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第零話 『人狼少女』
どれほど叫んだことか。
苦しくて、喘ぐように呼吸を繰り返しても、その背中の苦痛は消えることがない。
顔をあげれば見える憎たらしい顔に、私は心底憎悪を覚えた。
男の顔は、愉悦に歪んでいた。
醜く、汚らわしく歪んでいた。
どんなに【外の世界】に目を向けても、眩しいだけで何も見えなかった。
どんなに助けを呼んでも、誰も気付いてくれなかった。
絶望して、全てから目を背けたくなっても、私の心にはたった一つの感情が芽生え、育っていた。
──生きたい。生きて、彼女達に会いたい。
それだけを糧に、それだけを支えに生きていた。
だから、私は今日も笑おう。
「おはよう! みんな!」
「おはよ、…ねむ」
「朝からどうしてそんな元気なの?」
「……馬鹿は朝に強いのかな?」
一日一日を噛み締めるように、ただひたすらバカみたいに笑って、この日常の中で生きていくのだ。
それが、私の幸せだから──。