三日目6
遂に皇帝が目を覚ました。「余はいったい……」と口にして起き上がろうとした。それを見たリオルは感激して行動で示した。
「父上~~!」
「むおっ!? リオル!? ど、どうしたというのだ。お前が泣き出すなんて……?」
「う、うわああああああん!」
目を覚ました皇帝に泣きながら抱き着くリオル。ローグとミーラはもちろん、抱き着かれた皇帝も驚いた。皇帝は起きたとたんに娘が泣き出したのだから驚くのは当然だ。ローグとミーラの場合は、こんなリオルを始めて見たから驚いたのだ。
「ち、父上が、目を覚ましたのです! 泣くなという方が無理ではないですか!?」
「そ、そうか。余はそんなに長く眠っておったのか」
「はい、クロズクのことで一度起きたと聞いておりましたが、それ以降も眠っていると聞いてます」
「なるほどのう。お前が泣くのも無理はないか。いやすまん。どうやら、長く心配かけて様だな。すまなかった」
皇帝はリオルの頭をなでる。それは一見すると優しそうな父親に見えた。今のリオルも幼子のように見えなくもない。普段の強気なイメージが嘘のようだ。
「そんな、父上のせいではありません。悪いのは、愚かな反逆者クロズク共のせいです。あいつらが父上に毒を盛らなければ……!」
「さようか。あやつらのことは余の責任でもあるが……ところで、そこの二人は何者だ? 特に少年のほうはただ者ではないようだが……」
「あ、その、彼は……」
ローグのことを振られリオルは皇帝から離れる。そして、涙をぬぐいながら、リオルはローグ達のことをどう説明すればいいか考える。
(……どう説明すればよいのだろう?)
この二人は出自も経歴もイレギュラーの極みと言ってもいい人物だ。敵国を裏切って祖国に密入国し、祖国で自分と戦って勝利、その後は内乱を収めるのに貢献した人物だ。戦闘系のリオルだと説明が難しい。だからと言って紹介しないわけにもいかない。
「……父上、どうか落ち着いて聞いてください。この者たちは……え~と……」
リオルが何とかうまく説明しようとする。だがここで、ローグが片膝をついて頭を下げて礼の姿勢を取った。少し遅れてミーラもそれに倣った。
「お初にお目に掛かります、皇帝陛下。私はローグ・ナイト。こっちはミーラ・リラ。帝国に亡命する元王国の者です」
「そ、その通りです!」
「……ほう」
「――え? え? ローグ? ミーラも? 何で?」
二人の突然の行動にリオルは困惑を通り越して混乱した。特にローグがこんな姿勢を取るとは思ってっもいなかったのだ。リオルが混乱している間にも、ローグの自己紹介が続く。




