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さて、生徒会の仕事も一段落し、定期テストも無事に終わった心地よい昼休み。

珍しくアクア様は、教室でランチを召し上がっていた。


「どうしましたの?パール様。いつも中庭で召し上がっておりますのに」


1人でランチボックスを開くアクア様に声をかけたのは、クラスの女子生徒、スピネル様だ。

彼女も名のある貴族のご令嬢であるからして、今の言葉は直訳するとこうなる。



『いつもみたいに中庭でイケメン侍らせなくていいわけ?邪魔なんだけど』



「……女性は恐ろしいですね」


アレクのボソッとした呟きは聞こえないフリをさせて頂きます。

だってわたくし、賢いので。


『私』の感性で言うと、貴族の物言いは『京都の人の言い方』と似ている、と言えば伝わるかしら。

……なんだか、色んな人に怒られないか心配な事言っちゃった気がするわ。やっぱり今のナシで。


「実は、この後、生徒会室でジーク様にお勉強を教えてもらう予定なの」


だが、そんな『聞く人が聞けば分かる言い方』なんて、庶民の出であるアクア様には通用しなかったみたい。

ふわりとはにかんで、嬉しそうに言葉を続けた。


「今回の定期テスト、残念だけど、順位が3位だったから……不安だって言ったら、ジーク様がお勉強を教えてくれるって」


「生徒会室は飲食禁止でしょ?だから、早くご飯を食べて集合しようねって約束したの。中庭より、教室の方が生徒会室に近いもの」

と嬉しそうにはにかんで言うアクア様は確かに可愛らしいわ。外見だけなら。

クラスの男子生徒が思わず頬を赤らめてしまうのも、まぁ分かる。


けれど、例のごとく──彼女の発言は配慮に欠けている。


「っあなた──!」

「スピネル様、ご心配には及びませんわ」

「ラピス様……!けどっ!」


可愛らしいお顔をかっ!と赤くさせ、アクア様に突っかかろうとするスピネル様に声をかけ制止する。

アクア様は何故スピネル様が激昂したのか分かっていないらしく、「?」と小首を傾げていた。


……ああ、本当にもったいない!!

淑女教育をきちんと身につければ、とてもとても美しくなる方なのにっ!!

それか、咲く場所が城下の街でしたらそのままで完璧なのよ……場所にそぐわしい装いを身につけてこそが一流だと思うのよ、私!!


心の中で荒ぶる『私』を押さえつけ、扇で優雅に口元を隠す。

秘するが花、ってね。


「あの、私、変なこと言っちゃったかな……?」

「ええ、そうねぇ。……パール様、貴族の嗜みのお勉強は進んでいらっしゃるかしら?」

「え?……ううん、あんまり。だって、ここは学校でしょ?学校でお友達と楽しく過ごすだけなのに、そんなのあんまり必要ないと思って」


あっけらかんと言い放つことが、どれだけ罪なことか──この方は分からないんでしょうね。

ざわりと教室が波立つが、わたくしがすいと片手を上げるとピタリとそれも静まり返る。


さて、この方とこうして顔を合わせるのも、久しぶりね。



カーーーン!


なんてゴングの音が聞こえた気がしたのは、気のせいかしら。

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― 新着の感想 ―
[一言] 学生の間に嗜みをある程度終えなで、いつ学ぶのやら。 卒業後に一切貴族と関わらないのならそれはそれで良さそうですけど(^o^) 学校が貴族社会の縮図だということを理解してない幼児かな? ゲ…
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