六日目3
「き、急に何を言いだすんだ!? 私は、ただ……」
リオルはローグの言い出した言葉に驚き困惑する。だが、ローグは続けて語りだす。
「ただ、何だ? 協力してほしいという意図くらいわかるさ。昨日の動く死体の襲撃事件で捕まえた男から事情聴取して、クロズクのリーダーと王国が繋がっていた。そこまで聞いてしまったら、王国側に帝国の機密情報が漏れていた可能性があることくらい俺なら分かる。昨日の緊急会議はその対策だろ? その翌日に俺達に皇族用の食堂に誘うという待遇のグレードがアップする。何か頼みごとがあるってことは分かる。それは俺達から王国の情報を得ることと戦力になってほしいということだ。違うか?」
「…………」
ローグの語ったことは事実だ。リオルはローグに、「戦争するから協力してほしい」と頼むことになっていた。正確には、『ローグを戦争に協力させる』ということだった。
会議で、王国との戦争で確実に勝利するためには、魔法に対抗できる大きな手段が必要だという話になった。その役目を担うはずだったのがクロズクだったのだが、その組織は今回の件で裏切った末に壊滅してしまった。捕らえたリーダー格のウルクスは処刑は確定しているため、もはや使い物にならない。
そこで目をつけられたのが、王国で魔法協会を潰して大問題を起こし、追われる身となって帝国に逃げ込んだ末に、帝国の内乱を終わらせた二人の魔法使いの存在だ。会議にいる貴族の眼からすれば、その二人は帝国に亡命するつもりでいるし、第一皇女とも信頼関係を築いているというから都合がいい存在だった。態度に少し問題があるが、かかわりが深いリオルが対処すればいいと考えられた。
もちろん、ローグ・ナイトとミーラ・リラだ。
(協力させるためには手段を選ぶなだと? 亡命を許してやるだの爵位をエサにするだのと、どいつもこいつも何を言っているんだ? 一応、部外者で借りのある相手なんだぞ! そんな態度で出ていいはずがない! だから私が柄でもないのに仲介役を買って出たんだ!)
仲介役にサーラも買って出たが、この件だけはリオルが引かなかった。こういうことは気乗りがしないリオルだったが、論点の二人と深いかかわりのあるのはリオルであり、彼女が話すほうが筋が通ると思ったのだ。ただ、二人に祖国と戦えということになるるのがどこか気が引けた。だから言いづらくもあった。
(……それなのに、見透かされていたなんてな)
ローグに見透かされたことに大きなショックを受けたリオルだった。否定できないし、ここで会話を中断するわけにもいかない。それならば事実を全て言ってしまうだけだ。
「その通りだ。会議でお前たちの協力が必要不可欠ということになった。本当は私のほうからお前たちに頼み込むはずだったんだが……いいのか?」
これで二時間おきの投稿は終わりです。明日から不定期更新に戻ります。




