三日目2
三日目。
ローグとミーラがいる客室で、普段着のリオルと一応客人扱いとなったローグとミーラが向かい合っていた。サーラは事務仕事で忙しくてここにはいない。リオルも本当なら忙しい身であり、この二人と話し合う時間などないのだが、事務仕事が苦手な脳筋は力仕事が一番らしい。
…………という情けない話ではなく、大事な相談のために二人のもとに来たようだ。昨日のアゼルとの話し合いが問題らしい。
「……というわけで、私は兄上の助命を訴えることができなくなったのだ。情けは無用と言われてな。兄上の命だけは助けたいのに、どうしたらいいだろうか?」
リオルは珍しく落ち込んでいた。昨日、アゼルと話し合った結果、リオルが折れたのだ。助命はしないことを渋々認めて引き下がってしまったらしい。
そんな話を聞かされたローグとミーラの反応はというと。
「アゼルのいうことはもっともじゃないか。奴のしたことは許されることじゃないし、正当に裁かれるべきだ」
「そ、それはそうかもしれないが……」
「リオさんの言うことも分かります。お兄さんですもんね。家族は大切にしないと」
「う、うん。分かってくれるか!」
ローグはアゼルの言うことを正しいと言うが、ミーラはリオルの気持ちを理解した。ミーラの言葉にリオルは弾んだ声を上げた。
その様子を見て、ローグは目を細めて思ったことをそのまま口にした。
「……あんた、もしかして他の連中にも同じようなこと話したんじゃないか?」
「え? あ、ああ。サーラは忙しかったから他の兵士たちに兄上と話をしたと……」
「そうじゃない。助命をしたら断わられたことだよ」
「あ、それは……」
「誰も助命に賛成してもらえなかったんじゃないか?」
「っ!」
ローグの言う通りだった。リオルは二人のもとに相談に来る前にも、信頼できる部下や友人に相談に行ったのだ。「どうにかして兄の命だけは助けられないか」と。
だが、誰もが「自業自得だ」「至極当然の報いだ」「正しく裁かれるべきだ」と言うばかりで、リオルの気持ちを理解しても肯定はできないという態度だったのだ。リオルも彼らの言うことも分かるため反論できなかった。その中には騎士団長のサーファのように「甘い考えだ」「死罪あるのみ!」という者さえいた。そして、最後に向かったのが……。
「最後に相談に来たのが俺達、と言わけだな」
「……お前の言う通りだ。察しがいいな。頼む、私に知恵を貸してくれ。このまま理解し合えずに兄と死に別れるのはつらいんだ」




