五日目2
バタンッ!
「リオル様はおられますか!?」
突然、一人の兵士が部屋に入ってきた。その兵士は血相を変えてリオルを探している様子だった。
「騒がしいな、どうした?」
「リオル様、ここにおられましたか! 実は大変なことが起きました!」
「何? 今度は何だ! 説明しろ!」
「大変なこと」という言葉にリオルと同席したローグとミーラにも緊張が走る。つい先日まで追われる身だったり怪物と戦ったりしているのだ。切り替えが早くなっていた。
だが、次の言葉を聞いて、流石のリオルも困惑した。
「し、死んだはずのクロズク達の遺体が動き出して暴れているのです!」
「な、何い!?」
(死体が動いて暴れている? それって……)
「何だそれは? ふざけるな!」
「ほ、本当なんです! 私もこの目で見たんです!」
兵士に嘘を言っている様子はない。リオルにもそれが分かっているが、いくらなんでも信じられないのだろう。ここに居てもどうしようもないと思ったローグは先を進めたほうがいいと進言する。
「ここに居ても何も始まらない。現場に向かおう。場所は?」
「やつらの遺体を置いていた西の地下室です!」
帝城・西側の地下室。
クロズクの構成員たちの遺体が一時的に置かれた地下室。彼らの遺体を調べて、物的証拠を得ようとしていた兵士たちの恐怖の叫びがこだましていた。
「「「うわああああああ! くるなああああああ!」」」
勇敢な兵士であるはずの彼らが叫んでしまうのも無理はない。死んだ者たちが血まみれで、冷たい体で、剣や槍が刺さったまま、兵士たちに襲い掛かってくるのだから。
「な、何なんだよおおおおおお!」
「何で死んだ奴らが動き出すんだ! 生き返ったとでもいうのか!」
「頭に槍が刺さってんだぞ! あり得ねえだろ!」
「ふざけんじゃねえよ! 化け物かよ!」
兵士たちは錯乱してしまっていた。こんな異常事態の上に、仲間の兵士を殺されてしまったのだ。恐怖と困惑、怒りと憎しみ、正気を保てなくて当然だ。
「何だよこの力!? 人間の力じゃねえぞ!」
「戦い方が雑になってるけど、ありえない怪力を使いやがる!」
「くそ! どうすりゃいいんだ!」
「応援はまだか!」
しかし、それでも彼らは兵士なのだ。突然現れた脅威に尻尾を巻いて逃げ出すわけにはいかなかった。すでにこのことを伝えるために、一人が離脱している。この状況を皇帝から騎士団に知らせなければならなかったからだ。
「応援が来るまで持ちこたえるんだ!」
「「「うおおおおおお!」」」




