歴史
大図書館の前で、ローグはため息をついた。
「はあ~、失敗したな~、俺としたことが……」
ローグは図書館から出てきた……………………………………のではなく追い出された。何故なら、肝心の歴史の調査でも大声で騒ぎだしたからだ。
数時間前の図書館で、重要そうな本を見て、そのたびに声を荒げるたびに職員に注意されたのだ。そして終いには……
「いい加減にしなさい! 一体なんなんですかあなたは!? もう来ないでください!」
……と言われてしまった。そのまま職員と口喧嘩になって、図書館から出て行ったのだが、そのことでローグは少し落ち込んでいた。さすがに大人気が無いと、今更思ったのだ。恥ずかしくもなった。この後、ローグは借りてる宿屋に戻って、今日知ったことについて考えをまとめた。
「しかし、あれはひどかったな。あんなことしか書かれてないとは」
間違った魔法の知識を記した書物よりはマシだろうと思っていたローグだったが、歴史の書物にもろくなことが書かれていないというか、大事なことがあまり書かれていなかった。
歴史とは、偉人の活躍によって大きく変動するものだ。にもかかわらず、大図書館の本にはそういった偉人の名前がほとんど無かった。あれでは具体的なことが分からないし、読むほうも面白いとは思えない。もちろん、旧世界のことも何も分からなかった。大図書館にはもはや期待できない。
「国が秘密にしてるのか? あれでは大体のことしか分からないじゃないか。何が大図書館だよ、まったく……」
大図書館で分かった歴史では、世界に大きな国が4か国あり、その4か国が何かしらのきっかけで戦争を起こし領土の奪い合いをするということだ。一年ほど前に、王国が帝国との戦争に勝利したそうだが、そんな話も村では聞いたこともない。
その4か国の中で、ローグのいる王国は魔法が絶対の国だ。一年前に戦争をしていた帝国や、共和国、公国はそうでもないようだが、他国のことはそれ以上分らない。ただ、王国はそういった国々を見下しているような感じだ。そのせいか、王国は他国との関係は最悪で、孤立しており、いつも戦争を吹っ掛ける側だった。孤立しているのにもかかわらず、これまでの戦争に勝利し続けているようだが、ローグならその理由は容易に想像できる。
「魔法の力を持つ者が王国に集中しているってことだよな、他国を圧倒するほどに。この国には何かあるな……」
他国に比べて、9割以上の人間が魔法持ちになれる王国についてもう少し知る必要がある。そのためにはこの国の魔法に関する研究機関か、国の最高権力者に聞くしかない。そう考えたローグは、次の目的地を決めた。そこは……
「魔法協会。王都の南部にある魔法の研究機関。そこなら大図書館よりもましな情報があるだろうな。何より怪しいし……」
前世の職業が魔法の研究者だったローグとしては、非常に興味を持っていた場所だった。悪い噂も聞いていたが、それも含めても行く価値がありそうだと思っていたのだ。興味深くもある。そして、そこにはローグの復讐の対象もいる。
「そういえば『あの女』もそこの職員か研究者か、もしくは実験体かな? どっちにしろ会えるから楽しみにしなきゃな」




