VSゲテ
ゲテとケリーの前にいるのは村で魔法なしと呼ばれた『ロー・ライト』だった。この状況では、レントを倒したのは間違いなくローだと判断できるが、昔のローを知ってる二人にとってはとても受け入れがたい事実だった。『ロー・ライト』が『ローグ・ナイト』として生まれ変わったことすら知らないならば無理もないだろう。
「どうした? せっかく会いに来てやったのにだんまりか?」
「「…………」」
『ロー・ライト』の姿をしたローグは笑いながら声をかけてみた。二人はそのままローグを睨みながら沈黙している。
「あれ? もしかして~、レントをぶっ飛ばしたことを気にしてるのか? 怖がらせてごめんね~(笑)」
「「ッ!」」
ローグは二人が一番気になってることを口にした、つまり核心を突いたのだ。そして二人の反応はというと……。
「やっぱり、お前がレントにあんなことを!」
「許さねえぞ! 魔法なしのくせにどんな魔道具を使ったんだ!?」
「くっくっく、魔道具を使っただって? いやいや違うよ~、俺の魔法でレントはぶっ飛ばされたんだよ~」
「「何!?」」
ローグはあっさり種明かしをしてみた。それを聞いた二人の様子を見て見たかったからだ。その結果は、ローグの望んだものだった。
「嘘だ! でたらめだ! 魔法なしだったお前が魔法を使ったなんて!」
「そうだ! テメエは魔法が使えない役立たずの出来損ないだ! そうじゃなけりゃいけないんだ!」
「ぷっ、あははは! まだ言ってるよ。 現実が見えてないねー、馬鹿じゃないの?」
「「な・ん・だ・とー!」」
ローグはあまりにも考えた通りの展開になったので(二人の声が重なるのは除く)、ついに笑いが込み上げてしまった。というよりも、この二人の馬鹿さ加減は予想を超えていた。
「もう我慢できねえ! 俺の【恐怖魔法】でもう一度、いや何度でも震えさせてやる!」
「おう! やっちまえゲテ!」
「震えろ! 【恐怖魔法】『黒いゆりかご』!」
ゲテの手から黒い霧が発生した。ゲテの魔法が発動したのだ。この黒い霧の中に入ってしまうとつらい記憶が鮮明に思い出されてしまうのだ。ローグはその黒い霧に包まれてしまったが、慌てることなくローグも魔法を放つ。
(相変わらず陰湿な魔法だな。耐えきるのもいいけど俺の魔法を見せてもいいか。俺自身も魔法を試したいしな、【外道魔法・暴食】『腹外消化』)
「はん! ざまあみろ! 後はこれだけじゃ済まねえけどな!」
「恐怖で震え切ったテメエをたっぷり蹴りつぶしてやるぜ! 殺すのはその後……って、何だ? あの光は!?」
「お、俺の『黒いゆりかご』が消えていく!?」
二人が見たのは、『ロー・ライト』が赤紫色の光を放ち、黒い霧を照らすように消していく姿だった。二人は自分の見ているものが信じられなかった。これは完全に魔法だ。レントがいなくても分かるほどに。そして、黒い霧が完全に消え去った後、ローグは言った。
「ゲテ、次は俺の番だ」
(【昇華魔法】『身体昇華・脚力・腕力』っと!)
「え? な…(ドガッ!!)ぐは!(ドサッ)」
「なっ、ゲテ!」
ローグはまるで一瞬でゲテの前に来て、その勢いもつけてゲテの腹を殴った。ゲテはそのまま気絶してしまった。
次の更新は明日です。
 




