ローグの作戦
「ここに居る皆が余の言葉を絵空事のようにとらえることだろう。かつての余も同じことを思ったかもしれない。だが、今が絶好の機会なのだ。それはそこにいる少年が証明している」
皇帝は顔をローグに向ける。その顔にある目は期待すら込められていた。
「この少年は元は王国の人間。だが、王国に反旗を翻して魔法協会という組織を壊滅させた。それだけでなく、王国特有の『魔法』なる力が禁忌の技術という事実を王都の民に証明し暴動を起こし、反王国組織が立ち上がるきっかけを作ってくれた。つまり、今の王国は一人の少年によって削られ、その少年が我が国の味方なのだ。これを絶好の機会と言わずして何という?」
皇帝の言葉はもっともだった。間者の報告によってローグの功績は事実だと証明されている。しかも、例の魔法協会の有力人物たちを葬り、王都のど真ん中で強力な魔物とも戦ったという報告さえ上がっているのだ。多くの者がローグの価値を納得できる。しかし、それだけでは皇帝の打倒王国宣言にまで納得できない。
「皇帝陛下、彼がどれだけ心強いか理解できますが、それだけで王国に勝てる見込みがあるとは思えません。他に具体的に王国に勝てる切り札がなければ我々は……」
一人の貴族が言いかけて、止まった。その先は『王国に勝てない』だ。他の者たちも分かるようで静まり返ってしまう。だが、
「そのことなんだが、俺から説明させてもらえますか?」
「!」
話題に上がったローグが立ち上がって、皇帝の代わりに『王国に勝てる切り札』について語り始めた。
◇
「………………以上が俺が提示する切り札です。いかがですか?」
「「「「「………………っ!!??」」」」」
ローグの『切り札』の説明を聞いた会議の一同は度肝を抜かれた。ほとんどの者たちが驚いて騒ぎだしてしまった。それは事前に聞かされていなかったリオルもその一人だ。
「ロ、ローグ! そんなことが実現できるというのか!?」
「ああ、そうだが……?」
何故か驚いてローグに詰め寄ってくるリオル。そんな彼女をローグは不思議そうに見る。
「それなら私に先に教えてくれてもいいじゃないか! 共に一緒に戦った仲なのに!」
「え? リオさん聞いてなかったの? 皇帝陛下には先に聞いてもらってたんだけどな」
「ええ? ち、父上?」
驚いて父親である皇帝を振り返ると、苦笑いで答えてもらった。
「ああ、すまんな。まだ教えていなかったわい。余からリオルに話すと言っておったというのに」
「そんな~……」
ジト目で実の父親を睨むリオルと実の娘から気まずそうに顔を背ける皇帝。だが、いつまでもそんな呑気にしていられない。
「皇帝陛下に皆さん。俺の話を続行するので聞いてくださいませんか?」
「お、おお、そうだな。皆も落ち着いてくれ。これから具体的な作戦を話し合おうではないか」
ローグの言う通りである。この後、早速ローグの立案した計画が実行されることとなった。




