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ローグ・ナイト ~復讐者の研究記録~  作者: mimiaizu
第1章 悪童編
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どこにいる?

 魔法協会。王国の所有する魔法の最高研究機関だ。魔法に関する研究成果を毎年発表することで、王国の繁栄の貢献している。しかし、魔法協会には悪い噂もある。魔法の研究のために、死者を出すほどの非人道的な魔法実験を繰り返してるというものだった。魔法協会にスカウトされたものの中には、行方不明者が多数いるからだ。もし本当ならとんでもない不祥事だが、ローグはその噂を聞いても驚きはしなかった。


「科学でも魔法でも発展のためには犠牲はつきものだ。そこはこの時代でも変わらないってことだ。最も、露骨に必要のない犠牲は許されはしないがな。その辺の線引きは魔法協会はどうかな?」


 ローグも前世では魔法の研究者、『ナイトウ・ログ』だった。研究する側として犠牲を出すことは仕方が無いとも考えているのだ。実際、『ナイトウ・ログ』の研究のために犠牲が出たこともあった。ローグにとっては苦い思い出だ。そのローグは今、魔法協会の前までやってきた。


「ほう、ここが魔法協会か。立派な要塞って感じだな」


 魔法協会の外見は、まるで要塞のようだった。門の前は多数の魔術が仕掛けられているが、ローグの見立てでは侵入者や不審者対策のようで、警備もかなり厳重なようだ。ローグは期待が持てたが、同時に不安にもなった。


(これだけ警備に厳重だということはよほどの秘密があるということだ。過去の世界のことも何か関係あればいいんだが、今の俺でも簡単に入り込めそうにないな。誰にも気づかれずに忍び込むのは無理だと考えたほうがいいだろう)


 ローグの見立てでは、仕掛けられた魔術は門の前だけではなく、魔法協会の至る所にあるようだった。ローグの実力なら突破できなくはないが、魔法協会側の実力者の強さに関しては未知数なため、下手なまねはできない。穏便に入れればいいのだが、そんな都合のいい方法は今のローグには無い。


(何か抜け道が無いか調べてみるか? ……いや待てよ、『あの女』の関係者だと言えば少なくとも『あの女』には会えるんじゃないか?)


 ローグは魔法協会に入り込む手段を考える中で、『あの女』の関係者としてならそれが可能だと思いついたが、それも難しいことに気付いた。


(ダメだ。『あの女』が応じる保証はない。それ以前に魔法協会自体が無関係者の立ち入りを徹底して禁止してるしな。そこは旧世界の魔法研究所とかと通じてるな、悪い噂があることも含めて。そうなると、入り込むよりも前に『あの女』に会ってみることから始めるか)


 そう思ったローグは、魔法協会から離れていった。復讐対象の『あの女』を探すことにしたのだ。魔法協会のような組織に関わるのは、得策ではない。前世の記憶が無い彼だったら、スカウトしてもらうという考えもあったが、今のローグはそこまで浅はかではない。




「この辺でいいか。あとは姿を変えてっと」


 魔法協会から離れた後、ローグは王都南部で人気のない場所を探し出し、そこで誰もいないことを確認して、【外道魔法・嫉妬】『偽変身』で『ロー・ライト』の姿になり、【外道魔法・傲慢】『呪い探し』を使った。『あの女』を探し出すためだったが、わざわざこんな場所に来て姿を変えたのは魔法協会に気付かれる可能性を少しでもなくすためだった。


(『呪い探し』は広い範囲で微弱な魔力を流す。感知タイプの魔法が、魔法協会側にあるなら気付かれるのはまず間違いないだろう。『ロー・ライト』なら顔が割れても仕方ないし、人の目につくところでこんな魔法を使うわけにはいかない。『あの女』を見つけたらすぐにここから移動しよう…………ん?)


 『呪い探し』の範囲が魔法協会まで広がっていったが、まだ感知できない。更に範囲を広げて魔法協会の敷地全てに及んでも感知されなかった。


(魔法協会にいない? 出かけてるのか? そうだとしたら、この南部から出てることになるが、魔法協会が新人にそこまで許すか? ……まさか……)


 ローグは魔法協会の悪い噂を思い出し、復讐を望むものとして、少し悪い予想をした。それは復讐の対象が再会する前に死亡するか、精神崩壊などになることだった。そうなってしまったら、復讐を成し遂げることができない。いまだに感知できないことにローグは苛立った。今、把握できていることは、魔法協会の魔術の大体の数と場所だけだ。そして、どれだけの人がいるかだ。


(ちっ、もう少し範囲を広げるか。それで見つかってくれればいいんだがな。これ以上続けたら魔法協会が動き出すかもしれないが……)


 ローグはより一層範囲を広げる。その結果、王都の外にまで範囲が広がっていった。さすがにこれ以上はマズいだろうと思って止めようとした時、やっと反応を感知できた。


「ふう、やっとか見つかったよ。すぐに行くとするか」


 ローグはそのままの姿で向かった。思ったより時間がかかったため、すぐにその場を離れる必要があったからだ。魔法協会の人間にも興味があったローグだが、復讐の邪魔をされるわけにはいかないのだ。それに、今後のことを考えるなら『ロー・ライト』と『ローグ・ナイト』の姿を簡単に知られるわけにもいかない。そんなことを考えながらローグは感知された場所に急いで向かった。


「それにしても遠いな。何かあるのか?」



数時間後。


 感知された場所までやってきたローグは己の目を疑った。そこは王都ではなく、王都の外に作られたみすぼらしい町だった。はっきり言って、ローグの故郷の田舎よりも貧しそうに見えた。


「何だここは!? こんなスラムみたいな所にいるってのか!?」

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