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その9

ツキオトに置けるユリアという存在は、典型的な悪役令嬢だった。


地位に胡座をかいた傲慢な態度。

庶民の出であるヒロインを小馬鹿にする、姑のような嫌味。

直接手を出す事はなかったが、言葉巧みに周囲を誘導しヒロインを破滅へと導く──……


なんでこんな悪役令嬢、『私』が好きだったかって?

何度も言わせないでちょうだい。容姿が好みだったのよ。

メンクイですが何か?




「まあ、今のわたくしは『それ』とは遠くかけ離れておりますけれど」

「? なんのことですか?ラピス様」

「なんでも御座いませんわ。こちらのカップ、素敵な色ですわね」

「お褒めに与り光栄です。隣国の聖サンタリア王国から直接仕入れたのですよ」


朗らかな日の下、にこにこと笑う好青年は『穏和』という言葉の具現かと言うほどに、その言葉が似合っている。

優しく柔らかな茶色の髪は、首にかからない程度の短髪で、穏やかな風にサラリと揺れる。

鮮やかな昼の海を切り取ったかのような水色の瞳は光に煌めき、彼の雰囲気をより神秘的なものへと作り上げる。


そう、この方こそ昨日ご紹介した攻略対象の1人。大臣様の1人息子 エリオット=グランディエライト様その人だ。


……うん、今日も相変わらず美しい。

その所作もパーフェクトだわ。


わたくしは目の前の美しいひとに、ひとりうんうんと頷いた。




わたくし達が今日、お茶会を開いているのは、ルディア学園の中庭に位置する温室。

色とりどりと花々が咲き誇るそこに設置されたティーテーブルで開くお茶会は、まさに優美で華麗。ああ、素晴らしいわ。


「相変わらず素敵なお花達ですわね。この薔薇、なんて見事な大輪なんでしょう」

「ありがとうございます。ガーデニングなんて、女々しいと怒られがちなのですが……」

「あら、その方達はきっと心に余裕がありませんのね。こんな美しいものを育て上げる行為が女々しいだなんて」


とても素敵な特技じゃありませんこと?

ころころと笑えば、グランディエライト様は頬を染めてふわりとはにかむ。……あら、何かしらこの胸のトキメキ。新しい扉を開きそうだわ?


「ごほん!」

「……ところで、グランディエライト様?お話ってなにかしら」


ギイイイイ、なんて扉の開く音が聞こえたけれど、それはアレクの盛大な咳払いに瞬時に閉ざされた。

……ちょっと惜しい気もするのは何故かしら。


まあそれは置いといて、そろそろ本題に入らないといけないのは事実だわ。

アレクがいるとはいえ、婚約者以外の殿方と長時間二人っきり、なんて躾がなっていませんものね。


カップをソーサーへ戻し、小首を傾げながら切り出したわたくしの言葉に帰ってきた返答は、なんとも奇妙なお言葉だった。

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