暗殺者と対決
3人は心から一致団結した。
「ふっ、たとえ3人がかりだろうとも、我の技をもってすれば貴様ら3人などあっというまに屈する」
「ええ!?」
「ほう」
「何!?」
男は3人が一致団結しても余裕を崩さなかった。あろうことか挑発するようなことを語りだす。
「我らはクロズク。その歴史は百年前から続く帝国と王国の戦争から始まる」
(百年前か、中々長いな)
ローグはクロズクに興味を持った。この時代の技術の底を把握できるかもしれないからだ。ローグ自身の目的を果たすためにもそういうことを知る必要があるのだ。
「わが帝国は強国であったが王国の最強最悪の武器である魔法には必ず苦戦させられていた。そのために魔法に対抗もしくは魔法を超える技術が必要とされるようになった。そこで当初、白羽の矢が立ったのが魔術」
(ふむ、当然だろうな。魔術なら魔法が無くても魔力さえあれば使えるし)
「しかし、王国に比べ、帝国の民に魔力を多く蓄える者は少なかった。そもそも、魔術も王国から出た技術。そんなものを学ぶのには抵抗があった」
(帝国人は魔力が少ないのか。そういえば、この皇女様も魔力が少ないそうだったな)
「魔力? あっ!」
「どうした、ミーラ?」
「あの人の魔力が今でも感じられないの!」
「何?」
「だろうな、それがクロズクの技の一つだ。【魔力遮断】と言って、魔力の体外への放出を完全に遮断することによって、その女のような感知系の魔法が通じなくなる、らしい」
ミーラが気付いたことを口に出すとリオルが補足した。どうやら、彼女自身も詳しく知らないようだが、気配を消すようなものらしい。ローグはそう要約した。
「それも我らが百年の間に作った技が一つ」
(厄介な技術が出来上がったものだな。さっきの壁になりきることと言い、百年なんて短い期間でそんなものを……)
ローグはクロズクの技を危険だと判断した。今、じっくり見せてもらうよりも捕まえて吐かせるほうがよさそうだと思って右手に魔力を集中させた。
「そして、これから貴様らに見せるのが我らが百年という長い時間をかけて磨き上げてきた対魔法の技術。血と汗と涙の結晶たる技を今貴様らに……」
「断る」
「「「えっ?」」」
バンッ!
ローグは右手を勢いよく地面に叩きつけた。
ボゴッ
「っ!? ぐぼああああっ!?」
「ええ!?」
「今度は何だ!?」
突然、男の真下から地面が盛り上がった。そこからさらに巨大な赤紫色の拳が出現して男をぶっ飛ばしたのだ。男はそのまま、巨大な拳に殴られた形で気絶してしまった。
「あれって、ローグの、魔法……?」
「あ、あれも魔法の一種なのか!?」
「当たり前だろ? 何でミーラまで驚く?」
「え、えと……」
ミーラとリオルは突然の事態に頭が追いつかなかった。男が話している隙に攻撃するなど考えてもいなかったのだ。しかし、ローグは違う。
「敵の前でダラダラ話し続けるなんて馬鹿だろ? 聞くのもだけどさ。だから、切り上げたんだよ」
「「……」」
ローグの言うことはもっともだったが、二人は微妙な気持ちになった。




