三日目3
リオルは悲しそうにローグの顔を見つめる。それに対してローグは、心の中で言葉を選ぶ。不用意なことは言えない。
(これは、面倒な相談を持ち掛けられたもんだな)
そう思ってしまうのも無理はない。もしも、ここでリオルの相談を突っぱねようものなら、これから先、彼女の信用を得なくなるかもしれない。ローグの目的のためにもリオルとの関係は重要なのだ。
だからといって、リオルの望むような答えをだしてアゼルの助命に成功でもすれば、アゼルのことをよく思わない兵士や家臣たちに睨まれるだろう。そういう者は多い。彼らを通してリオルの関係に支障をきたすかもんしれない。
(……どっちにしても、目の前の彼女との関係に影響を与える。早いか遅いか、という違いがあるけどな。全く面倒なことだ)
リオルとの付き合いは長期的に友好的なほうがいい。だとすれば、どっちにしてもローグが答えを出すべきではない。ただでさえ部外者だったはずなのだ。
(ん、待てよ? 部外者でないなら当事者……いや、親族で解決したほうがいいじゃないか? それなら、うってつけの人がいるじゃないか!)
ローグは、ある人物の安否の確認をリオルに聞いてみた。
「リオさん。皇帝陛下は今、どうなってるんだ?」
「ち、父上のことか? 残念ながらいまだに病に臥せっておられる。確かに父上に相談すれば早いかもしれないが、今は……」
「意識はあるのか?」
ローグは大事な質問をするが残念な答えが返ってきた。
「今は意識がない。一度起き上がって、サーファにクロズクのアジトの場所を教えたらしいのだが、その後で再び眠っておられるままだ」
「……アゼルの自白から毒の種類は分かったりしないか? 特定できれば回復くらいできると思うのだが?」
「兄上は何も知らないようだ。そもそも、毒だってことすら父上が病気になってから分かったからな」
「「…………」」
リオルの言葉から発せられたアゼルの無知ぶりを聞いて、ローグとミーラは同じことを思った。「頭悪すぎだろう」と。
「皇帝陛下は回復しそうか?」
「……状況は芳しくない。もう毒は飲んでいないはずなんだが……」
「なら、治すしかないか」
「え?」
「ローグ?」
ローグは無駄のない動きで椅子から立ち上がった。突然の子王道に女性二人は少し驚いたが、リオルが言葉の意味に気付いて動揺する。
「な、治せるのか!? 父上を!?」
「治せるかどうかは分からない。ただ、俺達は魔法使いだ。あんたたちにできないことが、出来てしまう者たちだからな。診てみないと分からないさ」




