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その5

別にわたくしは、彼女が同じ『転生トリップ』した存在だから嫌いなのではない。

更に言うなら、別に『ゲームの彼女』の事も嫌いではなかった。


確かにユリアの方が好みだったけれど、純粋で真っ直ぐでひたむきで、The・ヒロインなアクア。

『私』は性根の曲がった捻くれ者だったけれど、可愛いものを可愛いと愛でるくらいの余裕はあるっていうのよ。可愛いは正義。美人は国宝。これ常識。


つまり、だ。

何が『あの』彼女が気に入らないかっていうとただ一つ。



「自分の言動で『自分』の価値や評価を下げている事に、なんっで気が付かないのかしら!?」



ダァン!と拳を打った木の板が真っ二つに割れる。

あら、いけないいけない、修行だというのに気を乱してしまったわ。はしたない。


今日は専門の先生をお呼びしてのカラテのお稽古。

正式にはカラテではないらしいけれど、正直カラテの方がわたくしにとって馴染みがよかったので、心の中でそう呼んでいる。

先生に怒られるかと思ったけれど、「oh!流石デース!」なんて諸手を上げて賞賛してくれてるから良しとしましょう。この緩さ好きよ、先生。


……話がズレたわね。

そう、なんでわたくしが彼女を気に入らないかって、要はそういうことなのよ。


『私』は、『わたくし』が好きだから、貶めたくないから、自分磨きを頑張った。

その過程で得たものは間違いなく、ただ生まれた『地位』についてくる副産物ではなく、『わたくし自身』が手に入れたもの。

わたくしは、それに誇りを持っている。


だから、『あの』彼女の事は好きになれないし、美しいとも思えない。

それがわたくしの結論よ。




「……相変わらず苛烈だな、君は…」


アレクから渡された手ぬぐいで拳を拭き、呼吸を鎮めていると、控えめなノックと共に掛けられた声。心地よいテノールのそれは、多大なる呆れを含んでいた。

………無視してちゃ駄目かしら。駄目?あらそう、残念だわ。


はぁぁ、とわざとらしいため息と共に振り返れば、そこにいたのはサラリと揺れる金髪を半分オールバックのように掻き上げた美青年。キラリと日の光に煌めく瞳は、その角度で七色の輝きを放つ。


「……婚約者を前に随分な態度だな、ユリア」

「あら、その婚約者がいるのに別の女性とダンスを踊った不届き者に言われる覚えは御座いませんわ?──ダイア様」


その青年こそ、わたくしの正当なる婚約者であり……ここ、聖ルナティア王国が王家 第一王子──ジーク=リオ=ダイア。


この『ツキオト』世界における、メイン攻略対象の1人である。

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