だったが、今度はローから攻撃してきた。もう、あいさつする手間は省くようにしたのだ、めんどくさいから。


「よくも俺に何も売ってくれなかったな商人共。おかげでおこぼれを狙う日々で大変だったんだぞ」

「ぐっ……がはっ、それは…」


 ローは、意識がはっきりしている者に声をかけた。


「お前らの店も商品も焼き尽くしてやるから覚悟しろよ」

「ッ!! そっそんな!? まっ待ってくれ! 今まで、っぐは!?」

「何を言っても無駄だ。これは復讐なんだから」

 

 謝罪の言葉など意味はなかった。ローは商人たちの店に向かう。

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