五日目4
突然、一人の若い男がリオルたちの前に現れた。見た目はクロズクの服装でそれ以外はこれといった特徴が無さそうな感じだ。リオルは警戒して剣を構える。
「……何だ貴様は。それはどういう意味だ」
「言葉通りですよ。何しろ、牢屋に収監されたのはこの私だったのですからね」
「!」
「リオル様、こいつです! こいつが最後の生き残りだった男です!」
事実だった。目の前の男こそ、使いを出して問い質そうという話になった男だった。そんな奴が何故か、牢屋を出てここに居る。また異常事態だ。
「貴様、どうやって牢屋から抜け出した! 後ろにいる連中も貴様の仕業か!?」
「その通りですよ。万が一のことを考えて彼らの体に仕込んでいたのですよ。もっとも、使うのが思ったよりも早かったのは誤算でしたが」
「貴様……っ!」
リオルの眼に怒りが宿る。サーファをはじめとする部下たちも同じだ。人の、しかも仲間の死体を利用して弄び、新たな混乱を引き起こそうとしているのだ。人として、武人として許すことなどできない。
「クロズクの下種どもめ! まさか、こんなおぞましいことができるとはな! 獣以下の外道の所業だ! 魔法に対抗するためにこんな技術を作ったというのか! 恥を知れ!」
「獣以下の外道の所業とは失敬な。彼らもこうなることを承知したのですからいいでしょう」
「狂人どもが!」
リオルたちに軽蔑の眼差しを向けられても、男は余裕で笑って見せる。その態度が余計にリオルたちを挑発するばかりだ。
「リオル殿下、あなたを含む帝国の重要人物は死んでいただきます。もちろん皇帝陛下と妹君もね」
「させてたまるか! これ以上好きにはさせん!」
「どうでしょうかね。散々追い回されたあなたが言っても心に響きませんねえ。だからもう死んでください」
男はリオルを冷たい目で見据え、手を上げて合図を始めようとするが、その前にローグがそれを遮った。魔法で
「いや、お前が死ねよ。【外道魔法・憤怒】『理不尽の雷』」
ビリビリビリビリビリビリビリビリッ!!
「あべええええええええええ!?」
「「「「「っ!?」」」」」
ドサッ
ローグの魔法をまともに浴びた男は、そのまま倒れた。気を失っただけで死んではいないが無事では済まなかった。
「ロ、ローグ……?」
「ん? いや、聞くに堪えんことをほざくから黙ってもらったんだけど、別にいいだろ?」
「え? あ、ああ。そ、そうだな、よくやってくれた。助かった……」
「あいつらを倒さないのか」
「そ、そうだ! 皆、奴らを葬るぞ!」
「「「「「お、おおおおお!」」」」」
突然の行動に、呆気にとられたリオルだったが、すぐに持ち直して部下たちに号令をかけた。死人たちとの戦いが再開した。




