四日目4
「ローグ・ナイトのことは後回しでいいな。では会議を始めようか」
サーラと公爵のやり取りが終わったのを見計らって、皇帝が改めて宣言する。
「まず、余の病の正体について説明しよう」
「それは私の口からお話しさせていただきます」
今度はリオルが口を開いた。今に至るまでの経緯を彼女が説明する。それはリオル自身の希望もあるため、事前に決まっていた。
「皇帝陛下の病のきっかけは、我が兄アゼルによる…………」
リオルの説明は一時間弱ほど続いた。何故、これまでの経緯を説明するだけで一時間もかかるのかというと、リオルの説明だと大雑把だったり細かいところは省いたりするので、聞く側は分かりにくく感じて必ず質問が入るのだ。この会議でも質問の数が多くてそれだけかかった。皇帝もサーラもそれは分かっていたから、自分たちが行うつもりでいたのだが、冤罪を掛けられて逃亡生活までさせられた経験をしたリオルがかたくなに自分がすると譲らなかった。
……質問の答弁はリオルだけでなくサーラも加わったのは当然だった。サーラの説明のほうが分かりやすいのだ。誰もが説明役にリオルを選んだ皇帝を恨んだ。
「……というわけです。皆、ご理解いただけましたか?」
「「「「「……………………」」」」」
聞いていた側は30分前から大体のことは理解していたため、質問を飛ばしていた時のような熱はすでに冷めていた。
ただし、それは皇帝の言葉で一変する。
「では、大罪を犯してアゼルの処遇を決めるとしよう」
「「「「「…………っ!」」」」」
皇帝の重みを込めたその言葉に、二人の娘と多くの重臣たちが気を引き締めた。遂に本題に入ることになったからだ。この会議で一番重要と言ってもいい議題だ。何しろ、第一皇子の罪を裁くのだ。慎重かつ正確にせねばならない。
「皆の中で知る者もいることだろうが、余は直接アゼルに会って話をしてみたのだ」
「陛下! それは……」
「今のあやつをこの目で見極めるためだ。皇帝として、親として当然の義務だ。異論は認めん」
一人の伯爵が驚きと抗議の声を出すが、皇帝に睨まれて口をつぐんだ。皇帝に反論できるものはかなり限られる。伯爵程度の立場ではそれができない。
「皆、アゼルに対して深い怒りと失望を感じざるを得ないだろう。ただ、此度の件でアゼルは皮肉にも精神的に成長した。罪の意識と己のふがいなさを痛感し、望むなら喜んで首を差し出す覚悟ができていたのだ。今の自分にできる最大限の償いをしたいそうだ」
皇帝の言うアゼルの成長。その事実に誰もが衝撃を受けた。てっきり土下座して命乞いをしていたと思っていただけに信じられない思いだった。アゼルの改心を見た皇帝の娘と一人の騎士団長を除いては。
「余は、アゼルに下す罰をすでに決めておる。それは……」




