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人狼少女の奇妙な日常  作者: 夕月 陽奈
第一章 月夜の鬼と人狼少女
11/12

エピローグ 彼女らの知らぬ所で。

今回ちょっと短いです。

都会と言うべき栄えた街の中心部にある、木で造られた建物。【アマリリス】と大きな看板がかけられたその場所に、ある青年……、宮守湊人みやもりみなとは居た。


鴉の羽根のような撥ねた黒髪に同色の目。高級感溢れる木製の椅子に腰掛けながら、彼は斜め前の扉から現れた男に話しかけた。


「あ、き、ひ、こ、くぅん」

「げ。なんですか? 湊人君。ボクは君に構ってられるほど、暇じゃないんですけど」


男の名は、漆葉彰彦うるしばあきひこ。 くるりと巻かれた一房だけ長い茶色の髪に、垂れ目がちの緑色の瞳。身に纏う少し丈の長い深緑のセーターに、長ズボン。そして、右目に掛けられたモノクル。特徴の多い容姿である彰彦は、宮守湊人の同僚であり、仕事を特に共に受けることが多い所謂相棒という関係だ。


湊人は、彰彦の目を見ながらニコニコと笑っているが、世間一般で言うところの『イケメン』である彰彦は己を見上げる湊人の姿を見て、隠そうという素振りすら無く顔を顰めた。そんな彰彦の顔を見ながらも、湊人は気にしていないようで、椅子の背凭れに寄りかかる。平均より少し高い彰彦の身長は、座っている湊人には高く見え、いつもはない威圧感を感じた。


(湊人君絡むと、ろくな事がないんですよね……)


右目に掛けられたモノクルに触れながら、彰彦は何を言われるか、と身構え先ほどから変わらない顰めた顔で、湊人を見つめた。


「いやさ、さっき未来みらいさんに呼ばれてたでしょ? 新しいお仕事かと思って聞きにきたんだよ」

「……ご名答。ボクと君への音羽さん直々の依頼ですよ」

「内容は?」

「〝緋眼の人狼〟と呼ばれる少女の確保です」


その言葉に、湊人は僅かに目を見開き、椅子の肘置きを使って頬杖をついた。


(こいつは、話を聞いているのかな?)


その仕草に引っ掛かりを憶えながらも、彰彦はアマリリスの社長である音羽未来おとわみらいから受け取った書類を湊人に手渡した。


書類にはまだ成人もしていないような幼い顔立ちの少女の写真が貼り付けてある。茶髪に橙色の瞳。通っている学校のものであろう制服を着ていて、明るい笑顔で顔の横でピースサインを作っている。少女の持つ鞄に、桜月高校という刺繍が施されているので、辛うじて彼女が高校生ということが分かるが、ソレがなければ小学生に見間違えてしまうだろう。


「……彰彦君」

「なんですか?」

「この写真の子の名前って信濃奈々ちゃん? 歳は十七、もしくは十六?」

「は?」


突然目の色を変えて尋ねてくる湊人に、彰彦の顔が曇る。


「確かに彼女は、十七です。それに名前も間違いないですよ? でも、なぜ貴方が知っているんですか?」

「ん〜……。財布探しを手伝ってもらった?」

「はぁ?」


彰彦の顔に、明らかな疑問の念が浮かんだ。


「財布探しって……、君ねぇ……」

「だって事実」


思わず半眼で呟く彼に向かって、湊人は柔らかな笑顔を返した。


「……ま、良いです。とりあえず、君と彼女に面識があるのなら、今回の話は進めやすい」

「一体何をする気なの? 確保ってどういう意味? 未来さんは何て?」

「ボク達の目的は、信濃奈々の確保……、というのは少し違います。要はアマリリスへの勧誘です」


湊人は、その妖しく光る黒い目を、スッと細めた。



次回から、二章へ移ります。

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